BLゲームのメンヘラオメガ令息に転生したら腹黒ドS王子に激重感情を向けられています

2章 王立学院編ー前編―

42＜ジェラルドの想い＞

「２度も襲われてもたいして抵抗しなかったのは、王子の命令に逆らったらどうなるかわからないとか…理由はそんなとこだろう」

どうして必死に抵抗しなかったんだろう。そうしたら防げていたかもしれないのに。あれからずっと考えているが自分でもまだ理由はよくわからないままだ。

黙っている事を肯定と捉えたのか、ジェラルドは自嘲めいた笑みを浮かべる。
「婚約破棄したいと思っている男に身体を触られるのは、さぞかし不愉快だったろうな」

「そんな、ことは……ないです…たぶん」
触れられたときに嫌悪感はなかった。むしろ気持ちよくて快楽に溺れた。

だがジェラルドが低い声で唸る。
「……もうやめろ…やめてくれ…嘘をつくのは」
「嘘じゃありません！　ほんとに――」

「だったらおまえは俺と同じ気持ちなのか？」
怯んだ俺にジェラルドはさらに言葉を続ける。
「俺と結婚してもいいと思っているのか？　俺のことを……愛することができるのか？」

「……っ」
どう答えるべきなんだろう。どうしよう、正解がわからない。それどころか自分の本心さえ見えない。何か言わなければと思うのに、何も言葉が出てこなかった。

ジェラルドはそんな俺をじっと見ていた。だがいつまでたっても何も言わない俺にしびれを切らしたのか、ふっと目を逸らして小さく呟いた。
「わかった。もういい」

俺の肩に軽く触れる。次の瞬間、俺たちは生徒会室の近くの廊下に立っていた。
肩に触れていた手がさっと離れていく。

「おまえは生徒会室に戻れ。俺は今日はもう部屋に戻る。あいつらには体調不良だとでも言っておいてくれ」
「あ……」

「悪かったな、気色悪い真似をして。安心しろ、もう二度としない」
ジェラルドは返事を待たずに踵を返して立ち去る。

彼の問いかけに答えを持たない俺は、追いかけることも声をかけることもできず、その場に立ちつくした。