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2章 王立学院編ー前編―

46<打ち明けられた秘密>

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お茶を入れ、それぞれ好きなものから食べ始める。

「兄さんのウィークエンドシトロン、久しぶりで美味しい! レモンの風味が爽やかだからいくらでも食べられるんだよねえ」

「なんだその食通コメント」
饒舌に感想を述べるエディにウォルターが小バカにしたような表情でつっこみを入れる。

「ウォルターうるさい。そんなこと言ってさっきからラザニアめっちゃ食べてるじゃん」
「うるせえな、腹減ってんだよ俺は」

軽口を言いながら、二人はどんどん料理を平らげていく。その引き締まった身体のどこにそんなに料理が入るんだろうか。

(若いっていいなあ)
頬杖をついて2人を見守っていると、ウォルターが何かを思い出したような顔をする。

「こういう時、アイツが来ねえの珍しいな。いつもならぜってえ割り込んできやがるのに」
「アイツって、ジェラルド様のこと? そういえばそうだよね。いつもなら兄さまにずっとべったり張り付いてるもんね」

四つの瞳が俺に向けられる。口を開いたのはウォルターのほうだった。
「アイツと何かあったのか?」

俺の心中を見透かすような鋭い瞳に思わず怯む。ウォルターは少し慌てたように付け足した。

「別に責めてるんじゃねえよ。最近、学校以外で一緒にいるとこ見かけねーなって思ってたし。それに、もしなんか揉めてたとしても9割方アイツが悪いに決まってるからな」

「そうだよ、兄さんみたいな優しくて人の気持ちがわかるひとが悪いなんてことは絶対にないよ!」

「ありがとうな、二人とも」
俺は無理矢理笑顔を作った。

(そんなことない。俺はそんなに優しい人間なんかじゃないんだ)
自分のことを愛せるのか、とたずねたジェラルドの苦しそうな表情が頭から離れない。気づいたときには、言葉が口からこぼれていた。

「……なあ、人を好きになるってどういうことなんだろうな」

「はあ?」
「ちょっと兄さんどうしたの本当に!」

料理やお菓子に手を伸ばす弟たちの手が止まる。2人は信じられないものでも見るような目で俺を見る。

「なんだよ、そんな驚くことか?」
ウォルターは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。
「驚くだろそりゃ。だってユージンはジェラルドのことが好きだろ…婚約したぐらいに」
「そうだよ…何がそんなにいいのか疑問しかなかったけど、兄さんはジェラルド様と婚約できなきゃ死ぬって大騒ぎしてたじゃない」
エディも何を今さらと呆れている。

(そうだ…偽装婚約のことはこのエディとウォルターにも知らせていないんだった)

この時、俺は心が弱っていたのかもしれない。幼い頃からずっと一緒のこの2人になら秘密を話しても良いと思えた。

「2人には言ってなかったけどさ。実はあれ、偽装婚約なんだ」

「……え?」
「は」
2人は目と口を大きく開けたままフリーズしてしまった。
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