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第3部
【8】因縁の再会⑬(~『A』から『G』になる方法)
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【8ー⑬】
………ああ~やってしまった。
私は自分のドジッ子加減に情けない事この上ない。
やはり人間、常日頃から余裕を持って行動するべきだと身に染みて実感する。そして今はもうバッグの中身にしか意識が向かない。
ーーううっ、私のバカぁぁ。 どうして『スマホ』と『テレビのリモコン』を間違うかな。どう見ても全く違うじゃんか!!
そう、私は大いなる間違いをおかしていた。
それは居間で充電していたはずの自分の『スマホ』を『テレビのリモコン』と間違えたのだ。
それも康介や奏に遭遇するのを避ける為、急いで家を出なければと慌ててバッグに突っ込んだのが、まさかの『テレビのリモコン』だったとは。
普通、手に取れば気付づくものだが、なぜか摩訶不思議な事に、その時は全然、気付かなかった。 ………人間って不思議だね。
そして スマホがテレビのリモコンになっていた事に気付いたのも、つい今しがたである。
電車の中では携帯を使えない事もあり、しかも康介達からのメールが入ってくるのを想定して、敢えてバッグの奥底に押し込んで、スマホを見るのを なるべく避けていたというのもある。
そしてパーティーの席についてから緋色くんが隣にいた時は まだよかったものの、催し物の準備の為に一旦緋色くんが席を外してしまったので、
やはり知らない人達の中に自分がいる事がなんとなく居心地が悪くて、スマホでも弄りながら間を持たせようとバッグの中身を確認すると
ーーーええっ!? な、なんで?? という面白い展開に。
ーーあぁ~ほんっとに、まさかのあり得ない。スマホが入っているはずが、なぜかテレビのリモコンが顔を出す。
ええっ?? ナゼに? まちがえた?? いや、そんなことよりも、どうしよう。テレビのリモコンがないと、ウチのテレビが見れないじゃん! あうぅ~帰ったら絶対お母さんに怒られるぅぅ。
「また、あんたって子はなにやってるのっ!!」と怒りの形相の母の顔が目に浮かぶ。
そして弟の康介からも馬鹿姉貴扱いをされ、唯一、優しい奏だけがそんな私を庇ってくれるだろう。
とにかくパーティーが終わったら即行で家に帰らないと。
ーーあ、でも暁さんには面白いから後で教えちゃろ!
などと内心、考えながらソワソワしていると、私の側に先ほど新婦の控え室で会った桃華さんのお友達の早智さんと綾乃さんがやってきた。
「タ~マちゃん、先ほどは どーも。楽しんでる?」
「こんにちは~タマちゃん。遊びに来ちゃった」
「あ、はい。こんにちは。先ほどは こちらこそ、どーもデス」
そんな早智さんと綾乃さんは両手にドリンクとスイーツを盛った皿を持って私の両サイドに立つので、私も席を立つと ペコリと頭を下げる。
「さっきは慌ただしくて自己紹介も まだだったからさ、だから改めて。 私は『安藤 早智』 桃華の友人で暁とも高校からの腐れ縁の友人なの」
「同じく桃華の友人で暁とは腐れ縁の友人の『猪倉 綾乃』です。よろしくね~」
「あ、あの、私は『橘 珠里』です。暁__あき__#さんのバイトの後輩で緑峰学園高校3年です。こちらこそよろしくお願いします」
早智さんと綾乃さんに自己紹介され、慌てて同じく挨拶を返すと、二人はニッコリと笑う。
「うんうん、名前からして もう美少女だね。もしかして『タマ』って呼ばれてるのも名前から来てるの?」
早智さんの言葉に面食らいながらも頷く。
「全然、美少女なんかじゃないですよ。だけど『タマ』はそうです。珠里の『じゅ』は『たま』とも呼ぶ漢字なので、主に暁さんが私をそう呼んでいます」
