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第3部
【8】因縁の再会⑮(~緋色くんor『春人』くん?)
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【8ー⑮】
私は自己嫌悪に陥りつつ緋色くんの方に視線を移し、心の中で何度も謝罪する。
ーーああ、本当にごめんなさい、緋色くん。誠心誠意謝るから、なんとか許してもらえないだろうか。
勿論、嫌われているのは仕方ないけれど、せめて彼のトラウマの解消を手伝わせて欲しいな………
そう考えなから緋色くんを見ていると、一瞬、緋色くんと目が合った。
「あっ」と思ったのも束の間、すぐに緋色くんの視線は逸らされ、ピアノの演奏が流れ始めた。
それは結婚ソングのメドレーで、そのプロ並みの素晴らしい演奏に、周囲から感嘆のため息が聞こえる。当然、私もその一人だ。
ーーうわぁぁ、素敵。緋色くんって、すごくピアノが上手。確かエレクトーン専攻だって言っていたけど、ピアノでも全然違和感ない。
しかも実際のピアノ男子って超カッコいい! 現実の男の子だけどキュン萌えするから不思議だよ。しかも、もはやあそこにいるのが『春人』くんに見えてならない!
『珠里、僕の気持ちを素直に演奏するから聴いていて。順位なんて関係ない。他の誰でもない、君だけの為に心を込めて弾くから』
あれは『春人』くんのクライマックスシーン。コンクールでの演奏前に『春人』くんが両手で握った私(ヒロイン)の手を自分の額にくっつけながらのキュン萌えセリフの一幕。
ーーあぁ~ん♡『春人』くんが自分のコンクールなのに、私(ヒロイン)の為だけに演奏してくれるなんて! そんな究極の贅沢、あっていいの!?
私は目を瞑ると自分の胸に手をあてて『春人』くんもとい、緋色くんの演奏を聴きながら、勝手に妄想を膨らませていた。
緋色くんは自分のお姉さんの為に演奏しているのは百も承知だが、緋色くんが乙女ゲーの中でも私のイチオシキャラである『春人』くんに外見が似ているだけに、頭の中で勝手にゲーム世界に置き換えられて、一度、盛り上がってしまった妄想はもはや止まらない。
しかもゲームの中で『春人』くんが演奏していた曲とは全く違うけれど、この際、曲なんて何でもいい。今、この現実において『春人』くんがピアノを弾いている事実だけがあれば、おかず無しで ごはんが何杯でもいける!!
そして『春人』くんーーじゃなくって緋色くんの演奏が終わると、周囲から当然のごとく拍手喝采、アンコールの声が飛ぶ。姉の桃華さんを見れば涙々で号泣だ。
私も素晴らしい演奏の感動の余韻に浸りながら思わず「カッコいい」と無意識に口に出ていると、早智さんと綾乃さんがニヤニヤと笑みを浮かべながら、こちらを見ている。
「ふふっ、タマちゃん。もしかして惚れちゃった? 確かに桃華の弟くん、すっごくカッコ良かったよね~ 私もマジで惚れちゃいそうになったくらいだもん」
ーーと、言いつつ、ぽーっと頬を赤らめている早智さん。
「はあぁ~本当に素敵だった~ やっぱりピアノ男子って超イケてる。しかも それをイケメンが演奏すると益々、絵になるっていうか様になっていて、実は私もずっと胸がドキドキしっぱなしだったよ。
とは言っても、さすがに高校一年生の男の子をどうこうするつもりはないけど、すっかり緋色くんのファンになっちゃった。あんな素敵な弟がいて桃華が羨ましいな~」
ーーと、早智さんに続いて綾乃さんも緋色くんの事をベタ褒めだ。
うん! 分かる、分かるよ、その気持ち! 私も改めて思うけど、ピアノが弾ける弟が欲しい!!
だけど ウチの弟の康介はピアノなんて柄じゃないし、もし弾けたとしても緋色くんのように姉の為に演奏なんて、絶対にしてくれないだろう。
幼なじみで弟の友人でもある奏は幼少時からピアノを習っていたので、今でも弾けるとは思うが、中学に上がってからは本格的に部活動を始めた事もあって、ピアノの方は止めてしまったらしく、
これはあくまで本人の意思なので他人がどうこう言う筋合いではないけれど、こうして直に緋色くんの演奏を聴いてしまうと、勿体無いなあ~とも思ってしまう。
ーー緋色くんも勿論カッコよかったけど、これが奏だったら、ここにいる女子達全員が、おそらく昇天するだろうな。
それでなくても奏って超イケメン王子様なのに、輪をかけてピアノの王子様なんかになったら、絵面的にも かなりヤバイでしょ。
だから個人的にはすごく残念だけど奏、ピアノやめて正解かもね。だって奏のストーカーとか、超増えそうだもん。危ないったら ありゃしない。
そして緋色くんはアンコールに渋々応えるかたちで少し短めの曲を一曲演奏し終わると、これ以上、引き留められたくないのか、再びアンコールの拍手が始まりそうになる前に、さっさと会場の外に出ていってしまった。
早智さんと綾乃さんが桃華さんの所に行くので私も一緒に行こうと誘ってくれたのだが、それでなくても学校の制服姿が目立つ上、出て行った緋色くんも気になるので様子を見に行くと二人に告げると、
何故か二人から「頑張れ~」とエールをおくられ、「後で絶対に話を聞かせてね。暁の方は私達が上手く引き留めておくから安心していいよ」と満面の笑顔で背中を叩かれ、送りだされた。
ーーなんでそこで暁さん??
【8ー続】
私は自己嫌悪に陥りつつ緋色くんの方に視線を移し、心の中で何度も謝罪する。
ーーああ、本当にごめんなさい、緋色くん。誠心誠意謝るから、なんとか許してもらえないだろうか。
勿論、嫌われているのは仕方ないけれど、せめて彼のトラウマの解消を手伝わせて欲しいな………
そう考えなから緋色くんを見ていると、一瞬、緋色くんと目が合った。
「あっ」と思ったのも束の間、すぐに緋色くんの視線は逸らされ、ピアノの演奏が流れ始めた。
それは結婚ソングのメドレーで、そのプロ並みの素晴らしい演奏に、周囲から感嘆のため息が聞こえる。当然、私もその一人だ。
ーーうわぁぁ、素敵。緋色くんって、すごくピアノが上手。確かエレクトーン専攻だって言っていたけど、ピアノでも全然違和感ない。
しかも実際のピアノ男子って超カッコいい! 現実の男の子だけどキュン萌えするから不思議だよ。しかも、もはやあそこにいるのが『春人』くんに見えてならない!
『珠里、僕の気持ちを素直に演奏するから聴いていて。順位なんて関係ない。他の誰でもない、君だけの為に心を込めて弾くから』
あれは『春人』くんのクライマックスシーン。コンクールでの演奏前に『春人』くんが両手で握った私(ヒロイン)の手を自分の額にくっつけながらのキュン萌えセリフの一幕。
ーーあぁ~ん♡『春人』くんが自分のコンクールなのに、私(ヒロイン)の為だけに演奏してくれるなんて! そんな究極の贅沢、あっていいの!?
私は目を瞑ると自分の胸に手をあてて『春人』くんもとい、緋色くんの演奏を聴きながら、勝手に妄想を膨らませていた。
緋色くんは自分のお姉さんの為に演奏しているのは百も承知だが、緋色くんが乙女ゲーの中でも私のイチオシキャラである『春人』くんに外見が似ているだけに、頭の中で勝手にゲーム世界に置き換えられて、一度、盛り上がってしまった妄想はもはや止まらない。
しかもゲームの中で『春人』くんが演奏していた曲とは全く違うけれど、この際、曲なんて何でもいい。今、この現実において『春人』くんがピアノを弾いている事実だけがあれば、おかず無しで ごはんが何杯でもいける!!
そして『春人』くんーーじゃなくって緋色くんの演奏が終わると、周囲から当然のごとく拍手喝采、アンコールの声が飛ぶ。姉の桃華さんを見れば涙々で号泣だ。
私も素晴らしい演奏の感動の余韻に浸りながら思わず「カッコいい」と無意識に口に出ていると、早智さんと綾乃さんがニヤニヤと笑みを浮かべながら、こちらを見ている。
「ふふっ、タマちゃん。もしかして惚れちゃった? 確かに桃華の弟くん、すっごくカッコ良かったよね~ 私もマジで惚れちゃいそうになったくらいだもん」
ーーと、言いつつ、ぽーっと頬を赤らめている早智さん。
「はあぁ~本当に素敵だった~ やっぱりピアノ男子って超イケてる。しかも それをイケメンが演奏すると益々、絵になるっていうか様になっていて、実は私もずっと胸がドキドキしっぱなしだったよ。
とは言っても、さすがに高校一年生の男の子をどうこうするつもりはないけど、すっかり緋色くんのファンになっちゃった。あんな素敵な弟がいて桃華が羨ましいな~」
ーーと、早智さんに続いて綾乃さんも緋色くんの事をベタ褒めだ。
うん! 分かる、分かるよ、その気持ち! 私も改めて思うけど、ピアノが弾ける弟が欲しい!!
だけど ウチの弟の康介はピアノなんて柄じゃないし、もし弾けたとしても緋色くんのように姉の為に演奏なんて、絶対にしてくれないだろう。
幼なじみで弟の友人でもある奏は幼少時からピアノを習っていたので、今でも弾けるとは思うが、中学に上がってからは本格的に部活動を始めた事もあって、ピアノの方は止めてしまったらしく、
これはあくまで本人の意思なので他人がどうこう言う筋合いではないけれど、こうして直に緋色くんの演奏を聴いてしまうと、勿体無いなあ~とも思ってしまう。
ーー緋色くんも勿論カッコよかったけど、これが奏だったら、ここにいる女子達全員が、おそらく昇天するだろうな。
それでなくても奏って超イケメン王子様なのに、輪をかけてピアノの王子様なんかになったら、絵面的にも かなりヤバイでしょ。
だから個人的にはすごく残念だけど奏、ピアノやめて正解かもね。だって奏のストーカーとか、超増えそうだもん。危ないったら ありゃしない。
そして緋色くんはアンコールに渋々応えるかたちで少し短めの曲を一曲演奏し終わると、これ以上、引き留められたくないのか、再びアンコールの拍手が始まりそうになる前に、さっさと会場の外に出ていってしまった。
早智さんと綾乃さんが桃華さんの所に行くので私も一緒に行こうと誘ってくれたのだが、それでなくても学校の制服姿が目立つ上、出て行った緋色くんも気になるので様子を見に行くと二人に告げると、
何故か二人から「頑張れ~」とエールをおくられ、「後で絶対に話を聞かせてね。暁の方は私達が上手く引き留めておくから安心していいよ」と満面の笑顔で背中を叩かれ、送りだされた。
ーーなんでそこで暁さん??
【8ー続】
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