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第3部
【8】因縁の再会⑰ー2 (~あっちこっちでハプニング)
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【8ー⑰】
「さてと、珠里ちゃん。その制服の染みを取らないとね。直後だから染み抜き剤ですぐ取れると思うわ。ブラウスは ここの制服を着れば大丈夫よ。取り敢えず控え室に行きましょうか」
「……廉さん。 改めて思うケド、私って結構イケメンの遭遇率 高いのかも。緋色くんもそうだし、今の碧さんもだし、廉さんの血筋って みんなイケメン揃いなんだね。 なんか『乙女ゲーの世界』にいるみたい」
ぽつりと呟く私に廉さんがクスッと笑う。
「ふふ、そりゃそうよ。イイ女の周りにはイイ男が集まるの」
「イイ女って、廉さん?」
すると廉さんはクスクスと可笑しそうに笑う。
「あら? 私は生物上は『男』の部類よ。当然イイ女は珠里ちゃんでしょ?」
それを聞いて、私は頭を抱える。
「それは絶対にない! 地球がひっくり返ってもない! 私のどこがイイ女なの? 図体がデカいだけのグータラ汚泥女子なのに」
「ふふっ、地球は丸いからひっくり返っても意味ないと思うケド? それに綺麗なものはね、なんの変哲もない地味な原石の中から磨かれて美しく輝くのよ。この店の名前もそこからきているの。
珠里ちゃんも今は原石だけれど、少しずつ周りから磨かれて必ず綺麗な宝石になるわ」
「いや、無理ですね。全く想像つかないし、唯一、想像出来るのは、汚い部屋に とじ込もって乙女ゲーをゲヘゲヘ笑いながら徹夜でplayする自分かな?」
「いやね、珠里ちゃんったら。ゲヘゲヘだなんて。スケベオヤジじゃあるまいし」
「いや、事実っす。実際、弟に変態扱いされてますから」
真顔で答えると、廉さんは声を上げて笑い出した。
「あははは、やっぱり珠里ちゃんって面白い子ね。本当にすごく可愛いわ。しかも明け透けで天然な所がいいのよ。
私は変態の珠里ちゃんでも全然気にしないわよ? 人間ってね、いくら とりすましていても、意外に隠れた内面は変態だったりするんだから」
「ううっ、それもなんかイヤ。世の中の人間が信じられなくなっちゃう」
私が渋い顔をしていると廉さんが肩をポンポンと叩く。
「大丈夫。変態っていっても、他人に迷惑を掛けない変態は もはや『個性』だから。私なんか外見は男だけど中身が女なのに子供作れちゃうんだから、もう立派な変態よねぇ」
「いえ、それは いたって『普通』ですから。というか『個性』です。 そして本来 生き物が子孫を残そうとするのは本能なので、この際、何でも有りじゃないですか? そうじゃないと、今頃 人類滅んじゃいますよ」
「あら、いい事 言うわね。だから珠里ちゃんって好きよ。他の人には気持ち悪がられる事が多いけど、珠里ちゃんって初めっから偏見なく私の性癖を受け入れてくれたでしょう?
でも私の元奥さんはそうじゃなかったわ。まあ、それが普通なのよね。ずっと隠していた私も悪いんだけれど」
そんな廉さんの表情がどこか寂しそうに見えて、私はおもいっきり首を横に振る。
「私は廉さんがすごく優しくて人柄も良い人なのは接していて よく分かっていますから、そんな事は全然気にしません。
それにお子さんをとても大事にしていらっしゃるし、たとえ心が女であっても元奥さんの事だって大切にしていたはずです。
こんな事言ったら失礼だけど、元奥さんって、ほんと見る目がないですね。 廉さんはこんなに素敵で優しくて家庭的な人なのに」
すると突然 背後から ふわっと優しく抱き締められた。いや、抱き締めるといっても体が密着するわけではなく、腕だけが私の腰に触れないように前に回されホールドされている状態だ。
けれど背中から廉さんの香水の香りに包まれて、袖を捲ってむき出しになっている回された筋肉質の腕は完全に男の人の腕で、廉さんの心は女性で同性なのだと分かってはいても、なんだか妙に心臓がドキドキして、緊張からか体が自然と強張ってしまう。
「れ、れれれ、廉さん??」
思わず声がうわずりながら背後の廉さんに話し掛けると、穏やかな優しい声が返ってきた。
「………ありがとう、珠里ちゃん。 そんな事を言ってくれるのは珠里ちゃんだけよ? 本当に優しい子ね。 こんなに綺麗で魅力的な女の子は他に知らないわ。私の最初の結婚相手があなただったら、今頃私も幸せな家庭を築けていたのかもしれないわね」
ーーは、はいぃぃぃ??