「だから『タマ』ちゃんか~ 暁にしては中々ネーミングセンスいいじゃん。うん、可愛い 可愛い。しかもタマちゃんって『猫』っぽいからピッタリだね」
今度は綾乃さんの言葉に首を傾げる。
「え? 私って『猫』っぽいでしょうか?」
「うん。ほら、猫って体が しなやかでスタイルいいし、知的で誰にも媚びない感じとか、それでいて可愛いから、まさにいい女の代名詞でしょ? だから背がスラッと高くてモデル体型の可愛いタマちゃんが、もはや『猫』って感じ?」
「うわぁ~ やめて下さ~いぃ! 私は知的どころかヌケ作だし、ただ図体がデカイだけの、貧相な胸肉より腹肉の方が断然豊かなバラ肉ぷよ腹体型なんですぅぅ。
それなのにスタイルなんて全然良くないですからぁぁ。 ーーううっ、なんか自分で言っててムショーに悲しくなってきた」
私が両耳を手で塞ぎながらブンブンと首を振ると、早智さんが声を上げて笑いながら、私の肩をポンポンと叩く。
「あははは、やっぱ、タマちゃん面白いわ! しかも胸肉とか腹肉とかバラ肉ぷよ腹体型って、超ウケる~ あの暁がハマるのも分かるわぁ~
私もタマちゃんがスッゴく気にいっちゃった。大丈夫だよ~ タマちゃん。私もおんなじ、この通りの胸無しちーぱいでバラ肉ぷよ腹体型だもん。それに女は見た目じゃない! 中身で勝負よ!!
ーーあ、でもタマちゃんは見た目も良しだからな~ くっそ~ おねーさんはウラヤマシイぞ~?」
「そうそう、女は中身で勝負よね~ それなのに世の男共は どうしてそれに気付かないんだろ? 美人の巨乳なんて性格悪いに決まってるのに大抵そっちに目がいくもんねぇ」
そう言って頷いている綾乃さんを早智さんがジト目で睨む。
「なぁ~に言ってるんだか。小悪魔ベビーフェイスで『G』カップ巨乳の あんたが それ言っても、全く説得力ないから」
それを聞いて愕然とする。
「ええっ!『G』!? ………う、うらやましい。私なんて、かなり見栄はって、ようやく『B』なのに………」
ーーそう、いわゆる“寄せて上げて”という手法だ。
「あははは、タマちゃん、それなら問題ないない。私なんて今だ『A』だもん」
「そ、そうですよね。それに胸が大きいと肩こりも酷いって話も聞くし、夏場なんか汗かくと蒸れて大変だとかーーー」
そんな私の言葉に綾乃さんが笑う。
「ほ~んと、その通りだよ。胸なんて大きくても、かえって損な事ばかりだから。
ブラもサイズがなくて可愛い下着が買えないし、体にフィットする服だと胸ばっかり悪目立ちしすぎて、周りからエロい目で見られるし、しかも走ろうものなら千切れそうなくらい左右に揺すぶられて痛いしさ。
それに寝る時だって、うつ伏せで寝たら胸が押し潰されて苦しいから無理だし、そう考えたら胸なんて無い方が幸せだよ。あ~あ、私も胸が小さければ よかったのにな~」
しみじみと『巨乳』特有の悩みを語る綾乃さん。一方『貧乳』である私と早智さんは共に同じ表情になる。
「あの………巨乳の方々の大変さはよく分かりましたが、どうしてでしょう? いくら聞いても同情出来ないというか、しかも悔しいというか虚しいというか……
いえ、単に私の心が狭いからなんですけど、やっぱりうらやましいです」
ぽつりと呟く私の背中を早智さんがポンポンと叩く。
「タマちゃん、それ私も同じ事思ったから大丈夫。心が狭いなんてとんでもない。ちーぱいの私達には共感出来なくて当然なんだもの。
それに貧乳だって『彼氏』が出来れば どうとでもなるから、私達はこれからの未来に希望を持ちましょう!」
そんな早智さんは私の肩を抱いて、未来?と思われる方向を指差す。
「『貧乳』と『彼氏』って、そんなに関係ありますかね?」
首を傾げる私に早智さんは「チッチッ」とひと差し指を横に振りながら、ぶっ飛び発言をかましてくる。
「タマちゃん、大ありだから! いい? 胸肉は成長するの。だから最初は小さくても“揉んで”もらっていると次第に大きくなるのよ。
