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間章「ニャンヤンのお祭り」
38.ぜんぶ★
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ルカはジェイルのそこに鼻先を付けた。ふくらみを包む下穿きに、自分の震える息が跳ね返る。布一枚へだてたところに、ルカのすべてをめちゃくちゃにしてくれるものがあった。
揉み屋では前に一度、失敗している。下手くそと言われて最後までしてもらえなかった。
「ルカ、こら」
上を脱いだジェイルが頭をどかそうとしても、ルカはしつこく嗅ぎまわった。独特な臭気を放つそこに顔をすりよせ、歯で留め具を外そうとする。
「おい、おまえは修道士のくせに……!」
「いまの私は、それじゃない」
ジェイルの動きが止まった。ルカはかすれた声で言った。
「今だけ、あなたの猫でいさせてくれませんか、ジェイル様……」
その時ルカは泣いていたのだが、ジェイルはその顔を見ることができなかった。留め具がはずれ、まろびでた男根がルカの瞳を隠していたからだ。
「忘れさせてくれるのでしょう、私に。この街の何が正しくて何が間違っていて、どうすれば救うことができたのか」
「……」
ジェイルが沈黙して、ルカの頭を撫でてくれた。許されたルカは、目の前にあるものを口に咥える。
「んぁ、ん、ぐ……」
ジェイルが身を乗り出してくるので、パンパンに膨れた亀頭が喉を突く。
寝台に乗った彼は、口の奉仕を受けながらルカの尻を撫でた。
(あ……)
葉に滴った雨の雫がそこらじゅうに散るように、ルカはぶるりと身をふるわせる。ジェイルの指がルカの尻の谷間に潜り込んでいた。口での奉仕に集中しなければならないのに、ぬるついた指の動きに息が乱れ、勃起したものをうまくしゃぶることができない。
「……ルカ、尻に指を入れられて喜ぶ猫はいないぞ」
「んん、んん……」
中指が這入ってくる。ジェイルは左手で、ルカの腰から帯を完全にほどいてしまった。尾が取れてしまうと心細くなる。ジェイルの指は壺の中を探るようだった。そうやってルカを恥知らずな人間に戻そうとする。
「あぁ、ああぁ……」
「口を離すな。おまえは俺のこれが好きなんだろうが」
「あぐぅう……」
ふたりで作る輪が、ますます小さく狭くなる。ルカは頭をうまく動かせなかった。口のなかの熱くて固い肉棒に舌をつけ、段差や太い皺を舐めるばかりだ。そうすればするほどジェイルの性器は大きくなり、ルカを犯すかたちに変わっていった。
やがて、指と性器はずるりと引き抜かれた。ルカは自分が急にからっぽになってしまったような気がした。悲しくて、怖くて、ぎゅっと縮めようとしたからだを、ジェイルは表に返した。
「……なんだよ」
ジェイルは、震えるルカの唇を吸った。
「どうした。四つん這いで獣のようにされるほうが好きか? 恋人らしく、俺の首に縋りつくよりも?」
「…………!」
縋りつけと言われていると、わかった。実際そうすると気持ちがひどく安心する。腿の裏に膝を挿れられ、腰がふわっと浮いた。
「ジェイル……」
呼ぶと、彼は首をかしげて、もう一度優しく口づけてくれた。ねだったと思われたのだろう。ルカはただ「すき」と言うために「好き」と言った。「好き」。それを繰り返すと「好き」を言い終われなくなる。
言葉で言い尽くせないほど、好きだった。
「好き、好き……好きっ」
哀願かのように告白するルカに、ジェイルはくすぐったそうに目を細める。
「そんなに言わなくても、くれてやるよ。いつもそうしてるだろうが……」
「ジェイル、ジェイル好き、好きぃ……っ」
しがみついたジェイルの肌と自分の肌が完全に溶け合うのがルカにはわかった。ジェイルがかぶりを振って、ルカに身を伏せる。熱い昂ぶりで恋人のからだを割り開きながら、ジェイルは怒っていた。
「おまえは、俺の気も知らないで……!」
「あ、あっ」
「はじめからおまえが女神なんかのものじゃなかったら、おまえになんのしがらみもなかったら、俺は」
ほんのひと突きでルカは果てた。熟れに熟れたからだが弾け、性器がびしょびしょになる。
しかしジェイルの怒りは止まなかった。
「おまえを猫みたいに扱っていいなら、とっくに飼い殺せていたんだ。風に当てず、外に出さず、悲しませるものになんか絶対に触れさせなかった。それをおまえが……おまえが俺をここまで連れて来たんだろうが!」
「あっ、あぁっ!」
