BLゲームのメンヘラオメガ令息に転生したら腹黒ドS王子に激重感情を向けられています

3章 王立学院編ー後編―

51＜目撃＞

二人に秘密を打ち明けてから数日たった放課後、俺はジェラルドが明らかに人目を避けてどこかに向っている姿を見かけた。

（もしかして……）
気づかれない程度の魔力で足音や気配を消して後を追う。ジェラルドが辿り着いたのは女子寮に近いところにある、今は使われていない部室棟だった。

（やっぱり……）
息を詰めて見守っている中、ジェラルドが扉をノックする。内側からドアが開いて、ほんの一瞬だか薄紫の長い髪が見える。

（間違いない、あの子だ）
胸が早鐘を打つように騒ぎ出す。約束を思い出して魔伝書鳩をエディとウォルターに飛ばすと、二人はすぐに姿を現した。

「あそこにジェラルド様たちがいらっしゃるんだね」
「ここからじゃ会話を聞くのも難しいじゃねーか。どうする」
「……そうだな。獣化魔法はどうだ？　バレにくいし３人とも使えるよな」
ヒソヒソと作戦を交わした結果、俺たちは３匹のリスに姿を変えて部室の窓辺に忍び寄った。

部屋の中にはたくさんの本が積まれている。女の子は気だるげにソファに座り、その正面に立ったジェラルドが愛の告白としか思えない言葉を口にしていた。

「愛しいと思うのはおまえだけだ。俺の側に一生いてくれ」
「５点。おまえって言うが嫌だし、表現もありきたりね」
「…………せ、世界で一番おま、じゃなくてきみのことを愛してる。絶対に離さない。逃げても地の果てまで追っていく」
「マイナス100！！　さっきよりダメになってどうすんのよ。執着がすごいし脅しみたいで怖い。やり直し」
「……き、厳しすぎるんじゃないのか？　俺は悪くないと思うが」
「アンタの認知は昔っから歪んでんのよ。そんなんじゃ付き合えないわよ？　付き合いたいんでしょ？　自分だけのものにしたいんでしょ？　ほらほら、早く頑張ってみなさい」
「クソ……っ！　ま、待て！　いま考えるから！！」

必死に頭をかきむしるジェラルドを見て、彼女は楽しそうに笑っている。俺はなぜかそれ以上見ていたくなくて、窓の縁から飛び降りた。

後を追うようにして二人もついてくる。十分に距離をとった場所まで移動して、元の姿に戻る。

「な？　言った通りだっただろ。まさか告白の場面に遭遇するとは思わなかったけど」
エディもウォルターも黙ったままで厳しい表情をしている。

「兄さん、とりあえず寮に戻ろうか。二人とも僕の部屋においでよ」
「ああ」
「そうだ、ちょうど兄さんに飲んでほしいブレンドティーがあるんだ。さ、行こう！」
優しい声と笑顔の弟に背中を押されて、歩き出す。

その少し後ろを、眉間に深い皺を寄せたウォルターが無言でついてきた。