だから『彼氏』に揉んでもらえば巨乳も夢じゃないわ! そういうの世間でもよく聞くでしょ? 女の体って不思議と男次第なのよね~」
「は? も、揉んでもらうって、カ、カカ、カレシに??」
それを聞いた私の動揺は言うまでもない。さすがにその意味が分からないでもなく、羞恥心が一気に押し寄せ、頭に血が上ってきて赤面する。
「そうそう。でもその『定説』ってあまり信憑性が無いかもね。だって早智の胸、いまだ全然 成長してないし?」
そういって綾乃さんが早智さんの胸を凝視すると、早智さんは両腕で自分の胸をすかさず隠す。
「ちょっと! そんな風に人の胸をジロジロ観察しないでくれる? それに私の胸のサイズが変わらないのは今までの『彼氏』が下手クソだっただけでしょ?
きっと、ここのマスターさんみたいな洗練されたセクシーな大人の男性の手に掛かれば、今は『A』でも忽ち『 G』にランクアップするに違いないわ!」
「あははは、それなら尚更、早智には無理だね。だって そのセクシーな大人のマスターさんは、さっきタマちゃんの婚約者になっちゃったじゃん。ご愁傷様でした~」
私はそれを聞いて、ブンブンと首を横に振る。
「いやいやいや、マスターが婚約者とか、あれは話の流れのあやというか、まるっと冗談ですからね?」
すると早智さんが私の体を自分の方に引き寄せる。
「タマちゃん! なに言ってるの!? それでなくてもあんな特級の上玉、絶対に逃しちゃ駄目よ!! 向こうは おネエでもタマちゃんなら大丈夫だって言ってるんだから、そこにつけ込まなくっちゃ!
とにかく相手は、容姿良し! 知性良し! 財力良し! まあ、ちょっと年の差はあるけど、そんなもの今時 問題無し! 悔しいけど、タマちゃんならマスターさんとくっつくの許す!!」
は、はいぃぃ? しかもどうして、そんな話に!!
そんな綾乃さんも、やや呆れ顔で小さく肩を竦めている。
「あのさ~ 早智が許すもなにもないと思うケド? それにマスターさんは始めっから、タマちゃんしか受け付けてないじゃん」
「う、うるさいな。とにかくタマちゃん! 私の人生経験からいって、年齢の近い『発展途上』の男よりも『熟練』した男が一番よ。なによりエッチも上手だし、きっと、どんな貧乳でも立派な巨乳にしてくれるわ!
だから今からでもマスターさんに唾をつけておきなよ。なんだったら私も色々と協力するからさ。勿論、暁にも邪魔なんかさせないから」
「あはは、ええっ~と、あの、その~ なんと言いますかーーー」
私はすでに頭の中がプチパニック状態にある。しかもなんで、こんな場所で、こんな話になっているんだろ?
ーーいや、まあ、私も18Rゲームとか平然とする女だし、そういった知識もそれなりにはあるんだけれど、一応まだ未成年で高校生だし、
中にはすでに大人の世界を経験している子達もいるんだろうけど、私にはまだまだハードルが高いというか現実的じゃないし、しかも耳年増なだけで、そういった話を普通に出来るレベルにすら達していない。
そんなお子様の私が大人の廉さんをどうこう出来るはずもない。しかも勝負する土俵すら違うのに、私に何をどうしろと? それなら まだ緋色くんとくっつけられる方がまだ分かる。
「ーーおい、そこの二人!! また、ろくでもない話を珠に吹き込んで、いい加減にしろよ!」
突然、聞き覚えのある声に振り返れば、そこには怖い形相をした暁さんが立っていた。
【8ー続】
………ああ~やってしまった。
私は自分のドジッ子加減に情けない事この上ない。
やはり人間、常日頃から余裕を持って行動するべきだと身に染みて実感する。そして今はもうバッグの中身にしか意識が向かない。
ーーううっ、私のバカぁぁ。 どうして『スマホ』と『テレビのリモコン』を間違うかな。どう見ても全く違うじゃんか!!