私はもう金魚のように口をパクパクと動かす事以外、言葉が出てこない。背後に廉さんの小さな息遣いが聞こえるのがやけにゾクゾクして、絶対に後ろなんて振り向けない。 そして廉さんの腕しか視界に入らない。
ーーれ、れれ、廉さん、一体どうしちゃったの??
しかもそれから無言になる廉さんに、私の変な緊張感が増幅して体が強張ったまま、必死でパニックになりそうな思考を総動員して平静を呼び戻す。
ーーこ、これは いわゆるスキンシップよね? 同性同士の。だ、だけど、廉さんの外見が男性だからか妙な空気が……というか、いや、単に私が変に意識し過ぎているだけなんだけど。
だって廉さん大人だし、私みたいな子供なんて全く眼中にもないでしょ? それ以前に実際、女同士だもんね~ 変な事になんかならないし。
うぅ~ でも なんか廉さん普段から色気があるから、頭で分かってはいても、こういう事されちゃうと妙に緊張するというか、男性意識しちゃって マジに恥ずかしいぃぃ。
廉さん!! 私は子供! まだ18歳の未成年だよ!? しかも大人の階段なんかまだ上ってもないからね? 冗談にしたって、大人のようにかわせるスキルなんて、私には全然ないんだから! ふえぇぇん~ 勘弁してぇぇぇ~!
廉さんが今何を考えているのか、何をしたいのかが全くもって分からないが、妙な雰囲気なのは私が意識し過ぎているからなのかもしれない。
しかも、こちらも話し掛けないせいか、廉さんも無言のまま私に腕を回したまま動かないので、緊張感だけがひた走る。
ーーずっとこのまま、ってことないよね? ………って、こんなところを他の人に見られたらマズいっしょ? いやいや、マズいどころか、超ヤバい!!
だって、ここお店だよ? 他の人もいるんだよ? 今のところ誰も気付いていないみたいだけど、いくら同性同士のスキンシップにしても事情を知らない人達から見れば、完全に大人と女子高生がイチャイチャしてるようにしか見えんでしょ!
それで変な噂が立ったらどーするの!? 廉さん、ロリコン店長とか言われて、本当に変態扱い されちゃうよ?
私は ここが店の中だという事を認識した事で平静を取り戻しつつ、意を決して私に回されている廉さんの腕をツンツンと突つく。
「ーー廉さ、いや、マスター、マスターさん?」
私は廉さんの事を仕事中などは雇用主と従業員の関係上『マスター』と呼んでいるが、仲の良い友人でもあるので、そんな廉さんからの お願いで仕事外や二人の時は『廉さん』と名前で呼んで欲しい、と言われている。
なので私も公私混同しないように意識して心掛けてはいるのだが、さすがに今のこの妙な雰囲気に呑まれて変な方向に転がり落ちる(ーー主に私がね)ような事にならない為にも、あえて『マスター』と言い直す。
「……なあに?」
背後の廉さんからようやく言葉が返ってくる。 声色から少し不機嫌そうに聞こえるのはきっと、気のせいだろうーーうん。
「そろそろ腕を離してもらえませんかね? 多分、この体勢すっごぉ~く マズいっすよ?」
「あら、どうして? ただのスキンシップじゃない。抱き締めているわけじゃないし?」
ーーいやいやいや、どう見ても端から見れば抱き締めているようにしか見えないっス。たとえ体が触れていなくってもね。
「いやいや、ここは お店の中ですよ? お店の人達なら別としても知らない人達から見れば、マスターが女子高生にセクハラしている図にしか見えませんよ。それで警察に通報されでもしたら どうするんです? 私、そっちの方が恥ずかしいです」
私が そう言うと、廉さんの腕が直ぐに離れていく。
おお~ 言ってみるもんだわ。
すると廉さんは深いため息と共に大きく肩を竦めた。
「はあぁ~ 珠里ちゃんの言葉に感動してつい、抱き付いちゃったんだけど、そうよねぇ。端から見ればセクハラと思われても仕方ないわよね。年齢差が恨めしいわ。
しかも珠里ちゃんって嬉しい事も言ってくれるけど、たまに言葉が辛辣だからピンポイントで要所にグサッと刺してくるのよね~ それが結構堪えたりしてね。 まあ、どっちにしても可愛いんだけれど」
それを聞いて ちょっと不安になる。
「それって、あの、もしかして私、人を傷付けるような言動をしていたりしますか?」
ーーそう、私は無神経だと よく言われるので、己の気付かない所で自分の言動で他人を傷付けているのが分からなくて、中学時代に苛めにあったのだ。
私の身内や懇意にしてくれている人達からは私のせいじゃないと言ってはくれたが、それでも自分の言葉が誰かを傷付けている事すら気付かないほどの無神経さに、自分自身に腹が立った。
けれど 分かったところで、どうしていいのか分からずに、結局、選んだのは極力、他人と仲良くするのを避ける事に留まった。
