偽りの恋人達

胸の轟

文字の大きさ
上 下
9 / 50

クラウス

しおりを挟む
あんなに可愛がってやったのに、俺の頼みを聞こうともしない忌ま忌ましい女。

愛してるなら態度で示せっつうんだよ!

クソ女が金を寄越さなかったせいで、暫くカトリーヌと会うことも出来ない。


稼ぐため依頼を受けようにも、マルコもサムエーレも見当たらない。

思い通りにいかず、イライラしながら部屋に居ると、マルコがやって来た。


「ようクラウス。どうした?湿気た面して。」

「ほっとけ!つーかお前どこほっつき歩いてんだよ!お前らが居ねえから依頼受けられねーんだぞ!」

「どこって…、依頼受けたりいろいろしてるよ。そもそもお前があんま誘うなって言ったくせに忘れてんの?俺らはお前と違って稼がないとね。貧乏暇なしってやつ。」


良く考えたらマルコは俺と違い、将来裕福な家の婿になれるわけじゃなくて、セコセコと汗水垂らして食い扶持を稼ぐ必要がある。


見かけないからって責めたら可哀想ってもんか。


「で?貧乏暇なしのマルコは俺に何の用だよ。」

「ちょっと良い酒が手に入ったから、たまには親睦でも深めようかと。」





◇◇◇


あ~…クソ、完全に呑みすぎた…


「ようクラウス。酷い面してるな。」

酒の残ってない爽やかな面でマルコが現れた。

同じくらい呑んだ筈なのに、全く響いてないのが腹立つな。


「…昨日のアレは本気か?」

「は?アレ…?」
「アウロラをどうこうって話。」

「は?何だそれ。何で俺がアウロラをどうこうすんだよ。」

内心の動揺を悟らせないように言う。


「あのさ、バレてないとでも?お前らがどんな関係か知ってるよ。まぁ、俺とサムエーレくらいしか気付いてないけど。ーーそんなことより、昨日の話。」


昨日…?昨日……


マルコと下世話な話で盛り上がりながら酒を呑み、酔いがかなり回った頃ーーああ、そうか、そうだ、勢いに任せ殺したい女がとウッカリ口にしていた。

「俺はアウロラだとは言ってないぜ。」


アウロラを殺したいのは、お前じゃないのか?


目で問えばマルコはただ笑みを浮かべるだけで答えない。


「クラウスにコレやるよ。」


放られた小瓶を受け、液体の入ったそれをマジマジと眺める。


「おい、コレって」


そこにマルコの姿は既になかった。


「おいおい、マジかよ。」


理由は知らないが、どうやらマルコはアウロラを殺したいらしい。

アウロラに好意的に見えたマルコが、実はその逆だったとは驚きだ。


お陰で良い物が手に入った。ーーどうやら運は俺の味方らしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。

猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。 『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』 一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

巨根王宮騎士の妻となりまして

天災
恋愛
 巨根王宮騎士の妻となりまして

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
 侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。  だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。  二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?   ※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。

ワンナイトLOVEからの交際0日結婚❤︎

鳴宮鶉子
恋愛
ワンナイLOVEからの交際0日結婚。社長が相手で溺愛に翻弄されてます。

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

処理中です...