そう、私は大いなる間違いをおかしていた。
それは居間で充電していたはずの自分の『スマホ』を『テレビのリモコン』と間違えたのだ。
それも康介や奏に遭遇するのを避ける為、急いで家を出なければと慌ててバッグに突っ込んだのが、まさかの『テレビのリモコン』だったとは。
普通、手に取れば気付づくものだが、なぜか摩訶不思議な事に、その時は全然、気付かなかった。 ………人間って不思議だね。
そして スマホがテレビのリモコンになっていた事に気付いたのも、つい今しがたである。
電車の中では携帯を使えない事もあり、しかも康介達からのメールが入ってくるのを想定して、敢えてバッグの奥底に押し込んで、スマホを見るのを なるべく避けていたというのもある。
そしてパーティーの席についてから緋色くんが隣にいた時は まだよかったものの、催し物の準備の為に一旦緋色くんが席を外してしまったので、
やはり知らない人達の中に自分がいる事がなんとなく居心地が悪くて、スマホでも弄りながら間を持たせようとバッグの中身を確認すると
ーーーええっ!? な、なんで?? という面白い展開に。
ーーあぁ~ほんっとに、まさかのあり得ない。スマホが入っているはずが、なぜかテレビのリモコンが顔を出す。
ええっ?? ナゼに? まちがえた?? いや、そんなことよりも、どうしよう。テレビのリモコンがないと、ウチのテレビが見れないじゃん! あうぅ~帰ったら絶対お母さんに怒られるぅぅ。
「また、あんたって子はなにやってるのっ!!」と怒りの形相の母の顔が目に浮かぶ。
そして弟の康介からも馬鹿姉貴扱いをされ、唯一、優しい奏だけがそんな私を庇ってくれるだろう。
とにかくパーティーが終わったら即行で家に帰らないと。
ーーあ、でも暁さんには面白いから後で教えちゃろ!
などと内心、考えながらソワソワしていると、私の側に先ほど新婦の控え室で会った桃華さんのお友達の早智さんと綾乃さんがやってきた。
「タ~マちゃん、先ほどは どーも。楽しんでる?」
「こんにちは~タマちゃん。遊びに来ちゃった」
「あ、はい。こんにちは。先ほどは こちらこそ、どーもデス」
そんな早智さんと綾乃さんは両手にドリンクとスイーツを盛った皿を持って私の両サイドに立つので、私も席を立つと ペコリと頭を下げる。
「さっきは慌ただしくて自己紹介も まだだったからさ、だから改めて。 私は『安藤 早智』 桃華の友人で暁とも高校からの腐れ縁の友人なの」
「同じく桃華の友人で暁とは腐れ縁の友人の『猪倉 綾乃』です。よろしくね~」
「あ、あの、私は『橘 珠里』です。暁__あき__#さんのバイトの後輩で緑峰学園高校3年です。こちらこそよろしくお願いします」
早智さんと綾乃さんに自己紹介され、慌てて同じく挨拶を返すと、二人はニッコリと笑う。
「うんうん、名前からして もう美少女だね。もしかして『タマ』って呼ばれてるのも名前から来てるの?」
早智さんの言葉に面食らいながらも頷く。
「全然、美少女なんかじゃないですよ。だけど『タマ』はそうです。珠里の『じゅ』は『たま』とも呼ぶ漢字なので、主に暁さんが私をそう呼んでいます」
「だから『タマ』ちゃんか~ 暁にしては中々ネーミングセンスいいじゃん。うん、可愛い 可愛い。しかもタマちゃんって『猫』っぽいからピッタリだね」
今度は綾乃さんの言葉に首を傾げる。
「え? 私って『猫』っぽいでしょうか?」
「うん。ほら、猫って体が しなやかでスタイルいいし、知的で誰にも媚びない感じとか、それでいて可愛いから、まさにいい女の代名詞でしょ? だから背がスラッと高くてモデル体型の可愛いタマちゃんが、もはや『猫』って感じ?」
「うわぁ~ やめて下さ~いぃ! 私は知的どころかヌケ作だし、ただ図体がデカイだけの、貧相な胸肉より腹肉の方が断然豊かなバラ肉ぷよ腹体型なんですぅぅ。
それなのにスタイルなんて全然良くないですからぁぁ。 ーーううっ、なんか自分で言っててムショーに悲しくなってきた」
