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金成に思いきって電話して良かった。声は予想していたよりも元気でしっかりとしていて、少しホッとする。
なにより、俺自身のテンションが声を聞いただけで爆上がりしている。
恋って偉大だ。
撮影中も「今日の飛鳥くん調子いいね」と監督やスタッフに言ってもらえた。誰かがいるから頑張れるって、それだけで本当に幸せなことだよな。問題は山積みだけど、前向きに生きよう。そんな風にも思える。
夜まで続く撮影の空き時間に金成にメッセージを送る。調子に乗ってスタジオの中にある、関係者専用の食堂でラーメンを食べている自撮りも送ってみた。
『おれいまやっと夜メシ。
スタジオでラーメン食う』
『お疲れ。まだ帰れないの?
ラーメンうまそう。飛鳥は可愛い』
『年末帰ってきたら一緒にラーメン
食いに行くか』
『うん。それ楽しみにして俺も頑張る』
飛鳥としては可愛いなんて今まで死ぬほど言われてきたけど、嬉しいと思ったことは一度もなかった。それなのに、金成に言われると嬉しくて仕方ない。顔が勝手にニヤけるのが自分でもわかる。
「なーに一人でニヤニヤしてんの」
急に声をかけられ顔を上げた。
「和泉?! なんでここにいんの?」
「俺、2スタでドラマの撮影してんだよ」
「まじ? 知らんかったわ」
「ABSの開局記念のスペシャルなんだけど、時代ものだから待ち時間長くてさー。でも子ども産まれる前にバチくそ稼がねーと」
嬉しそうに笑う和泉が眩しい。金髪で青い目の和泉を見ていると、今すぐにでも金成に会いたくなる。
「いいなあ……お前の髪色と目の色。俺、好きだわ」
「は? なんだよおまえ今更! きもちわりー」
和泉が笑った。
「今さらすぎんだろ。アルティメットなんてほとんどこの組み合わせじゃん。うちのリーダーとか白石だって染めなきゃ金髪だし」
そうだった。スピカの4人のアルティメットのうち、リーダーの透と和泉、白石は練習生時代は全員が同じ髪の色と目の色をしていた。
デビューする時に、社長の「一目で見分けがつくようにする」という一声で、透と白石は髪の色を変え、カラーコンタクトを着用することになったのだ。
「そっか、たしかにアルファって金髪で青い目の奴多いよな」
俺が頷くと、和泉は怪訝な顔をする。
「おまえ何言ってんの? 生まれつきで金髪と青い目の奴なんてアルティメットだけじゃん」
「……は?」
手にしていた水の入ったグラスを落としそうになる。
「いやいやいや。何言ってんのおまえ。今さらすぎんでしょ。逆に知らなかったん?!」
「……10代の頃から番いたし、他のアルファについて考えたり調べたりしたことなかったから」
「そっか…だとしても飛鳥、知らなさすぎよ?」
和泉と別れた俺はスタジオに戻った。頭の中が衝撃でぼんやりしていたが、なんとか撮影終え、送りの車に乗り込む。
マネージャーが運転する帰りの車の中、俺はスマホでアルファのことを調べ始めた。
なにより、俺自身のテンションが声を聞いただけで爆上がりしている。
恋って偉大だ。
撮影中も「今日の飛鳥くん調子いいね」と監督やスタッフに言ってもらえた。誰かがいるから頑張れるって、それだけで本当に幸せなことだよな。問題は山積みだけど、前向きに生きよう。そんな風にも思える。
夜まで続く撮影の空き時間に金成にメッセージを送る。調子に乗ってスタジオの中にある、関係者専用の食堂でラーメンを食べている自撮りも送ってみた。
『おれいまやっと夜メシ。
スタジオでラーメン食う』
『お疲れ。まだ帰れないの?
ラーメンうまそう。飛鳥は可愛い』
『年末帰ってきたら一緒にラーメン
食いに行くか』
『うん。それ楽しみにして俺も頑張る』
飛鳥としては可愛いなんて今まで死ぬほど言われてきたけど、嬉しいと思ったことは一度もなかった。それなのに、金成に言われると嬉しくて仕方ない。顔が勝手にニヤけるのが自分でもわかる。
「なーに一人でニヤニヤしてんの」
急に声をかけられ顔を上げた。
「和泉?! なんでここにいんの?」
「俺、2スタでドラマの撮影してんだよ」
「まじ? 知らんかったわ」
「ABSの開局記念のスペシャルなんだけど、時代ものだから待ち時間長くてさー。でも子ども産まれる前にバチくそ稼がねーと」
嬉しそうに笑う和泉が眩しい。金髪で青い目の和泉を見ていると、今すぐにでも金成に会いたくなる。
「いいなあ……お前の髪色と目の色。俺、好きだわ」
「は? なんだよおまえ今更! きもちわりー」
和泉が笑った。
「今さらすぎんだろ。アルティメットなんてほとんどこの組み合わせじゃん。うちのリーダーとか白石だって染めなきゃ金髪だし」
そうだった。スピカの4人のアルティメットのうち、リーダーの透と和泉、白石は練習生時代は全員が同じ髪の色と目の色をしていた。
デビューする時に、社長の「一目で見分けがつくようにする」という一声で、透と白石は髪の色を変え、カラーコンタクトを着用することになったのだ。
「そっか、たしかにアルファって金髪で青い目の奴多いよな」
俺が頷くと、和泉は怪訝な顔をする。
「おまえ何言ってんの? 生まれつきで金髪と青い目の奴なんてアルティメットだけじゃん」
「……は?」
手にしていた水の入ったグラスを落としそうになる。
「いやいやいや。何言ってんのおまえ。今さらすぎんでしょ。逆に知らなかったん?!」
「……10代の頃から番いたし、他のアルファについて考えたり調べたりしたことなかったから」
「そっか…だとしても飛鳥、知らなさすぎよ?」
和泉と別れた俺はスタジオに戻った。頭の中が衝撃でぼんやりしていたが、なんとか撮影終え、送りの車に乗り込む。
マネージャーが運転する帰りの車の中、俺はスマホでアルファのことを調べ始めた。
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