高校では地味に目立たぬように ひっそりとーーを自分に戒め、卒業するまでの3年間を平穏無事に過ごすのが目標だったはずが中々そうもいかず、
何故か学園の芸能界である『生徒会』に陰ながら所属し、一部の人達からも懐かれている異様な結果になっていた。
そして残り一年の学園生活を切った今年に入って、更に私の中学時代の苛めの原因の一つである、女子達からモテモテで大人気の王子様こと幼馴染みの奏と、俺様武将信長ならぬ不肖の弟、康介が入学してきたので、内心不安で心穏やかではない。
それでなくでも地味で冴えない自分が、学園の華である『生徒会』に携わっているだけでも本来、あり得ない事なのに、
こちらが あえて避けようとすればするほど相手が近寄ってくるので避けようもなく、結局は一定の距離感を保ちつつ、付き合っていくという感じになっていた。
………逃げれば逃げるほど追われるって本当なんだな。だからといって、こっちから追うわけじゃないから、ややこしい事になる。
世の中の人達って、どうやって他人と良い人間関係を築いているのか、さっぱり分からないよーーー
そんな私の不安を読み取ったのか、廉さんが私の頭をポンポンと軽く撫でる。
「大丈夫。人間誰しも他人を傷付けずに会話をするなんて、とうてい無理よ。言葉の意味の受け取り方は本人次第なんだもの。
エスパーじゃあるまいし、心の声が聞こえるわけでもないのに、相手の気持ちを推し量るなんて出来っこないわ。
それに誰でも口が滑って、つい心にもない事を言ってしまうことだってあるだろうし、いちいち他人の顔色を伺って会話するなんて、自分の神経磨り減らしてすごく疲れるじゃない。
それに喧嘩する時だって感情が最優先で冷静に考えて ものを言ったりなんか出来ないでしょ?
人間は感情のある生き物なんだから差異があるのは当然よ。相手が自分と同じ価値観で物事を考えていると思うのは大違い。
だから言葉にしてみないと、他人が何を考えているかなんて分からないものよ。案外、聞いてみたら自分が考えているより単純だったりもするしね。
ただ悪意のある言葉と、そうじゃない言葉は誰でも分かるじゃない。
悪意のある言葉は、たとえ褒め言葉であっても相手を傷付けるけど、悪意のない人が使う言葉は相手の人柄を知っていれば、たとえちょっとだけ不快だなって思っても、それは自分の取りようだから許せるものよ。
それが自分の好きな相手なら尚更ね。会話の中で相手が嫌そうなら話題を変えればいいし、自分が言い過ぎたと思えば謝ればいい。
さっき珠里ちゃんが聞いてきたように、それでも気になるなら、そこはダイレクトに聞いてしまうのも有りよ。
勿論、その聞いた結果で傷付くかもしれないけれど、信用している相手なら言葉を選んでくれるから寧ろ良い関係が築けるわ。
心配しなくても大丈夫。珠里ちゃんは すごくいい子よ? だから珠里ちゃんを分かっている人なら、珠里ちゃんが何を言っても理解してくれる。珠里ちゃんが私を理解してくれているのと同じでね。
だから必要以上に自分の言葉を気にしなくてもいいの。珠里ちゃんは本当に思いやりのある優しい子なんだから」
それを聞いた私は今までの心の重荷が落ちたような気がして、感動で胸が いっぱいになり、思わず廉さんの片腕に おもいっきり抱き付いた。
さっきの廉さんの言葉じゃないけれど、人間感動すると抱き付きたくなるんだな~としみじみと実感してしまう。
「ちょ、ちょっと、珠里ちゃん!?」
いきなり私に抱き付かれたので、珍しく廉さんが困惑している。
ーーあははは、さっきの『仕返し』だぁぁぁぁ!!
「廉さん!ありがとう!! 感動すると思わず抱き付きたくなるって気持ち、今すっごく分かったよ! もう、廉さんってばカッコよすぎ!! 大好きっつ!!」
「えっ? ええっ!? だ、大好きって、じゅ、珠里ちゃん!?」
更に驚く廉さんの腕に抱っこちゃんのようにしがみ付きながら頬をスリスリすると、廉さんの声がさっきの私のように上ずって動揺しているのが分かる。
そんな廉さんの珍しくも初々しい様子に、ふつふつと悪戯心が湧いてくるから不思議。
ーーだって廉さんが悪いんだよ? さっき散々 私を大人エロスで動揺させてくれた『お返し』だもんね~ だからこっちは子供の悪戯心で廉さんを困らせちゃろーーうふっつ♡
私の中の何かが ぷつんと切れたーーような気がする。先ほどの廉さんからの抱擁?でパニック寸前になった事と、今まで密かに抱えていた重荷がストンと落ちたせいだろうか? とにかく感動highとも言える高揚感に すごく気分はハイテンションだ。
「廉さん廉さん!! 超カッコいい!! よっ! イケメン代表!! ダンディ店長!! 私があと10年早く生まれていたら絶対に廉さんと結婚してた!!