私が両耳を手で塞ぎながらブンブンと首を振ると、早智さんが声を上げて笑いながら、私の肩をポンポンと叩く。
「あははは、やっぱ、タマちゃん面白いわ! しかも胸肉とか腹肉とかバラ肉ぷよ腹体型って、超ウケる~ あの暁がハマるのも分かるわぁ~
私もタマちゃんがスッゴく気にいっちゃった。大丈夫だよ~ タマちゃん。私もおんなじ、この通りの胸無しちーぱいでバラ肉ぷよ腹体型だもん。それに女は見た目じゃない! 中身で勝負よ!!
ーーあ、でもタマちゃんは見た目も良しだからな~ くっそ~ おねーさんはウラヤマシイぞ~?」
「そうそう、女は中身で勝負よね~ それなのに世の男共は どうしてそれに気付かないんだろ? 美人の巨乳なんて性格悪いに決まってるのに大抵そっちに目がいくもんねぇ」
そう言って頷いている綾乃さんを早智さんがジト目で睨む。
「なぁ~に言ってるんだか。小悪魔ベビーフェイスで『G』カップ巨乳の あんたが それ言っても、全く説得力ないから」
それを聞いて愕然とする。
「ええっ!『G』!? ………う、うらやましい。私なんて、かなり見栄はって、ようやく『B』なのに………」
ーーそう、いわゆる“寄せて上げて”という手法だ。
「あははは、タマちゃん、それなら問題ないない。私なんて今だ『A』だもん」
「そ、そうですよね。それに胸が大きいと肩こりも酷いって話も聞くし、夏場なんか汗かくと蒸れて大変だとかーーー」
そんな私の言葉に綾乃さんが笑う。
「ほ~んと、その通りだよ。胸なんて大きくても、かえって損な事ばかりだから。
ブラもサイズがなくて可愛い下着が買えないし、体にフィットする服だと胸ばっかり悪目立ちしすぎて、周りからエロい目で見られるし、しかも走ろうものなら千切れそうなくらい左右に揺すぶられて痛いしさ。
それに寝る時だって、うつ伏せで寝たら胸が押し潰されて苦しいから無理だし、そう考えたら胸なんて無い方が幸せだよ。あ~あ、私も胸が小さければ よかったのにな~」
しみじみと『巨乳』特有の悩みを語る綾乃さん。一方『貧乳』である私と早智さんは共に同じ表情になる。
「あの………巨乳の方々の大変さはよく分かりましたが、どうしてでしょう? いくら聞いても同情出来ないというか、しかも悔しいというか虚しいというか……
いえ、単に私の心が狭いからなんですけど、やっぱりうらやましいです」
ぽつりと呟く私の背中を早智さんがポンポンと叩く。
「タマちゃん、それ私も同じ事思ったから大丈夫。心が狭いなんてとんでもない。ちーぱいの私達には共感出来なくて当然なんだもの。
それに貧乳だって『彼氏』が出来れば どうとでもなるから、私達はこれからの未来に希望を持ちましょう!」
そんな早智さんは私の肩を抱いて、未来?と思われる方向を指差す。
「『貧乳』と『彼氏』って、そんなに関係ありますかね?」
首を傾げる私に早智さんは「チッチッ」とひと差し指を横に振りながら、ぶっ飛び発言をかましてくる。
「タマちゃん、大ありだから! いい? 胸肉は成長するの。だから最初は小さくても“揉んで”もらっていると次第に大きくなるのよ。
だから『彼氏』に揉んでもらえば巨乳も夢じゃないわ! そういうの世間でもよく聞くでしょ? 女の体って不思議と男次第なのよね~」
「は? も、揉んでもらうって、カ、カカ、カレシに??」
それを聞いた私の動揺は言うまでもない。さすがにその意味が分からないでもなく、羞恥心が一気に押し寄せ、頭に血が上ってきて赤面する。
「そうそう。でもその『定説』ってあまり信憑性が無いかもね。だって早智の胸、いまだ全然 成長してないし?」
そういって綾乃さんが早智さんの胸を凝視すると、早智さんは両腕で自分の胸をすかさず隠す。
「ちょっと! そんな風に人の胸をジロジロ観察しないでくれる? それに私の胸のサイズが変わらないのは今までの『彼氏』が下手クソだっただけでしょ?
