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第一章 【午前零時~目覚めた先は異世界でした】

【3ー③】四神の神子とオマケ神子

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【3ー③】


すると そんな私の背後から回り込むように白い服の、これまたイケメンアイドル系美少年が私をジロジロと観察してくる。


ーーうわっ、何? 今度は白い方のイケメン君? っつーか、そんなにジロジロ見ないでぇぇ。


まるで珍獣でも見るかのような好奇心旺盛おうせいな視線から逃れるべく目を合わせまいと顔を背けていると、突然、彼が「お手!!」と自分の手を私の前に差し出してきたので、思わず「ワン!!」と言ってワンコのように自分の手を彼の手の上に乗せる。


………あ~私って かなり頭が回ってるなあ。でも「お手」とか言われたら、なんとなく条件反射的に手が出てしまった。だって お約束?みたいな?


そんな私の反応に白いイケメン君が吹き出すように笑い出した。


「ぷっ、あはははは! 何コイツ面白れぇ。『大熊猫』じゃなかったのかよ。しかも「ワン!!」って、それは『犬』だろーが」


その物言いには少々カチンときたので、すかさず反論する。


「あ、あんたがいきなり『お手』とか言うからでしょ。だから つい思わず口に出ちゃったのよ! しかも見るからに年下のくせして大人をからかうものじゃないわ!  生意気よ!」


そう言って私は白いイケメン君の頭をゴツンと一発殴る。………う~ん、酔っぱらっていると勢いに任せて何でも#出来ちゃう。これがシラフの時なら他人様を殴るなんて絶対に出来ないもん。


「痛ってぇ! 何すんだよ! 嫌なら反応しなけりゃいいだろ。それをあんたが乗ってきただけだろうが。しかも女のくせに先に手が出るって恥ずかしくねーのか? それも千鳥足の酔っぱらいとか、そんなんじゃ、どこにも嫁の貰い手が無ぇぞ?」


ーーくうっ、このクソ坊主めぇぇ。自分は若いピチピチイケメンだからって何言っても許されると思うなよぉ!?


「う、うるさい! そういう考え方を男尊女卑っていうの知ってる? 女を馬鹿にするヤツほど器が小さくて出世出来ないんだから! 

それに今後の参考に教えておいてあげるけど、素直で従順な可愛い女には気を付ける事ね。そういう女こそ案外あざとくて質が悪かったりするから、あんたみたいなのが簡単に騙されんのよ!」


私はもう一発、景気づけ?に殴ってやろうかと拳を振り上げると、その手は黒い服の線の細い儚げなイケメン美人に そっと手を取られて制止されていた。


「異世界の神子殿。貴女が ご気分を害されるのは もっともです。ですがどうか その お怒りをお鎮め下さい。

この『白虎王』は一国の君主ではありますが、この通りまだ若輩者ゆえ大人の礼儀というものを理解出来ていないのです。ですから誰に対しても このような態度を取ってしまうのです。

それでも ご気分を害される様であれば、この者の言う事を全く無視されて構いません。構わなければ大人しくなりますから」


そんなイケメン美人さんは少し困ったうれいを帯びた美しい顔で、制止していた私の手を包みこむ様に優しく握る。


ーーうっひゃああ!! こ、ここにも目が覚める様な すごい美人が!! しかも綺麗な手が私の手を握ってるぅぅぅーーー


私は目を白黒させながら、もはや意識が明後日の方に飛びそうになっているところで、握られていた手がスッと離された。


「………どうやら私にも『反応』がありません。この御方は『玄武』の神子ではない様です。白虎王、貴方の方はどうでしたか?」


するとムスッとしかめ面をした白いイケメンこと、白虎王が不機嫌にも答える。


「ああ、俺にも『反応』は全く無いな。しかも殴られ損かよ。まあ、でもソイツが白虎の神子じゃなくて幸いだった。そうじゃなくても暴力女の面倒は ごめんこうむる」


「なっ、あんたが先に絡んできたんでしょーが。こっちだって生意気小僧は ごめんよ!」



「はああ!? 小僧って、俺はもう18歳だ!? 子供じゃねぇ!!」


「はん、18歳なんて私から見れば十分に お子様ね。いいこと?  ボクちゃん。人生の先輩である お姉さまをあまり舐めんじゃねーわ………うっ、うぇっぷ」


酔った頭に血が上ったせいか、この目の前の少年というか、18歳にしては幼く見える白虎王のマントを掴んで更に説教してやろうと自分の方に たぐり寄せた瞬間、先ほどから言葉をまくし立てていた事もあり、急に胃から上ってくる吐き気が襲ってきた。