いや、まてよ? さっき約束した通り、私が将来行き遅れで売れ残りになってたら絶対に結婚してね? そうそう、証人もいる事だし、今更 逃げようとしてもダメだよ? 私、どこまでも地の果てまでだって追い掛けちゃうからーーうふっ♡」
そう言って出来ないウインクを両目でパチパチと何回も繰り返すと、廉さんの表情がますます困惑というより恐怖なものを見る感じだ。
「じゅ、珠里ちゃん!? あなた一体どうしちゃったの!?」
ーーわぁい! あの大人でセクシーな店長が すっごく動揺してるぅ。よぉ~し、このまま『仕返し』続行! 子供をむやみにからかうと怖いんだぞぉぉぅ。
「んん? なんか変なスイッチが入ったかもですぅぅ。だってさっきマスターが急に抱き付いてくるから、珠里、すっごくビックリして頭の中が ひっくり返っちゃったみたい。だから『お・か・え・し』♡ どうですかぁ? マスターは私に抱き付かれてドキドキしますぅ?」
「わ、悪かったわ。ドキドキっていうより逆に怖いわよ、珠里ちゃん。 さっきの事を怒っているなら謝るから、そんな風に大人をからかわないで」
「え~ からかってませんよぉ? こんな可愛い廉さんを見るの新鮮だしぃ、ほら、廉さんって、いっつも忙しいから、今日は珠里が廉さんを独り占めしたいな~って、ダメ?♡」
悪ノリに調子に乗って廉さんの腕に しがみ付きながら、上目遣いで甘えるように言ってみると、廉さんの耳が ほんのり赤くなっている。
ーーわはは、面白~い! 見たか! 乙女ゲーキャラ直伝によるセリフの威力を!!……とはいっても、女ライバルキャラのセリフだけれども。
「珠里ちゃん、お願いだからもうやめて? それにこんな所を他人に見られたらマズいって言ったのは珠里ちゃんよ? いい加減、腕を離してちょうだい。ーーね?」
くぅっつ、さすがは大人の色気の百戦錬磨。困り顔すらセクシーだ。 しかも困ってるくせに駄々っ子を宥めるように、私の額に自分の額をコツンと当ててくるではないか!!
ーーうっひゃあああ!!、な、なに? この得体の知れないムズムズ感は!! しかも超至近距離なんですけど!!
それに廉さんの眼は閉じたままだけど、こうして見てもやっぱり廉さん『男』にしか見えない!!
お、恐るべし………女心が分かるイケメン男子。元奥さん! こんなハイスペックなイケメン旦那と別れるなんて ホントに どうかしてるよ!
こんな素敵なイケメン夫を持てるんなら、夫が女の心を持っていてもいいじゃん! 別に それだからって女装するわけでもないんだしさ。 かえって他の女と浮気する可能性がなくって いいんじゃない?
まあ、男の恋人は作られるかもしれないけれど、廉さん家庭を大事にする人だし、相手が男なら子供出来る事も全くないんだから、その辺、妻が目を瞑れば万事オッケー………って、
私、なに言ってんだろ? 人様の事情に勝手に口突っ込んだりなんかして、ウワサ好きの近所のオバチャンか! っての。
ーーううっ、マズい、このままじゃ負ける! 大人の色気に対して仕掛けた方がヤラれる! かくなる上はっつーーー
何故か私の中では雌雄を決する勝負になっているが、この際、置いておいて、私は素早く廉さんの背後に回り込むと、その広い背中に半ばタックルでもするかのように おもいっきり抱き付くと、廉さんが驚いて悲鳴を上げる。
「きゃああっ! 珠里ちゃん!? 今度はなに!?」
「はい♡ 廉さんが相手をしてくれないから甘えてま~す。れんさぁん、珠里を構って?♡」
「珠里ちゃん! 悪ふざけもいい加減にしてちょうだい!! 本当に他人が見たら誤解するわよ?」
「だいじょ~ぶ♡ これは女同士のスキンシップだよ~? それに正面から抱き付いているわけじゃないし、妹が お姉さんに甘えてるだけだも~ん」
「わかった、わかったからお願い、もう離れて? 子供じゃないんだから、本当に困った子ね」
「珠里、まだ子供だよ~? だって未成年だも~ん」
ーーとか言いつつ、そろそろ潮時だな。この辺でやめないと、もしかしたら嫌われちゃうかも。
普段の私ならここまでしない。さすがに無神経な私でも人並みには羞恥心がある。なので何を隠そう、これはわざとだ。いわゆる自己防衛システムが過剰に反応したまでに過ぎない。
そう考えていた矢先、突然聞き覚えのある呆れ混じりの第三者の声が耳に飛び込んできた。
「ーー橘先輩、そこで なにやってるんですか?」
「え? ひ、緋色くん?」
【8ー続】