きっと、ここのマスターさんみたいな洗練されたセクシーな大人の男性の手に掛かれば、今は『A』でも忽ち『 G』にランクアップするに違いないわ!」
「あははは、それなら尚更、早智には無理だね。だって そのセクシーな大人のマスターさんは、さっきタマちゃんの婚約者になっちゃったじゃん。ご愁傷様でした~」
私はそれを聞いて、ブンブンと首を横に振る。
「いやいやいや、マスターが婚約者とか、あれは話の流れのあやというか、まるっと冗談ですからね?」
すると早智さんが私の体を自分の方に引き寄せる。
「タマちゃん! なに言ってるの!? それでなくてもあんな特級の上玉、絶対に逃しちゃ駄目よ!! 向こうは おネエでもタマちゃんなら大丈夫だって言ってるんだから、そこにつけ込まなくっちゃ!
とにかく相手は、容姿良し! 知性良し! 財力良し! まあ、ちょっと年の差はあるけど、そんなもの今時 問題無し! 悔しいけど、タマちゃんならマスターさんとくっつくの許す!!」
は、はいぃぃ? しかもどうして、そんな話に!!
そんな綾乃さんも、やや呆れ顔で小さく肩を竦めている。
「あのさ~ 早智が許すもなにもないと思うケド? それにマスターさんは始めっから、タマちゃんしか受け付けてないじゃん」
「う、うるさいな。とにかくタマちゃん! 私の人生経験からいって、年齢の近い『発展途上』の男よりも『熟練』した男が一番よ。なによりエッチも上手だし、きっと、どんな貧乳でも立派な巨乳にしてくれるわ!
だから今からでもマスターさんに唾をつけておきなよ。なんだったら私も色々と協力するからさ。勿論、暁にも邪魔なんかさせないから」
「あはは、ええっ~と、あの、その~ なんと言いますかーーー」
私はすでに頭の中がプチパニック状態にある。しかもなんで、こんな場所で、こんな話になっているんだろ?
ーーいや、まあ、私も18Rゲームとか平然とする女だし、そういった知識もそれなりにはあるんだけれど、一応まだ未成年で高校生だし、
中にはすでに大人の世界を経験している子達もいるんだろうけど、私にはまだまだハードルが高いというか現実的じゃないし、しかも耳年増なだけで、そういった話を普通に出来るレベルにすら達していない。
そんなお子様の私が大人の廉さんをどうこう出来るはずもない。しかも勝負する土俵すら違うのに、私に何をどうしろと? それなら まだ緋色くんとくっつけられる方がまだ分かる。
「ーーおい、そこの二人!! また、ろくでもない話を珠に吹き込んで、いい加減にしろよ!」
突然、聞き覚えのある声に振り返れば、そこには怖い形相をした暁さんが立っていた。
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