それはルカを引き裂かんとする腰使いだった。
「ふざけんじゃねえぞ! 俺はハナからおまえのことしか考えてないのに、なんだ、一体なんなんだてめえは! 女神だの女騎士だのでアタマいっぱいにしてんのか!? 俺というものがありながら!」
ルカはもう声も出せない。四肢をジェイルに絡みつけ、ただ抱き潰される。
「はじめから終わりまでおまえは俺のものだ。どこにもやらない。俺は絶対にルカをはぐれない。はぐれるのは、いつもいつも、おまえのほうだろうがッ」
その時ルカはようやく理解したのだが、ジェイルが悪い道を教える時に怒ったのは、『俺がはぐれるわけないだろう!』とルカの頬を掴んだのは、つまり、そういうことらしかった。
ジェイルの前には正しい道も間違った道もなくて、ただ、ルカの行きたい道だけがある。そうだ、ルカは自分で、ひとにそう紹介したではないか。『あの方は私の案内人です』『騎士様です』と。
ルカは、泣いてジェイルにしがみついた。熱い吐息と汗が絡み合い、なんの音も聞こえない。ただ彼がルカの口を口でふさいだので、自分がまたあの声を漏らしているとわかった。
からだの中でジェイルの存在感がこれ以上なく膨らむ。ばつんばつんと腰を打ち付けられながら、ルカはそれをしめつける。
「猫だっつうなら猫みたいに孕め。俺の種で孕めよ、ルカ……!」
「んゃっあっ、あぁあっ」
ジェイルはいったい何を言っているのだろう。
ルカは男で、忌み子なのに。孕んだら旅ができなくなってしまう。この町からますます動けなくなるのに。
だが、それを言うジェイルの声は、あまりにも清らかだった。
「俺の女になれよ。妻になってくれ。そしたら、今よりずっと強くおまえを守るから」
こんな馬鹿馬鹿しい世迷言で胸を騒がせているルカは、いったいなにものなのだろう。
ジェイルの激しい射精に、ルカは雌猫のように泣き叫んだ。ジェイルの背中をひっかき、彼の唇をかみしめる。ジェイルはルカの最奥に男根をこすりつけた。
「……っ、あぁ、ルカ……っ」
彼のたくましい肉体から滴る汗がきらきらと光って眩しい。ルカは、どういうわけかその光が世界の全部みたいな気がした。ジェイルのくれるものが一瞬の閃光のような、永遠で、愛だと思った。ずっとずっとルカが心の底から求めてきたものは、たったひとつ、それが全部なのだと。
「ジェイル、ジェイル……!」
小さなからだでは受け止めきれないほどのぜんぶを、ルカは今、全身で享受していた。
揉み屋では前に一度、失敗している。下手くそと言われて最後までしてもらえなかった。
「ルカ、こら」
上を脱いだジェイルが頭をどかそうとしても、ルカはしつこく嗅ぎまわった。独特な臭気を放つそこに顔をすりよせ、歯で留め具を外そうとする。
「おい、おまえは修道士のくせに……!」
「いまの私は、それじゃない」
ジェイルの動きが止まった。ルカはかすれた声で言った。
「今だけ、あなたの猫でいさせてくれませんか、ジェイル様……」
その時ルカは泣いていたのだが、ジェイルはその顔を見ることができなかった。留め具がはずれ、まろびでた男根がルカの瞳を隠していたからだ。
「忘れさせてくれるのでしょう、私に。この街の何が正しくて何が間違っていて、どうすれば救うことができたのか」
「……」
ジェイルが沈黙して、ルカの頭を撫でてくれた。許されたルカは、目の前にあるものを口に咥える。
「んぁ、ん、ぐ……」
ジェイルが身を乗り出してくるので、パンパンに膨れた亀頭が喉を突く。
寝台に乗った彼は、口の奉仕を受けながらルカの尻を撫でた。
(あ……)
葉に滴った雨の雫がそこらじゅうに散るように、ルカはぶるりと身をふるわせる。ジェイルの指がルカの尻の谷間に潜り込んでいた。口での奉仕に集中しなければならないのに、ぬるついた指の動きに息が乱れ、勃起したものをうまくしゃぶることができない。
「……ルカ、尻に指を入れられて喜ぶ猫はいないぞ」
「んん、んん……」
中指が這入ってくる。ジェイルは左手で、ルカの腰から帯を完全にほどいてしまった。尾が取れてしまうと心細くなる。ジェイルの指は壺の中を探るようだった。そうやってルカを恥知らずな人間に戻そうとする。
「あぁ、ああぁ……」
「口を離すな。おまえは俺のこれが好きなんだろうが」
「あぐぅう……」
ふたりで作る輪が、ますます小さく狭くなる。ルカは頭をうまく動かせなかった。口のなかの熱くて固い肉棒に舌をつけ、段差や太い皺を舐めるばかりだ。そうすればするほどジェイルの性器は大きくなり、ルカを犯すかたちに変わっていった。