「さてと、珠里ちゃん。その制服の染みを取らないとね。直後だから染み抜き剤ですぐ取れると思うわ。ブラウスは ここの制服を着れば大丈夫よ。取り敢えず控え室に行きましょうか」
「……廉さん。 改めて思うケド、私って結構イケメンの遭遇率 高いのかも。緋色くんもそうだし、今の碧さんもだし、廉さんの血筋って みんなイケメン揃いなんだね。 なんか『乙女ゲーの世界』にいるみたい」
ぽつりと呟く私に廉さんがクスッと笑う。
「ふふ、そりゃそうよ。イイ女の周りにはイイ男が集まるの」
「イイ女って、廉さん?」
すると廉さんはクスクスと可笑しそうに笑う。
「あら? 私は生物上は『男』の部類よ。当然イイ女は珠里ちゃんでしょ?」
それを聞いて、私は頭を抱える。
「それは絶対にない! 地球がひっくり返ってもない! 私のどこがイイ女なの? 図体がデカいだけのグータラ汚泥女子なのに」
「ふふっ、地球は丸いからひっくり返っても意味ないと思うケド? それに綺麗なものはね、なんの変哲もない地味な原石の中から磨かれて美しく輝くのよ。この店の名前もそこからきているの。
珠里ちゃんも今は原石だけれど、少しずつ周りから磨かれて必ず綺麗な宝石になるわ」
「いや、無理ですね。全く想像つかないし、唯一、想像出来るのは、汚い部屋に とじ込もって乙女ゲーをゲヘゲヘ笑いながら徹夜でplayする自分かな?」
「いやね、珠里ちゃんったら。ゲヘゲヘだなんて。スケベオヤジじゃあるまいし」
「いや、事実っす。実際、弟に変態扱いされてますから」
真顔で答えると、廉さんは声を上げて笑い出した。
「あははは、やっぱり珠里ちゃんって面白い子ね。本当にすごく可愛いわ。しかも明け透けで天然な所がいいのよ。
私は変態の珠里ちゃんでも全然気にしないわよ? 人間ってね、いくら とりすましていても、意外に隠れた内面は変態だったりするんだから」
「ううっ、それもなんかイヤ。世の中の人間が信じられなくなっちゃう」
私が渋い顔をしていると廉さんが肩をポンポンと叩く。
「大丈夫。変態っていっても、他人に迷惑を掛けない変態は もはや『個性』だから。私なんか外見は男だけど中身が女なのに子供作れちゃうんだから、もう立派な変態よねぇ」
「いえ、それは いたって『普通』ですから。というか『個性』です。 そして本来 生き物が子孫を残そうとするのは本能なので、この際、何でも有りじゃないですか? そうじゃないと、今頃 人類滅んじゃいますよ」
「あら、いい事 言うわね。だから珠里ちゃんって好きよ。他の人には気持ち悪がられる事が多いけど、珠里ちゃんって初めっから偏見なく私の性癖を受け入れてくれたでしょう?
でも私の元奥さんはそうじゃなかったわ。まあ、それが普通なのよね。ずっと隠していた私も悪いんだけれど」
そんな廉さんの表情がどこか寂しそうに見えて、私はおもいっきり首を横に振る。
「私は廉さんがすごく優しくて人柄も良い人なのは接していて よく分かっていますから、そんな事は全然気にしません。
それにお子さんをとても大事にしていらっしゃるし、たとえ心が女であっても元奥さんの事だって大切にしていたはずです。
こんな事言ったら失礼だけど、元奥さんって、ほんと見る目がないですね。 廉さんはこんなに素敵で優しくて家庭的な人なのに」
すると突然 背後から ふわっと優しく抱き締められた。いや、抱き締めるといっても体が密着するわけではなく、腕だけが私の腰に触れないように前に回されホールドされている状態だ。
けれど背中から廉さんの香水の香りに包まれて、袖を捲ってむき出しになっている回された筋肉質の腕は完全に男の人の腕で、廉さんの心は女性で同性なのだと分かってはいても、なんだか妙に心臓がドキドキして、緊張からか体が自然と強張ってしまう。
「れ、れれれ、廉さん??」
思わず声がうわずりながら背後の廉さんに話し掛けると、穏やかな優しい声が返ってきた。
「………ありがとう、珠里ちゃん。 そんな事を言ってくれるのは珠里ちゃんだけよ? 本当に優しい子ね。 こんなに綺麗で魅力的な女の子は他に知らないわ。私の最初の結婚相手があなただったら、今頃私も幸せな家庭を築けていたのかもしれないわね」
ーーは、はいぃぃぃ??
私はもう金魚のように口をパクパクと動かす事以外、言葉が出てこない。背後に廉さんの小さな息遣いが聞こえるのがやけにゾクゾクして、絶対に後ろなんて振り向けない。 そして廉さんの腕しか視界に入らない。
ーーれ、れれ、廉さん、一体どうしちゃったの??
