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第3部

【8】因縁の再会⑩(結婚相手は廉さん?暁さん?)

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【8ー⑩】



私は目をパチクリさせたまま口をポッカ~ンと開けていると、あきさんがそんなれんさんにめ寄った。


「廉さん!? 急に どうしたんだよ! しかもタマを嫁にってーーー」


「だって、暁がじゅちゃんの恋路を邪魔しているせいで珠里ちゃんが、この先もずっと独り身で おばあちゃんになってしまったら可哀想じゃない。だから私が珠里ちゃんをお嫁さんに貰おうかしらって」


「はああ? 廉さんは男しか愛せない『オネエ』だろ? それでバツイチになったのに、なんでまた女と結婚するとか、まさか『両刀』に目覚めたとか言う気じゃないだろうな?」


「イヤね、そんなわけないでしょ。 女の子とは友人にはなれても性欲なんか全く湧かないもの。でも暁、愛っていうのは男女関係だけじゃなく家族愛っていうのもあるのよ? 

その点、珠里ちゃんは私との相性も良くて趣味も合うんだもの。一緒に生活していても絶対に楽しいわ。 ーーね、珠里ちゃん?」


「う~ん。そうだなあ。 確かに楽しいかも………」


………確かに、私は現実の男とは結婚なんか出来そうもないし、かといって将来 独り身も正直寂しい。 

その点、廉さんなら『乙女ゲー』のイケメンしか愛せないオタクな私でもOKだし、家事一般が苦手でも廉さんは得意だから問題なし。

しかも廉さんは経営者で経済力もあるから 普通に生活していて困る事はない。 何より廉さんの事は大好きだし性格も趣味も合う。

勿論私の方も廉さんを束縛する気もないし、もし廉さんに『彼氏』がいても私は全然問題なし。


………これって、実は超美味しい? しかも廉さんは心は女でも外見は超イケメン男性だ。男女としての愛情を求めなければ『理想の夫』かもしれない………


無言で廉さんを見つめると、廉さんがクスッと魅惑的に微笑んだので、これは乙女の条件反射だろう、イケメンの微笑に当てられて私の心臓は大きく鼓動を打ち、一気に体中の血液が顔に集中して真っ赤になる。

それを見た暁さんがあわてて私と廉さんの間に入ってきて、その視界を塞ぐ。


「廉さん! 冗談キツイぜ。しかも幼気いたいけな女子高生をたぶらかすなよな。珠が本気にしたらどうすんだ!」


すると視界を塞がれてはいるが、廉さんの楽しそうな声が聞こえる。


「あら、冗談でも誑かしてもなく、私は本気よ? 私はもう普通の結婚は出来ないし、珠里ちゃんだったら私の性癖も知っているから隠す必要もないし、珠里ちゃんがそんな私でも受け入れてくれるなら、私は珠里ちゃんを一生幸せな奥さんにしてあげられるもの」


「はあ………廉さん。珠はまだ若いし、もし結婚したとして珠が子供が欲しいって言ったらどうするんだよ!? 廉さんは無理だろう?」


ーーなっ、な、子、子供!? しかも なんか話が徐々に盛り上がってる気が………


「そうねえ、まあ、私も子供は嫌いじゃないし、体外受精って方法もあるけれど、やっぱり自然に授かる方が一番良いわよね~ 

まあ、その時になってみないと分からないけど、私、珠里ちゃんだったら大丈夫かもしれないわ。

家族愛であっても珠里ちゃんとは年齢差もあるし初心うぶで可愛いから、逆に背徳心とかで盛り上がって、かえって火が着いちゃうかも。うふふ、珠里ちゃんって調教し甲斐がありそうよね」


ーーなどと廉さんは笑っているが、一方の私は動揺しまくりだ。


ーーれ、廉さん。それってガチでマジですか!? つまりそれって私とそういう行為をいたせるという事ですかね? ………私と廉さんが×××ムニャムニャを??(冷や汗! 汗! 汗!)


私の頭の中では廉さんが大人の魅力たっぷりに「優しくするから、全て私に任せて いい子にしててね?」とか言って至近距離で迫ってくる場面を一瞬 妄想してしまい、

直ぐに その破廉恥な頭をブンブンと大きく振って妄想をかき消していると、早智さちさんとあやさんがキャァァーと黄色い悲鳴を上げる。


「やあ~ん! マスターさんってば悪い大人。タマちゃんの顔が真っ赤になっちゃったじゃな~い。こんなに素敵でイケメンなのに、ホントに『オネエ』なんですかぁ? 

