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4章 社会人編

<11>嵐の前の静けさ

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エディと合流した俺たちは、例の養護院について話し合いを始めた。
「結局、金欲しさに劣悪な環境の養護院を作って、運営費を自分たちの懐に入れてたってわけか。細胞レベルでゴミだな」
ウォルターが忌々しそうに呟く。

「院長は子爵の命令でやったことだって言ってたけど。自分もきっちり取り分をもらっていたこともわかったし、何より彼の家は子爵家に代々仕えている家柄だった」
エディが書類を捲りながら説明してくれる。

「子どもたちはとりあえずうちの養護院に預かってるけど……ジェラルド様、この後はどうしましょうか」
エディの言葉にジェラルドは少し考える様子を見せた後、口を開いた。

「残念ながら、今の国の制度では子爵は厳重注意と運営費をすべて返却するぐらいの罰しか法的には与えられない。さすがに子爵は懲りただろうが、似たようなことを考える輩が現れないとは言えないな」

「法律なんてそんな簡単に変えられるもんじゃねえよな」
ウォルターの言葉にジェラルドが頷く。
「そうだな。だが法律は難しいが、現状の養護院の制度の改正はもっと簡単にできるはずだ」

俺たちは皆、目を見合わせる。
「よし、すぐに取り掛かろう」
ジェラルドの言葉に全員が大きく頷く。

そうして俺たちは夜遅くまでかかって、制度改正の草案をまとめた。脳をフル回転させたせいか終わる頃には皆、フラフラだった。

「今日はもう遅いし、兄さんは泊っていけば?」
「ああ、そうさせてもらうよ」

「じゃあ俺も泊まる」
すかさずウォルターが会話に入り込んでくる。
「じゃあ俺も」
「はぁ? 王子サマはとっとと城に帰んな」
「ここは俺の婚約者の領地なんだから自宅も同然だ」

このままだとどこまでもヒートアップしそうなので、慌てて間に入った。
「わかった、わかったから! 二人とも泊って!! いいよな、エディ」

「うん、わかった。僕、準備してくるよ」
エディは扉の前で一度立ち止まり、振り返る。

「ウォルター、泊まるなら今日はもうこれ以上兄さんに迷惑かけないでよ……ジェラルド様もですよ?」

なんだろう、笑顔なのに脅されているように感じるのは気のせいだろうか。さすがの二人も声を揃えてはい、と返事をしていた。

翌日は時間短縮のため、それぞれ転移魔法で自宅に戻る。公休日は昨日だけで、今日からはまた仕事が始まる。

だが、養護院の件よりも、もっと深刻な事件と出くわすことになるなんてこの時の俺は知る由もなかった。
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