しかもそれから無言になる廉さんに、私の変な緊張感が増幅して体が強張ったまま、必死でパニックになりそうな思考を総動員して平静を呼び戻す。
ーーこ、これは いわゆるスキンシップよね? 同性同士の。だ、だけど、廉さんの外見が男性だからか妙な空気が……というか、いや、単に私が変に意識し過ぎているだけなんだけど。
だって廉さん大人だし、私みたいな子供なんて全く眼中にもないでしょ? それ以前に実際、女同士だもんね~ 変な事になんかならないし。
うぅ~ でも なんか廉さん普段から色気があるから、頭で分かってはいても、こういう事されちゃうと妙に緊張するというか、男性意識しちゃって マジに恥ずかしいぃぃ。
廉さん!! 私は子供! まだ18歳の未成年だよ!? しかも大人の階段なんかまだ上ってもないからね? 冗談にしたって、大人のようにかわせるスキルなんて、私には全然ないんだから! ふえぇぇん~ 勘弁してぇぇぇ~!
廉さんが今何を考えているのか、何をしたいのかが全くもって分からないが、妙な雰囲気なのは私が意識し過ぎているからなのかもしれない。
しかも、こちらも話し掛けないせいか、廉さんも無言のまま私に腕を回したまま動かないので、緊張感だけがひた走る。
ーーずっとこのまま、ってことないよね? ………って、こんなところを他の人に見られたらマズいっしょ? いやいや、マズいどころか、超ヤバい!!
だって、ここお店だよ? 他の人もいるんだよ? 今のところ誰も気付いていないみたいだけど、いくら同性同士のスキンシップにしても事情を知らない人達から見れば、完全に大人と女子高生がイチャイチャしてるようにしか見えんでしょ!
それで変な噂が立ったらどーするの!? 廉さん、ロリコン店長とか言われて、本当に変態扱い されちゃうよ?
私は ここが店の中だという事を認識した事で平静を取り戻しつつ、意を決して私に回されている廉さんの腕をツンツンと突つく。
「ーー廉さ、いや、マスター、マスターさん?」
私は廉さんの事を仕事中などは雇用主と従業員の関係上『マスター』と呼んでいるが、仲の良い友人でもあるので、そんな廉さんからの お願いで仕事外や二人の時は『廉さん』と名前で呼んで欲しい、と言われている。
なので私も公私混同しないように意識して心掛けてはいるのだが、さすがに今のこの妙な雰囲気に呑まれて変な方向に転がり落ちる(ーー主に私がね)ような事にならない為にも、あえて『マスター』と言い直す。
「……なあに?」
背後の廉さんからようやく言葉が返ってくる。 声色から少し不機嫌そうに聞こえるのはきっと、気のせいだろうーーうん。
「そろそろ腕を離してもらえませんかね? 多分、この体勢すっごぉ~く マズいっすよ?」
「あら、どうして? ただのスキンシップじゃない。抱き締めているわけじゃないし?」
ーーいやいやいや、どう見ても端から見れば抱き締めているようにしか見えないっス。たとえ体が触れていなくってもね。
「いやいや、ここは お店の中ですよ? お店の人達なら別としても知らない人達から見れば、マスターが女子高生にセクハラしている図にしか見えませんよ。それで警察に通報されでもしたら どうするんです? 私、そっちの方が恥ずかしいです」
私が そう言うと、廉さんの腕が直ぐに離れていく。
おお~ 言ってみるもんだわ。
すると廉さんは深いため息と共に大きく肩を竦めた。
「はあぁ~ 珠里ちゃんの言葉に感動してつい、抱き付いちゃったんだけど、そうよねぇ。端から見ればセクハラと思われても仕方ないわよね。年齢差が恨めしいわ。
しかも珠里ちゃんって嬉しい事も言ってくれるけど、たまに言葉が辛辣だからピンポイントで要所にグサッと刺してくるのよね~ それが結構堪えたりしてね。 まあ、どっちにしても可愛いんだけれど」
それを聞いて ちょっと不安になる。
「それって、あの、もしかして私、人を傷付けるような言動をしていたりしますか?」
ーーそう、私は無神経だと よく言われるので、己の気付かない所で自分の言動で他人を傷付けているのが分からなくて、中学時代に苛めにあったのだ。
私の身内や懇意にしてくれている人達からは私のせいじゃないと言ってはくれたが、それでも自分の言葉が誰かを傷付けている事すら気付かないほどの無神経さに、自分自身に腹が立った。
けれど 分かったところで、どうしていいのか分からずに、結局、選んだのは極力、他人と仲良くするのを避ける事に留まった。
高校では地味に目立たぬように ひっそりとーーを自分に戒め、卒業するまでの3年間を平穏無事に過ごすのが目標だったはずが中々そうもいかず、
