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3章 王立学院編ー後編―
4<サバイバル・ラブ!?> ※ジェラルド視点
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「すまない。ちょっと驚いてしまって。相変わらず、いい食べっぷりだなあと思っただけだよ」
「小説を書くってすごい脳を使うのよ。肉体労働してるわけじゃないけど体力消費がすごいわけ。だから食べないと持たないのよ。特に甘いもの。それより早く話しなさいよ。締切が近いんだから」
オリヴィアは早口でまくし立てると、最後の一言とともに食べかけのお菓子で俺の方を指した。
「相談してくるってことは上手くいってないんでしょ? どこの誰よ。我が国で一番美しいって称えられてる王子サマを足蹴にしてんのは」
俺は大きく息を吸ってゆっくり言葉を吐き出した。
「俺が恋をしている相手は、ユージンだ」
「……は?」
オリヴィアの目と口が、これでもかとばかりに見開かれる。手に持っていたレープクーヘンがテーブルの上に落ちた。
「ユージンってあの、ユージン・ジェニングス!?」
「そんなに驚くことかな? 俺の婚約者だよ?」
「驚くわよ。婚約が決まったとき、すごいどんよりしてたじゃないの」
「それは…あの頃はまだユージンのことをよく知らなかったから」
「ふーん……ユージンってアンタが他の女と話してるだけで泣きわめいたり嫌がらせしたりするんで有名だったわよね」
「ああ……まあ」
確かにそんなこともあった。今となっては遠い昔のように感じるが。そういえばユージンの嫉妬の矛先が向くと困るので、オリヴィアたち従姉妹ともめったに会わなくなったのだ。
(今のユージンに嫉妬なんてされたら嬉しくてたまらないだろうな。やきもちをやいた顔、見てみたい……)
頭の中に頬を可愛く膨らませた妄想のユージンが浮かび上がる。女生徒や他のオメガと話をしないでと言われたら、一生話さない自信がある。
「そんな面倒くさい奴のどこかいいわけ? 顔は確かにすごく可愛いけど」
「……今はそんなことはないよ。変わったんだ。俺にはあまり興味がなさそうで、自分の領地をより良くすることとか新しい事業のことばかり考えているんだ」
「へえ。いいじゃない。それのどこが不満なわけ?」
「不満ではないよ。ただ、俺のことは前みたいに好きじゃないらしいんだ。このままだと、婚約破棄することになると思う。最初はそれでも良かったんだけど」
「好きにになっちゃって……アンタは婚約破棄したくないと」
「ああ」
「なるほどね。すごくいい小説のネタになりそう」
オリヴィアはものすごい勢いでペンを走らせ始めた。今日は恥をしのんで相談に来たわけで、こいつのネタを持ってきたわけじゃない。
俺はわざとらしく咳払いをして微笑んだ。
「相談、乗ってくれるんだろう?」
オリヴィアは虫でも見るかのような表情で一瞥すると、再びノートへ視線を落とした。
「もちろんよ。その代わりどうなったかも教えなさいよ」
オリヴィアは立ち上がると本がずらりと並んだ棚から黒地に蛍光ピンク色の文字が入った毒々しい本を手に取って戻って来た。
「とりあえずこの本読んで、この通りにやってみなさい」
「なんだい、この本は」
表紙には『サバイバル・ラブ』と書いてある。
「わたしが書いた恋愛マニュアル本よ。すごく評判がいいんだから。落としたい相手がいるんなら、忠実にこの通りにすれば絶対に上手くいくわ」
そうして俺はどぎつい配色の本をジャケットの内側に隠すように持って部室を出たのだった。
「小説を書くってすごい脳を使うのよ。肉体労働してるわけじゃないけど体力消費がすごいわけ。だから食べないと持たないのよ。特に甘いもの。それより早く話しなさいよ。締切が近いんだから」
オリヴィアは早口でまくし立てると、最後の一言とともに食べかけのお菓子で俺の方を指した。
「相談してくるってことは上手くいってないんでしょ? どこの誰よ。我が国で一番美しいって称えられてる王子サマを足蹴にしてんのは」
俺は大きく息を吸ってゆっくり言葉を吐き出した。
「俺が恋をしている相手は、ユージンだ」
「……は?」
オリヴィアの目と口が、これでもかとばかりに見開かれる。手に持っていたレープクーヘンがテーブルの上に落ちた。
「ユージンってあの、ユージン・ジェニングス!?」
「そんなに驚くことかな? 俺の婚約者だよ?」
「驚くわよ。婚約が決まったとき、すごいどんよりしてたじゃないの」
「それは…あの頃はまだユージンのことをよく知らなかったから」
「ふーん……ユージンってアンタが他の女と話してるだけで泣きわめいたり嫌がらせしたりするんで有名だったわよね」
「ああ……まあ」
確かにそんなこともあった。今となっては遠い昔のように感じるが。そういえばユージンの嫉妬の矛先が向くと困るので、オリヴィアたち従姉妹ともめったに会わなくなったのだ。
(今のユージンに嫉妬なんてされたら嬉しくてたまらないだろうな。やきもちをやいた顔、見てみたい……)
頭の中に頬を可愛く膨らませた妄想のユージンが浮かび上がる。女生徒や他のオメガと話をしないでと言われたら、一生話さない自信がある。
「そんな面倒くさい奴のどこかいいわけ? 顔は確かにすごく可愛いけど」
「……今はそんなことはないよ。変わったんだ。俺にはあまり興味がなさそうで、自分の領地をより良くすることとか新しい事業のことばかり考えているんだ」
「へえ。いいじゃない。それのどこが不満なわけ?」
「不満ではないよ。ただ、俺のことは前みたいに好きじゃないらしいんだ。このままだと、婚約破棄することになると思う。最初はそれでも良かったんだけど」
「好きにになっちゃって……アンタは婚約破棄したくないと」
「ああ」
「なるほどね。すごくいい小説のネタになりそう」
オリヴィアはものすごい勢いでペンを走らせ始めた。今日は恥をしのんで相談に来たわけで、こいつのネタを持ってきたわけじゃない。
俺はわざとらしく咳払いをして微笑んだ。
「相談、乗ってくれるんだろう?」
オリヴィアは虫でも見るかのような表情で一瞥すると、再びノートへ視線を落とした。
「もちろんよ。その代わりどうなったかも教えなさいよ」
オリヴィアは立ち上がると本がずらりと並んだ棚から黒地に蛍光ピンク色の文字が入った毒々しい本を手に取って戻って来た。
「とりあえずこの本読んで、この通りにやってみなさい」
「なんだい、この本は」
表紙には『サバイバル・ラブ』と書いてある。
「わたしが書いた恋愛マニュアル本よ。すごく評判がいいんだから。落としたい相手がいるんなら、忠実にこの通りにすれば絶対に上手くいくわ」
そうして俺はどぎつい配色の本をジャケットの内側に隠すように持って部室を出たのだった。
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