「………ううっ、気持ち悪ーーー」


「は? ーーって、おい!ちょっと待て!!」


「ううっ~ぅ、ま、待てないぃ~  おっ、おえぇぇぇーーー」


「うわあああ!!」


叫ぶ白虎王の声と同時に私は彼の上等なマントに胃の中のものを遠慮なくリバース! とりあえず吐いてスッキリしたので、更に遠慮なく手に掴んでいたマントで口をゴシゴシと拭いて顔を上げると、驚愕に うち震えた表情で口をパクパクさせている白虎王と、

いち早く巻き添えを回避したのだろう少し離れた位置で私から視線を逸らして俯く黒い服のイケメン美人の姿が見える。そして その後方で大笑いしているのは多分 朱雀王という人だ。


ーーああ、や、やってしまった。で、でもまあ、いいよね? だって これ全部夢だもん。


「………し、信じらんねぇ。コイツ本当に女かよ? いくら気が強いっていったって、黒姫だって ここまで酷くはねぇぞ?」


「ちょっと! おう! それどういう意味よ?」


それを聞いた黒姫が白虎王に近付く。


「だってコイツ、なんとなく雰囲気とか性格なんか黒姫に似てるだろ? ーーって、そんな事よりコイツも実体が『憑坐よりまし人形』なのに、どうして生身の人間みたいに嘔吐出来たりするんだよ! しかも臭せぇし、どう見ても普通の人間と変わらないとか、一体どうなってるんだ!?」


「………一つ言っとくけど、私の酒癖は大変良い方よ。ーーまあ、どういう仕組みなのかは分からないけれど、私達は『人形』であっても、この世界では仮初めの命と同様に仮初めの実体もあるみたいね。

だから外見は こうして普通の人間と寸分も変わらないけれど、それでも元が精神体だから、こうして例えるのは不本意だけれど『あやかし』と同じ存在で まやかしの生き物にしか過ぎない。

同じ様な性質ではあっても現実に実体化できる応龍や四神のような神様達とは また違うから まだ神様の方がまやかしである私達よりも よほど人間に近いわ。実際 貴方達のような人間との間に眷属も作れるし、今思うと私からしてみれば、応龍達が益々憎たらしいわね」


黒姫が深い ため息をついて肩を落としていると、中央の玉座に座る王様の声が掛けられた。


「黒姫、本当にすまない。我が全て悪いのだ。この世界で そなたが子を成す方法はわずかにでもあったにかかわらず、我の嫉妬心から たとえ相手が神であろうと我の最愛の者を託す事が どうしても出来なかったばかりに、そなたには非常に辛い思いをさせてしまった。この期に及んで悔やんでも悔やみきれぬ」


どこか顔色が悪く声色にも力が入らない弱々しい王様とは対照的に、黒姫が怒って大きく声を荒げる。


「やめてよ!! 冗談じゃないわ!! 私は貴方との子供が欲しかったのであって、応龍や四神達の子供なんて全くもって望んでない!! 

たとえ神であろうと愛してもいない男と子作りするなんて絶対にあり得ないわ! そんな事をするくらいなら一生 子供なんて要らない! それに応龍達だって断固として拒絶してたでしょう? 

私はね、今のままでも十分幸せなのよ。それなのに そんな馬鹿げた事を後悔してるっていうのなら、直ぐにでも貴方の その首を絞め上げて私の手で『天の国』へ送ってあげるわ! そして私も すかさず後を追うからね!?」


「うっわ、前言撤回。やっぱり黒姫が酷えぇっ~か 一番怖えぇよ」


「お黙り! 虎旺!」





【3ー続】







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