何故か学園の芸能界である『生徒会』に陰ながら所属し、一部の人達からも懐かれている異様な結果になっていた。
そして残り一年の学園生活を切った今年に入って、更に私の中学時代の苛めの原因の一つである、女子達からモテモテで大人気の王子様こと幼馴染みの奏と、俺様武将信長ならぬ不肖の弟、康介が入学してきたので、内心不安で心穏やかではない。
それでなくでも地味で冴えない自分が、学園の華である『生徒会』に携わっているだけでも本来、あり得ない事なのに、
こちらが あえて避けようとすればするほど相手が近寄ってくるので避けようもなく、結局は一定の距離感を保ちつつ、付き合っていくという感じになっていた。
………逃げれば逃げるほど追われるって本当なんだな。だからといって、こっちから追うわけじゃないから、ややこしい事になる。
世の中の人達って、どうやって他人と良い人間関係を築いているのか、さっぱり分からないよーーー
そんな私の不安を読み取ったのか、廉さんが私の頭をポンポンと軽く撫でる。
「大丈夫。人間誰しも他人を傷付けずに会話をするなんて、とうてい無理よ。言葉の意味の受け取り方は本人次第なんだもの。
エスパーじゃあるまいし、心の声が聞こえるわけでもないのに、相手の気持ちを推し量るなんて出来っこないわ。
それに誰でも口が滑って、つい心にもない事を言ってしまうことだってあるだろうし、いちいち他人の顔色を伺って会話するなんて、自分の神経磨り減らしてすごく疲れるじゃない。
それに喧嘩する時だって感情が最優先で冷静に考えて ものを言ったりなんか出来ないでしょ?
人間は感情のある生き物なんだから差異があるのは当然よ。相手が自分と同じ価値観で物事を考えていると思うのは大違い。
だから言葉にしてみないと、他人が何を考えているかなんて分からないものよ。案外、聞いてみたら自分が考えているより単純だったりもするしね。
ただ悪意のある言葉と、そうじゃない言葉は誰でも分かるじゃない。
悪意のある言葉は、たとえ褒め言葉であっても相手を傷付けるけど、悪意のない人が使う言葉は相手の人柄を知っていれば、たとえちょっとだけ不快だなって思っても、それは自分の取りようだから許せるものよ。
それが自分の好きな相手なら尚更ね。会話の中で相手が嫌そうなら話題を変えればいいし、自分が言い過ぎたと思えば謝ればいい。
さっき珠里ちゃんが聞いてきたように、それでも気になるなら、そこはダイレクトに聞いてしまうのも有りよ。
勿論、その聞いた結果で傷付くかもしれないけれど、信用している相手なら言葉を選んでくれるから寧ろ良い関係が築けるわ。
心配しなくても大丈夫。珠里ちゃんは すごくいい子よ? だから珠里ちゃんを分かっている人なら、珠里ちゃんが何を言っても理解してくれる。珠里ちゃんが私を理解してくれているのと同じでね。
だから必要以上に自分の言葉を気にしなくてもいいの。珠里ちゃんは本当に思いやりのある優しい子なんだから」
それを聞いた私は今までの心の重荷が落ちたような気がして、感動で胸が いっぱいになり、思わず廉さんの片腕に おもいっきり抱き付いた。
さっきの廉さんの言葉じゃないけれど、人間感動すると抱き付きたくなるんだな~としみじみと実感してしまう。
「ちょ、ちょっと、珠里ちゃん!?」
いきなり私に抱き付かれたので、珍しく廉さんが困惑している。
ーーあははは、さっきの『仕返し』だぁぁぁぁ!!
「廉さん!ありがとう!! 感動すると思わず抱き付きたくなるって気持ち、今すっごく分かったよ! もう、廉さんってばカッコよすぎ!! 大好きっつ!!」
「えっ? ええっ!? だ、大好きって、じゅ、珠里ちゃん!?」
更に驚く廉さんの腕に抱っこちゃんのようにしがみ付きながら頬をスリスリすると、廉さんの声がさっきの私のように上ずって動揺しているのが分かる。
そんな廉さんの珍しくも初々しい様子に、ふつふつと悪戯心が湧いてくるから不思議。
ーーだって廉さんが悪いんだよ? さっき散々 私を大人エロスで動揺させてくれた『お返し』だもんね~ だからこっちは子供の悪戯心で廉さんを困らせちゃろーーうふっつ♡
私の中の何かが ぷつんと切れたーーような気がする。先ほどの廉さんからの抱擁?でパニック寸前になった事と、今まで密かに抱えていた重荷がストンと落ちたせいだろうか? とにかく感動highとも言える高揚感に すごく気分はハイテンションだ。
「廉さん廉さん!! 超カッコいい!! よっ! イケメン代表!! ダンディ店長!! 私があと10年早く生まれていたら絶対に廉さんと結婚してた!!
いや、まてよ? さっき約束した通り、私が将来行き遅れで売れ残りになってたら絶対に結婚してね? そうそう、証人もいる事だし、今更 逃げようとしてもダメだよ? 私、どこまでも地の果てまでだって追い掛けちゃうからーーうふっ♡」
そう言って出来ないウインクを両目でパチパチと何回も繰り返すと、廉さんの表情がますます困惑というより恐怖なものを見る感じだ。
「じゅ、珠里ちゃん!? あなた一体どうしちゃったの!?」
ーーわぁい! あの大人でセクシーな店長が すっごく動揺してるぅ。よぉ~し、このまま『仕返し』続行! 子供をむやみにからかうと怖いんだぞぉぉぅ。
「んん? なんか変なスイッチが入ったかもですぅぅ。だってさっきマスターが急に抱き付いてくるから、珠里、すっごくビックリして頭の中が ひっくり返っちゃったみたい。だから『お・か・え・し』♡ どうですかぁ? マスターは私に抱き付かれてドキドキしますぅ?」
「わ、悪かったわ。ドキドキっていうより逆に怖いわよ、珠里ちゃん。 さっきの事を怒っているなら謝るから、そんな風に大人をからかわないで」
「え~ からかってませんよぉ? こんな可愛い廉さんを見るの新鮮だしぃ、ほら、廉さんって、いっつも忙しいから、今日は珠里が廉さんを独り占めしたいな~って、ダメ?♡」
悪ノリに調子に乗って廉さんの腕に しがみ付きながら、上目遣いで甘えるように言ってみると、廉さんの耳が ほんのり赤くなっている。
ーーわはは、面白~い! 見たか! 乙女ゲーキャラ直伝によるセリフの威力を!!……とはいっても、女ライバルキャラのセリフだけれども。
「珠里ちゃん、お願いだからもうやめて? それにこんな所を他人に見られたらマズいって言ったのは珠里ちゃんよ? いい加減、腕を離してちょうだい。ーーね?」
くぅっつ、さすがは大人の色気の百戦錬磨。困り顔すらセクシーだ。 しかも困ってるくせに駄々っ子を宥めるように、私の額に自分の額をコツンと当ててくるではないか!!
ーーうっひゃあああ!!、な、なに? この得体の知れないムズムズ感は!! しかも超至近距離なんですけど!!
それに廉さんの眼は閉じたままだけど、こうして見てもやっぱり廉さん『男』にしか見えない!!
お、恐るべし………女心が分かるイケメン男子。元奥さん! こんなハイスペックなイケメン旦那と別れるなんて ホントに どうかしてるよ!
こんな素敵なイケメン夫を持てるんなら、夫が女の心を持っていてもいいじゃん! 別に それだからって女装するわけでもないんだしさ。 かえって他の女と浮気する可能性がなくって いいんじゃない?
まあ、男の恋人は作られるかもしれないけれど、廉さん家庭を大事にする人だし、相手が男なら子供出来る事も全くないんだから、その辺、妻が目を瞑れば万事オッケー………って、
私、なに言ってんだろ? 人様の事情に勝手に口突っ込んだりなんかして、ウワサ好きの近所のオバチャンか! っての。
ーーううっ、マズい、このままじゃ負ける! 大人の色気に対して仕掛けた方がヤラれる! かくなる上はっつーーー
何故か私の中では雌雄を決する勝負になっているが、この際、置いておいて、私は素早く廉さんの背後に回り込むと、その広い背中に半ばタックルでもするかのように おもいっきり抱き付くと、廉さんが驚いて悲鳴を上げる。
「きゃああっ! 珠里ちゃん!? 今度はなに!?」
「はい♡ 廉さんが相手をしてくれないから甘えてま~す。れんさぁん、珠里を構って?♡」
「珠里ちゃん! 悪ふざけもいい加減にしてちょうだい!! 本当に他人が見たら誤解するわよ?」
「だいじょ~ぶ♡ これは女同士のスキンシップだよ~? それに正面から抱き付いているわけじゃないし、妹が お姉さんに甘えてるだけだも~ん」
「わかった、わかったからお願い、もう離れて? 子供じゃないんだから、本当に困った子ね」
「珠里、まだ子供だよ~? だって未成年だも~ん」
ーーとか言いつつ、そろそろ潮時だな。この辺でやめないと、もしかしたら嫌われちゃうかも。
普段の私ならここまでしない。さすがに無神経な私でも人並みには羞恥心がある。なので何を隠そう、これはわざとだ。いわゆる自己防衛システムが過剰に反応したまでに過ぎない。
そう考えていた矢先、突然聞き覚えのある呆れ混じりの第三者の声が耳に飛び込んできた。
「ーー橘先輩、そこで なにやってるんですか?」
「え? ひ、緋色くん?」
【8ー続】
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