やがて、指と性器はずるりと引き抜かれた。ルカは自分が急にからっぽになってしまったような気がした。悲しくて、怖くて、ぎゅっと縮めようとしたからだを、ジェイルは表に返した。
「……なんだよ」
ジェイルは、震えるルカの唇を吸った。
「どうした。四つん這いで獣のようにされるほうが好きか? 恋人らしく、俺の首に縋りつくよりも?」
「…………!」
縋りつけと言われていると、わかった。実際そうすると気持ちがひどく安心する。腿の裏に膝を挿れられ、腰がふわっと浮いた。
「ジェイル……」
呼ぶと、彼は首をかしげて、もう一度優しく口づけてくれた。ねだったと思われたのだろう。ルカはただ「すき」と言うために「好き」と言った。「好き」。それを繰り返すと「好き」を言い終われなくなる。
言葉で言い尽くせないほど、好きだった。
「好き、好き……好きっ」
哀願かのように告白するルカに、ジェイルはくすぐったそうに目を細める。
「そんなに言わなくても、くれてやるよ。いつもそうしてるだろうが……」
「ジェイル、ジェイル好き、好きぃ……っ」
しがみついたジェイルの肌と自分の肌が完全に溶け合うのがルカにはわかった。ジェイルがかぶりを振って、ルカに身を伏せる。熱い昂ぶりで恋人のからだを割り開きながら、ジェイルは怒っていた。
「おまえは、俺の気も知らないで……!」
「あ、あっ」
「はじめからおまえが女神なんかのものじゃなかったら、おまえになんのしがらみもなかったら、俺は」
ほんのひと突きでルカは果てた。熟れに熟れたからだが弾け、性器がびしょびしょになる。
しかしジェイルの怒りは止まなかった。
「おまえを猫みたいに扱っていいなら、とっくに飼い殺せていたんだ。風に当てず、外に出さず、悲しませるものになんか絶対に触れさせなかった。それをおまえが……おまえが俺をここまで連れて来たんだろうが!」
「あっ、あぁっ!」
それはルカを引き裂かんとする腰使いだった。
「ふざけんじゃねえぞ! 俺はハナからおまえのことしか考えてないのに、なんだ、一体なんなんだてめえは! 女神だの女騎士だのでアタマいっぱいにしてんのか!? 俺というものがありながら!」
ルカはもう声も出せない。四肢をジェイルに絡みつけ、ただ抱き潰される。
「はじめから終わりまでおまえは俺のものだ。どこにもやらない。俺は絶対にルカをはぐれない。はぐれるのは、いつもいつも、おまえのほうだろうがッ」
その時ルカはようやく理解したのだが、ジェイルが悪い道を教える時に怒ったのは、『俺がはぐれるわけないだろう!』とルカの頬を掴んだのは、つまり、そういうことらしかった。
ジェイルの前には正しい道も間違った道もなくて、ただ、ルカの行きたい道だけがある。そうだ、ルカは自分で、ひとにそう紹介したではないか。『あの方は私の案内人です』『騎士様です』と。
ルカは、泣いてジェイルにしがみついた。熱い吐息と汗が絡み合い、なんの音も聞こえない。ただ彼がルカの口を口でふさいだので、自分がまたあの声を漏らしているとわかった。
からだの中でジェイルの存在感がこれ以上なく膨らむ。ばつんばつんと腰を打ち付けられながら、ルカはそれをしめつける。
「猫だっつうなら猫みたいに孕め。俺の種で孕めよ、ルカ……!」
「んゃっあっ、あぁあっ」
ジェイルはいったい何を言っているのだろう。
ルカは男で、忌み子なのに。孕んだら旅ができなくなってしまう。この町からますます動けなくなるのに。
だが、それを言うジェイルの声は、あまりにも清らかだった。
「俺の女になれよ。妻になってくれ。そしたら、今よりずっと強くおまえを守るから」
こんな馬鹿馬鹿しい世迷言で胸を騒がせているルカは、いったいなにものなのだろう。
ジェイルの激しい射精に、ルカは雌猫のように泣き叫んだ。ジェイルの背中をひっかき、彼の唇をかみしめる。ジェイルはルカの最奥に男根をこすりつけた。
「……っ、あぁ、ルカ……っ」
彼のたくましい肉体から滴る汗がきらきらと光って眩しい。ルカは、どういうわけかその光が世界の全部みたいな気がした。ジェイルのくれるものが一瞬の閃光のような、永遠で、愛だと思った。ずっとずっとルカが心の底から求めてきたものは、たったひとつ、それが全部なのだと。
「ジェイル、ジェイル……!」
小さなからだでは受け止めきれないほどのぜんぶを、ルカは今、全身で享受していた。
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