実のところ女もイケそうですよね。それなら女子大生はどうですかぁ? 私、マスターさんに遊ばれてみたいですぅ」


「早智、抜け駆けズルい!! 私もマスターさんに調教されたいですぅ。勿論、結婚してくれなんて言いませんから、ホントの大人の世界を教えて欲しいな~」


「おい! お前等、ここに未成年がいる事を忘れてやしないか! それに廉さんも悪ノリし過ぎ。その内、珠にセクハラ店長で訴えられるぞ!」


暁さんが注意するも、すっかり廉さんの大人の魅力に落ちてしまったお姉さま方。 

そして廉さんはというと、「ごめんね~ 珠里ちゃんが可愛いくって、つい、ね」と言って、いつもの廉さんの様子に戻る。


ーーそれにしても、廉さんの発言には驚いた。悪ノリにしてもあまりに心臓に悪過ぎる。しかも一瞬 妄想したせいで 今だに心臓のドキドキが治まらない。


はあぁ………それでなくても廉さんって、セクシーイケメンだから、大人トークには かなり破壊力があるなあ。

女子大生はついていけても、私にはまだまだ頭がついていかないよ。 それに実はちょっと本気で考えちゃったし………


いやいや、廉さんの冗談を真に受けるわけじゃないけれど、よく考えたら廉さんの『配偶者』は捨てがたい気もするしーー

やっぱり桃華さんも言ってた通り、今からでも唾付けとく? だって自分の将来どうなるか分からないもんね。


「………廉さん。もし本当に将来私に結婚相手がいなかったら、今の冗談じゃなく本気にしてもいい?」


「あら?」


「珠っつ!? お前、何言ってんだ!!」


驚きを隠せない暁さんから再び肩を掴まれ、体を揺すられる。


「だ、だって私、『乙女ゲー』の世界でしか恋愛出来ない女なんだよ? だから今だ現実の男に恋愛感情なんて全然持った事ないし、このままいけば普通の人みたいにまともな結婚なんて絶対に出来ないもん。

それなら私が『乙女ゲー』のイケメンキャラに本気で惚れてるオタクでも全く構わない、女を求めてこない廉さんが一番私に合っているのかなって。

それに私も廉さんと一緒にいてすごく楽しいし、大人だから頼りになるし、そんな友達関係の夫婦の形があってもいいかな~って。

それに桃華さんがさっき言ってたでしょ? そういうのって後回しにしたら誰かに取られちゃうってーーだから今の内に予約しておこうかと思って」


すると暁さんが私から向きをかえて振り返る。


「桃華!!見ろ! お前が余計な事を言うから珠が影響を受けちゃったじゃないか!」


「ええ~っと、だけど私は自分の弟に言っただけだよ?」


「珠は周りの言葉に影響を受けやすいタイプなんだよ! そして廉さんもコレどうするんだよ。珠が本気にしてしまったじゃないか! 廉さんだって珠の性格は分かってたはずだろ?」


すると廉さんがこちらに来て私の両手をそっと握るとフッと笑う。


「あら、周りが何を言おうと本人の気持ちが一番大事なのよ? だから珠里ちゃん、その予約は確かに受け取ったわ。将来、珠里ちゃんが私の所に来る意思が固まったら、いつでも言って頂戴ね? 私の方はバツイチで申し訳ないけれど、珠里ちゃんを幸せにする自信はあるから。二人で一緒に幸せになりましょう?」


そう言って廉さんは私の手の甲に軽いキスを落とした。


「ああ~っ! 女子高生にも先越された!!」


すかさず早智さんと綾乃さんの落胆する声が上がる。


ボッンン!! プッシュウゥゥゥーーー


そして私の中の思考容量は耐えられなくなり爆発したのだと思う。

まるで風船の中の空気が抜けていくように、その場に足元がヘナヘナとヘタリこみそうになるのを、暁さんがとっに手を伸ばして私の体を支えてくれる。


「珠っ!! 大丈夫か!?」


「ううっ、暁さぁ~ん。今、頭の中が派手に爆発したみたい………私、生きてる? 脳ミソ飛び出てない?」


そんな私の頭を暁さんが撫でる。


「大丈夫だ。ちゃんと生きてる。 それにほら、脳ミソだって飛び出てないからな。お前の頭を撫でてる俺の手が分かるだろ?」


「………やっぱり私、まだまだ廉さんの相手になるにはスキルが足りないみたい。この程度でヘタってたらさ、子供作るのなんて絶対に無理じゃない? きっと心臓発作起こして死んじゃうよ」


「ああ、そうだな。お前にそういう事自体、まだまだ早過ぎる。それに結婚がどうとか 今から気にしてどうするんだ? 人生これから長いんだぞ? しかも俺だってまだ結婚してねーのに、俺より若いお前が気にする事自体、生意気だ! 

しかもなにも廉さんだけに限定する事ねーだろ? もし この先、珠がずっと独身でいたとしても、俺が兄貴分として面倒見てやるから安心しとけ!」


それを聞いていた廉さんが腕を組んで暁さんをにらむ。


「ちょっと~暁。私の可愛い婚約者を横取りするつもり?」


「まだ婚約者じゃねーよ。それに珠は周りの言動に影響されて世迷言を口にしただけだ。色々と世の中を分かっていないんだよ。

そもそも廉さんにとって珠は娘みたいなもんなんだろ? それなのに結婚とか道徳的にいってもあり得ねーだろ」


「それは血が繋がっていれば、の話でしょ? 確かに珠里ちゃんは私の可愛い娘だけれど、この先、変な男に捕まってしまったら大変じゃない。 

だから珠里ちゃんが本当に好きになった相手が出来れば、それはそれで応援するし、もし駄目だったら最終的に私が珠里ちゃんの面倒を見ようと思っていたのだけど、

そこまで反対するのなら暁、あなたが珠里ちゃんと結婚すればいいのよ。私はそれでも全然構わないわよ?」


「え?」


「はあ?」





【8ー続】


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