忌み子と騎士のいるところ

春Q

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新章Ⅰ「忌み子と騎士のゆくところ」

38.ito☆

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 ルカの腕を引き寄せ、背中を胸で受け止める。後ろから抱かれたルカはどぎまぎした。ジェイルの左腕が胸を包み、右腕が胴に巻き付く。「最初に捕まった時からか」と問う声は不機嫌だった。

「は……はい……」

「倒れた俺の世話を焼く間も、ずっと?」

「ふぁ、あぁ……」

 離れで手当した記憶が蘇る。ジェイルの手は股の間をすべった。ぐちゅ、と濡れた音が立つ。

「!」

「……ここはさっき拭き取ったはずだ。先走りは出るのか」

「や……んゃあ……」

「…………」

 ジェイルは、ルカの濡れた股に再び乾いた布を当てた。陰部を隠した上から、優しく撫でおろす。ルカは真っ赤になった。小さな性器は勃起しないと腿の間でまったいらになる。

「……女みたいだ」

 自分でも思ったことを言い当てられて、心臓が跳ねる。

「そのうち、ここが割れて開くのか?」

 ジェイルはルカの股に指で縦線を引いていた。何度もこする指が次第に起きて爪が立つ。布にはルカの体液がどんどん染み出した。湧き水のようにあふれるものを、ルカはひどく恥知らずに感じた。

「あ……ぁ……」

「勃たなくても感じるのか。感じるんだな、ルカ」

「ご、ごめんなさ、……っ」

「謝るな」

 その声は優しかった。ぐちゅぐちゅに濡れた布を手で押さえ、性器の先を爪でカリカリと刺激する。布が濡れているために摩擦はほとんどない。甘い愛撫にルカの顎は浮き、唇は宙を向いた。

「ん……んぅ……うっ、うっ」

 ジェイルの左手はルカの胸をやわやわと揉んでいた。傷つかず痕の残らない忌み子の体は、ジェイルから性の快楽をたっぷりと教え込まれていた。腫れぼったい乳頭を頂点として胸は微量のふくらみをみせている。わずかな脂肪の集まりを、ジェイルは小鳥を愛でるように指でもてあそんだ。

「男のおまえが女になる理由は俺だけでいい。女神だの緑の民だの余計なことを考えるな。おまえの指も髪も目も、この布の下にある性器だって、俺が大事にしているんだから」

「あ……!」

 全身を抱く力が強くなる。濡れた目じりに唇が落ち、ルカはどきんとする。ジェイルはルカの涙さえ吸って自分のものにしようとしていた。愛するひとから求められる喜びに胸が騒ぐ。

(あぁ、どうしよう……私は修道士なのに、こんなに……)

 興奮していた。節度を守り、清さを保たなければならないとわかっているのに、全身が奮い立つ。背筋は水をやったあとの花のように伸びて、目はジェイルに釘付けだ。今や先走りは床に溜まり、後穴を濡らしている。

 むらむらと情欲に駆られ、ルカは猫のように伸びあがった。布を振り落として、汗ばんだ肌をジェイルに擦りつける。と、鼻先に黒い首枷が当たった。気に入らない。ルカはそれに噛みついた。

「……っ、おい、ルカ」

 細い枷をカシカシと噛むルカの頭を、ジェイルは押さえようとする。

「ンー、ン!」

「ンーじゃないっ。離すんだよ、おらっ」

 歯の間に親指を入れられる。そのまま頬を引っ張られ、ルカは成すすべもなく前抱きにされた。むきだしの性器同士がふれあい、ぐちゅりと音を立てる。ジェイルの頬に朱が差すのを、ルカは見た。強気になってジェイルに尋ねる。

「その首についているのはなんですか」

「……別にいいだろう、俺のことは。それよりもおまえの体を」

「私に、言えないようなことなのですか」

「…………」

 ジェイルは無言でルカの唇をふさいだ。それをされると、目蓋は勝手に閉じてしまう。ルカは勢いに流されたくなくてジェイルの背にすがりついた。両手で包むと、彼の背は汗が冷えて冷たかった。

「お願いですから教えてください。戦っているとき、あなたはとても辛そうだった。その首枷のせいなのではありませんか」

「……ったく」

 ジェイルはルカを抱いたまま、真横にごろりと倒れた。ルカの髪の剃られたところを撫でつけて「そうだ」と面倒そうに肯定する。

「俺がおまえと離れている間、何をしていたか詳しく説明してやる気はない。が、あの妙な力をこれで制御しているのはそうだ。オリノコはこれを難破船で見つけたと言っていた」

「難破船……?」

「外海にある異国では、こういうものを使って人間を従わせているらしい。まあ、いわゆる奴隷だな。どこの国でも為政者というのはロクデナシばかりらしい」

 ジェイルは顎を持ち上げて、ルカに首枷を示した。

「一定の条件を満たすと、ここから針が出て首が締まる」

「……!?」

「針が出ると血が流れる。出血量は微々たるものだが、人ひとりを掌握するには十分だろう。まあ、俺の場合は
本来の使い方とは違い、とっかかりとして血を流す装置として利用しているわけだが……おいコラ、やめろ」

 枷を取ろうとするルカの額を、ジェイルは片手で押さえた。ルカは届かない両手を涙目でばたつかせた。

「外してください。それはあなたの体に良くない」

「ふっ。外したところで……俺のことを殺せるのか? ルカ」

 ジェイルの手はルカの前髪を優しく撫でていた。

 ルカは自分のほうこそ首枷をはめられたかのように苦しくなる。

「自分が傷つかないからって、ひとをあまり見くびるなよ」

 そう言うジェイルの手はルカのこめかみをたどり、頬を押さえる。彼は幸福そうに笑っていた。

「おまえは弱っちくて泣き虫で、俺がいないと何もできないんだから黙って俺に守られていればいい」

「わ、私は、でも……そんな……!」

「……守らせてくれ」

 ジェイルはルカのことをよく怒る。あれをしろ、これはだめだと口うるさいほどに指示して、その実、ルカが望むことには逆らわない。だから、こんなふうに頼んでくることは本当に珍しかった。ルカがうなずくと「……うん」と、口元を緩めて腕を伸ばす。次に口を開けた時は、もう少しだけ強引だった。

「抱かせろよ。俺のものになれ。ルカ……」
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