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第一章 無能令息と最強王子

<4>最強の王子アラン・ベリンガム3

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「旦那様、奥様。参りました」
部屋の扉を4回ノックする。もう俺にこの人たちを父や母と呼ぶ権利はない。返事の代わりに扉が内側に開かれた。
中へ足を踏み入れると、豪華すぎてもはや下品なソファにやはりゴテゴテに着飾った両親が座っている。
(相変わらずド派手だな……)

両親は俺の姿に目を留めると、冷たい笑いを浮かべた。
「プリシラを助けてくれたそうだな。礼を言う。役立たずのお前にしては素晴らしい働きだぞ」
「ありがとうございます」

今まではいちいち傷ついていた父の言葉も、今の俺にはまったく響かない。しっかりと顔を上げて白い歯を見せた。いつもならびくびくと怯えて俯くだけの俺の態度に、父は目を丸くした。すかさず隣に座る母が意地悪い視線を向けてくる。

「目覚めてくれてよかったわ。ヴァンダービルト家からは1日でも早く来てほしいと言われているのですもの。ケガを理由にこの屋敷に居座られたらどうしようかと思っていたのよ」
「まさか。そのようなこと考えもしておりませんでした。旦那様、奥様。ご心配なく。3日後にはこの屋敷を予定通り出ていきますので」

おまえの嫌味なんかには負けないという意思を込めて、母の目を見つめ返して微笑む。母はうっと息を呑み、顔を引きつらせながら鼻を鳴らした。

「生まれてこのかた無能だったおまえが、我がラムズデール家だけでなく、国のためにも役に立つことができるんだものね。喜びなさい」

(マジでクソババアだな……いつか目に物見せてやる)
繰り返される嫌味攻撃に、少しイラつきを感じる。できるなら俺の魔力で屋敷中をめちゃくちゃにしてやりたいところだが、実は測定不能なほど強大な力を持つと知られたら何をされるかわからない。

心の中で中指を立てても、顔は笑顔を崩さない。その後も延々と両親からの嫌味は続き、部屋を出られたのは1時間以上経過してからだった。

使用人の棟まで辿り着くと、リアムが心配そうに声を掛けてくる。
「エリス様、大丈夫ですか? 今日の旦那様と奥様、いつも以上にひどいことをおっしゃられておいででしたね」
「心配ない。全然気にしてねえから。それより帝国に行くまでの3日は、さすがに何もしなくていいって言ったよな? ケガしてラッキーだったぜ」

俺はリアムの肩をポンと叩く。
「おまえもおつかれ様だったな。俺の乳兄弟で従者ってただけで毎日あんな罵詈雑言に付き合わされて。悪かった」
リアムは目も口も丸くして、叩かれた肩と俺の顔に視線を往復させた後、大声で叫んだ。

「ほ、本当に、どうなさったのですか!? エリス様!!」
「おまえ声デカすぎ。いいから入れ」

騒ぐリアムの首根っこを掴むと部屋の中へ引き入れる。粗末な椅子に座らせると、腕組みをして彼の前に立った。
「いいか。これから3日間、俺にはどうしてもやっておかなきゃいけないことがある。そこでおまえに頼みがある」

リアムはごくりと息を呑んで頷いた。
「かしこまりました、エリス様……!」
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