49 / 152
2章 王立学院編ー前編―
38<ドS王子の混乱>※ジェラルド視点
しおりを挟む
目を覚ますと視界に広がっているのは見慣れた自室の天井だった。
なんだかやけにスッキリしている気がするのは、あの夢の続きを見たせいだろうか。記憶はすでにおぼろげな部分も多いが、触れた肌の温度や感触が驚くほどリアルに残っている。
そのせいか、明らかに睡眠中に欲を吐き出した形跡があった。すでに乾いてしまい気持ちが悪い。
シャワーを浴びようと腹筋を使って勢いよく起き上がったその瞬間、枕に見覚えのないものが落ちていることに気が付いた。
枕元に落ちているそれを注意深くつまみ上げる。
「金色の、毛髪……?」
短めの金色の髪は明らかに俺のものではない。まさか眠っている間に侵入者がやって来たというのか。
だがその線は薄い。王子であるが故に幼い頃から命を狙われたり誘拐されそうになる事態は数えきれないほど経験している。
その俺が侵入者の気配に気づかず眠り続けるはずがない。それにこの複雑な結界が張り巡らされた部屋に転移できる者がいるとも考えにくい。
「いったい誰の――」
ある可能性に思い当たった瞬間、動揺で息が止まりそうになった。
まさか。そんな事あるはずがない。
もしそうなのだとしたら、俺が見た夢は夢じゃなかったということになる。だが目が覚める前、俺がユージンの部屋にいたのは確かだ。
髪の毛が付着していた枕から、微かに甘い香りが漂っている。ゆっくりと顔を近づけ確かめた。
間違いなく俺がよく知っている香り――ユージンが好んでつけている香水の匂いだった。ユージンが自分の領地で試験的に開発しているというその香水は、ベルガモットの甘すぎず爽やかでとても印象に残る。
校内でも話題になるほどだったし、類似した香りもかいだことがない。
だからこそ間違いようがなかった。
「ここに、ユージンがいたのか…!?」
なぜ。どうして。疑問符が頭の中でぐるぐると回りだす。そうして一人、頭を悩ませていたのたが。
突然、俺はとんでもない事に気がついた。まさか夢だと信じて疑わなかった、最初の夢も夢じゃなかったとしたら――。
欲に任せた淫らな行為はもちろんのこと、自分の気持ちをユージンに告げてしまった気がする。
「これは……だいぶマズいな」
独り言は情けなく震えてしまう。このままではユージンに嫌われてしまうのではないか。というか嫌われるに決まっている。いや、もしかしてもう嫌われてしまった後かもしれない。
加速する悲観的な思考と妄想を落ち着かせるために、俺は何度も大きく息を吸って気持ちを落ち着けようと試みる。
もし俺がユージンの立場だったとしたらどう感じるだろうか。1年後の俺の卒業時に婚約破棄すると言い放ったくせに、本当は自分のことが好きでおぞましいほどの欲望を向けられていると知ったら――。
俺なら間違いなく距離を置いて速やかに婚約破棄を申し出る。しかも学院にはユージンを狙っている奴らが何人もいる。
ウォルターとエディはもちろん、ルーイやジュリアンもユージンに惹かれていることに俺は気づいていた。
「どうしたらいいんだ……」
俺はシャワーを浴びることも忘れ、ベッドの上で蹲った。
なんだかやけにスッキリしている気がするのは、あの夢の続きを見たせいだろうか。記憶はすでにおぼろげな部分も多いが、触れた肌の温度や感触が驚くほどリアルに残っている。
そのせいか、明らかに睡眠中に欲を吐き出した形跡があった。すでに乾いてしまい気持ちが悪い。
シャワーを浴びようと腹筋を使って勢いよく起き上がったその瞬間、枕に見覚えのないものが落ちていることに気が付いた。
枕元に落ちているそれを注意深くつまみ上げる。
「金色の、毛髪……?」
短めの金色の髪は明らかに俺のものではない。まさか眠っている間に侵入者がやって来たというのか。
だがその線は薄い。王子であるが故に幼い頃から命を狙われたり誘拐されそうになる事態は数えきれないほど経験している。
その俺が侵入者の気配に気づかず眠り続けるはずがない。それにこの複雑な結界が張り巡らされた部屋に転移できる者がいるとも考えにくい。
「いったい誰の――」
ある可能性に思い当たった瞬間、動揺で息が止まりそうになった。
まさか。そんな事あるはずがない。
もしそうなのだとしたら、俺が見た夢は夢じゃなかったということになる。だが目が覚める前、俺がユージンの部屋にいたのは確かだ。
髪の毛が付着していた枕から、微かに甘い香りが漂っている。ゆっくりと顔を近づけ確かめた。
間違いなく俺がよく知っている香り――ユージンが好んでつけている香水の匂いだった。ユージンが自分の領地で試験的に開発しているというその香水は、ベルガモットの甘すぎず爽やかでとても印象に残る。
校内でも話題になるほどだったし、類似した香りもかいだことがない。
だからこそ間違いようがなかった。
「ここに、ユージンがいたのか…!?」
なぜ。どうして。疑問符が頭の中でぐるぐると回りだす。そうして一人、頭を悩ませていたのたが。
突然、俺はとんでもない事に気がついた。まさか夢だと信じて疑わなかった、最初の夢も夢じゃなかったとしたら――。
欲に任せた淫らな行為はもちろんのこと、自分の気持ちをユージンに告げてしまった気がする。
「これは……だいぶマズいな」
独り言は情けなく震えてしまう。このままではユージンに嫌われてしまうのではないか。というか嫌われるに決まっている。いや、もしかしてもう嫌われてしまった後かもしれない。
加速する悲観的な思考と妄想を落ち着かせるために、俺は何度も大きく息を吸って気持ちを落ち着けようと試みる。
もし俺がユージンの立場だったとしたらどう感じるだろうか。1年後の俺の卒業時に婚約破棄すると言い放ったくせに、本当は自分のことが好きでおぞましいほどの欲望を向けられていると知ったら――。
俺なら間違いなく距離を置いて速やかに婚約破棄を申し出る。しかも学院にはユージンを狙っている奴らが何人もいる。
ウォルターとエディはもちろん、ルーイやジュリアンもユージンに惹かれていることに俺は気づいていた。
「どうしたらいいんだ……」
俺はシャワーを浴びることも忘れ、ベッドの上で蹲った。
458
お気に入りに追加
4,902
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと
糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。
前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!?
「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」
激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。
注※微エロ、エロエロ
・初めはそんなエロくないです。
・初心者注意
・ちょいちょい細かな訂正入ります。
転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
俺の死亡フラグは完全に回避された!
・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ラブコメが描きたかったので書きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる