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#17

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「数日後でないと結果が出ない検査も行いましたが、おそらく異常は見られないと思います」

「そうですか、良かった……!」
担当医の言葉に、ほっと胸を撫でおろす。

金成とVIP用の待合室でアニメを見ていると、俺だけが医者に呼ばれたのだ。

「じゃあ、定期的な通院とかは必要じゃないんですか?」
「今のところは。本来は15歳になるまでは半年ごとに定期検査があるんですが」

「え! マジですか! 全然知らなかった。弟、受けてないですよね?」
「ええ。病院に来たのも久しぶりでしたからね」

「すんません。これからはちゃんと定期検査、受けさせます!」
ふいに医者の目元が緩んだ。

「ご兄弟と同居しているとは噂に聞いていましたが……しっかりとした方で良かったです」
「え」
先生は、カルテに掲載された金成の写真に目を落とした。

「……彼のお母様が橋本レイカだということを知っているのは、私と院長、そして担当看護師の篠田だけです。ちいさな金成くんはいつもお母様の会社の方に付き添われて、検査にきていました」

「お母様は一度もいらっしゃることはありませんでした。一度だけ、お電話いただきました。いくらかかってもいいから、他の患者と接触させず、自分の子どもだということも絶対に秘匿してほしいと」

「……あの女の言いそうなことっすね…あ、すんません」
医者は苦笑しただけだった。

「インフェリアはアルファの中では劣等…この言葉、私は好きではないんですが…そう言われていますが、金成くんの場合、インフェリアの中でもかなり劣等とされていました。ですが今日の様子を見る限り、話ができなかったり、成長が止まっていたのは別の原因なのかもしれませんね」

「別の原因?」
「ええ。アルファの中には、幼少期に受けた強いストレスや不安が原因で、成長が止まってしまうケースがごく稀にあるんですよ。まだ原因がはっきりと解明されているわけではないのですが」

「幼少期の強いストレスって……例えばネグレクトとか虐待とかも含まれるんですか」
「ええ。そうですね。というか殆どの原因が親からの愛情不足だと言われています」

「それについては、俺にも責任があると思います」
今までの、弟への自分の言動が頭をよぎる。

「でも、彼が今の状態になったのは、間違いなくあなたのおかげだと思いますよ」
「え? 俺……っすか?!」

「あなたへの表情や態度を見れば、彼が今までになく愛されて、大事にされているとわかりました」
「あ、いや……まあ、はい……」

直球で第三者から言われると、少し照れしまう。俺はもごもごと口の中で呟いた。

「次は半年後ですね。検査日程はこちらからメールでお送りさせていただきます」
「ありがとうございます! 先生、これからもよろしくお願いします」

「ところで、若柳さんは今おいくつでしたっけ?」
「俺ですか? 23ですけど」

「じゃあ若柳さんは弟なんですね」
「……は?」

俺はフリーズした。弟? 誰が?
「先生、どういうことですか? 俺が弟って……」

「金成くんはだいぶ長い間、成長が止まっていたのご存じですよね?」
「ああはい、それは……」

「彼の実年齢は27歳なんです」
「なっ、なっ……ええーーーー!!」

病院で大きな声を出してはいけない。それはわかっている。わかっているが、俺は大声で叫ぶことを止められなかった。
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