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2章 王立学院編ー前編―
36<秘密の植物園>
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さすがのジュリアンも動揺したらしく目を見開いてフリーズしている。
「ええとその……前に夜中、たまたま見たことがあって……すみません」
見たのは俺じゃなくてオメガだったウォルターだけど。ジュリアンと主人公の関係が進む一つのきっかけが、バラ園のジュリアンを見かけるという出来事なのだ。
今のところ主人公は不在だし、俺がバラしたところでどうかなるはずもない。
やがて大きく息を吐いたジュリアンは窓辺から戻ってくると俺のすぐ傍の椅子に浅く腰かけた。
「……まさかアンタに見られてたとは思わなかった。いつもは見えないようにしてるんだけどな」
「すみません…でも俺、誰にも言ってな――」
言い終わる前に強く手を引かれて自動的に椅子から立ち上がる。
「来て」
腕を引かれたまま、部屋の奥へと進んでいく。最奥の壁の前で立ち止まったジュリアンが何やら呪文を呟くと、白木のドアが現れた。
ジュリアンは俺の腕をつかんだまま、ドアの中に足を踏み入れる。
「わあ……すごい……!」
ドアの向こうには広大な植物園が広がっていた。スチルで見た事はあるのだが、リアルで見ると迫力が全然違う。
ガラス製のドーム型の植物園の中には、さまざまな植物が生い茂っている。そのほとんどが見た事のないもので、俺は目を奪われた。
ふわふわとしたウサギのしっぽのような白く丸い花が咲いている木や、発光しているスズランのような植物など、見ているだけでもワクワクしてくる。
「あ……ハッピーベリーだ!」
すぐ近くに、菜園で苦心して育てているハッピーベリーがそよ風に揺られていた。俺のとは比べ物にならないぐらい大きく育ち、たくさんの実を付けている。
いつの間にか腕は離されていて、思わずハッピーベリーの側によって間近で観察してしまう。
「俺のベリーちゃんもここまで育つかな」
独り言だったのに、すぐ近くから返事が聞こえた。
「大丈夫でしょ。これから俺が教えてあげるんだから」
そうだった。ジュリアンに植物の育て方を教えてもらえることになったんだった。
「はい! ありがとうございます」
満面の笑みで顔を上げると、またすぐに目を逸らされてしまった。そんなに俺の笑顔、ブサイクなんだろうか。後で鏡で確認するか…。
「別に礼を言われる必要なんてない。ハーブティー目当てなだけだし、バラ園のことがバレてるなら植物のことはここで教えればいいやって思ったからで深い意味とか全然ないから」
ジュリアンはそっぽを向いたまま早口でまくし立てる。何か地雷を踏んでしまったんだろうか。怒っているのか様子を窺っいると、なんだか少し顔が赤いように見える。
(ジェラルドも熱っぽかったし、風邪が流行ってんのかな)
「先輩、なんだか顔が赤いですけど大丈夫ですか?」
ジュリアンの肩が大げさなくらい飛び跳ねた。
「べっ……別に、なんでもない。気にしないで」
なぜか少し上ずった声で言うと次の瞬間、猛烈な勢いでドアの方へ戻っていく。
「今日はもう終わり! アンタも早く来て!」
できるならもう少し植物園を探検したかった。後ろ髪を引かれる思いで俺は植物園を後にして、無事に自室へと戻してもらったのだった。
「ええとその……前に夜中、たまたま見たことがあって……すみません」
見たのは俺じゃなくてオメガだったウォルターだけど。ジュリアンと主人公の関係が進む一つのきっかけが、バラ園のジュリアンを見かけるという出来事なのだ。
今のところ主人公は不在だし、俺がバラしたところでどうかなるはずもない。
やがて大きく息を吐いたジュリアンは窓辺から戻ってくると俺のすぐ傍の椅子に浅く腰かけた。
「……まさかアンタに見られてたとは思わなかった。いつもは見えないようにしてるんだけどな」
「すみません…でも俺、誰にも言ってな――」
言い終わる前に強く手を引かれて自動的に椅子から立ち上がる。
「来て」
腕を引かれたまま、部屋の奥へと進んでいく。最奥の壁の前で立ち止まったジュリアンが何やら呪文を呟くと、白木のドアが現れた。
ジュリアンは俺の腕をつかんだまま、ドアの中に足を踏み入れる。
「わあ……すごい……!」
ドアの向こうには広大な植物園が広がっていた。スチルで見た事はあるのだが、リアルで見ると迫力が全然違う。
ガラス製のドーム型の植物園の中には、さまざまな植物が生い茂っている。そのほとんどが見た事のないもので、俺は目を奪われた。
ふわふわとしたウサギのしっぽのような白く丸い花が咲いている木や、発光しているスズランのような植物など、見ているだけでもワクワクしてくる。
「あ……ハッピーベリーだ!」
すぐ近くに、菜園で苦心して育てているハッピーベリーがそよ風に揺られていた。俺のとは比べ物にならないぐらい大きく育ち、たくさんの実を付けている。
いつの間にか腕は離されていて、思わずハッピーベリーの側によって間近で観察してしまう。
「俺のベリーちゃんもここまで育つかな」
独り言だったのに、すぐ近くから返事が聞こえた。
「大丈夫でしょ。これから俺が教えてあげるんだから」
そうだった。ジュリアンに植物の育て方を教えてもらえることになったんだった。
「はい! ありがとうございます」
満面の笑みで顔を上げると、またすぐに目を逸らされてしまった。そんなに俺の笑顔、ブサイクなんだろうか。後で鏡で確認するか…。
「別に礼を言われる必要なんてない。ハーブティー目当てなだけだし、バラ園のことがバレてるなら植物のことはここで教えればいいやって思ったからで深い意味とか全然ないから」
ジュリアンはそっぽを向いたまま早口でまくし立てる。何か地雷を踏んでしまったんだろうか。怒っているのか様子を窺っいると、なんだか少し顔が赤いように見える。
(ジェラルドも熱っぽかったし、風邪が流行ってんのかな)
「先輩、なんだか顔が赤いですけど大丈夫ですか?」
ジュリアンの肩が大げさなくらい飛び跳ねた。
「べっ……別に、なんでもない。気にしないで」
なぜか少し上ずった声で言うと次の瞬間、猛烈な勢いでドアの方へ戻っていく。
「今日はもう終わり! アンタも早く来て!」
できるならもう少し植物園を探検したかった。後ろ髪を引かれる思いで俺は植物園を後にして、無事に自室へと戻してもらったのだった。
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