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間章「ニャンヤンのお祭り」
30.終わりの日
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翌日の朝早く、猫の付け耳と尾をつけた揉み師たちが数名で聖堂を訪ねた。
驚く司祭に、彼女たちは「祭りの日の仮装をお届けにあがったのです」と言った。
「ど、どうしてあなたたちが?」
「私たちはトーチカにそれを頼まれていました。口惜しいことに一度は騎士たちに燃やされてしまいましたが、手が慣れていたので、二度目の仕事はより綺麗に数多く仕上げることができたのです」
「トーチカ……?」
司祭は動揺していた。どんな建前があろうとも、揉み師の仕事は女神の教えに背くものにほかならない。彼女たちは受け取ってもらえないのかと気おくれしたが、ひとりの揉み師はめげずに言った。
「トーチカは恐れ知らずの勇士です。あなたは私たちを穢れていると思うのかもしれませんが、私たちのお得意様がこのことを命じたのです。私たちは仕事のためにここへ来ました」
この言葉に勇気づけられ、揉み師たちは口々に言った。
「そうです。私たちはみんな薄布一枚で働いているのに、これだけの仮装を縫い上げたのです」
「私たちの手を離れたこれは、もはやただの布です」
「受け取ってくださらなければ、私たちは揉み屋の番頭になにを怠けているのかと折檻を受けるでしょう。ええ、彼は私たちをとてもひどく打ちます」
「下手したら打ちどころが悪くて死んでしまうかも……そうなったら、まあ、別に誰のせいとは言わないけど……」
揉み師たちに脅迫される司祭を見て、補助の修道師たちはみんな「いったいどうする気だろう」と横目で彼の様子を見た。
強面の司祭は「……ありがたいことです」と、一礼して受け取った。
「出来のよい品をたくさんいただきました。私たちもぜひこれを使わせていただきます。残りは町のひとびとが自由に使えるよう手配しますから」
修道士たちは「えぇーっ」と顔を見合わせたが、揉み師たちはそれで納得した。
揉み師の手がけた仮装を否応なしに身に着けることになった修道士たちは、ぶつぶつと囁きあった。
「いったい今年の祭りはどうなっているのでしょう。荒くれた者たちが聖堂を占拠したり、揉み師が仮装の寄付に来たりするなんて」
「ひゃーっ、なんてことだ。この仮装からは女性の香りがします!」
「心を騒がせてはなりません! 俗世の女性に惑わされて、なぜ修道士の務めが果たせますか」
「ねえ、一昨日の爆発さわぎのことをどう思いますか。けが人が出なかったらよかったようなものの」
「それより問題なのは、今も蔵に閉じ込めてある、あの恐ろしい忌み子です。あんな汚らわしい者が紛れ込んでいたなんて、私は気味悪くて仕方ない」
修道士たちが聖堂の影で話しつつ仮装を身に着けていると、三人の騎士たちが通りがかった。
「あら、可愛らしいこと」
アガタにそう言われて、修道士たちは思わず身を寄せ合った。彼女は忌み子相手とはいえ、聖堂で剣を振るったのだ。だが、気の強い者が「鈴の玉を返してください。それをどこへ持って行くのですか!」と声を上げた。
騎士たちは、あの木箱を積んだ荷車を引いていたのである。
アガタは薄笑いして首をかしげた。
「何を言っているのかしら。一昨日にお返しにあがったから、私たちは今ここにいるのです。昨日は司祭さまが清めの祈りをささげてくださいましたね。聖なる儀式を見せていただけなかったのは残念だったけれど」
「詭弁です! あなたがたは儀式のあと、すぐに鈴の玉を持って行ってしまったではありませんか!」
その時、アガタが彼の耳元の壁にバンッと手をついた。大きな音に、修道士たちはみな凍りつく。
だが、彼女の声はとても穏やかだった。
「……悲しいわ。あなたは、私たちのことをそんなふうに思っていたのですか?」
アガタに、すっと猫のように額をすり寄せられて、その修道士は真っ赤になった。
「な……なっ、なにを……っ」
「私たちを嫌わないでください。ベルマイン様は悪い者たちから鈴の玉を守るようにと私たちをここへ遣わしたのですよ」
「は、離れなさい、ふしだらな! あなたはこれ以上、私に顔を近づけてはならない!」
「なにを恥ずかしがっているの、お若い修道士様、騎士の私を女と思ってはいけません」
残る修道士たちは、この破廉恥な現場を見ないように手で顔を覆い、わーわーと声にならない声を上げていた。
部下の騎士が背後で咳払いすると、アガタは笑って身を起こした。
「わかっていただけましたか? わかったのなら、司祭様に伝えてください。私たちは鈴の玉を持って出かけるのです。これを使って大きな仕事をしなければならないから」
茹でたように赤くなった修道士は、しおらしくうなずいた。
アガタは顔から笑みを消してその場を離れた。彼女が蔵の前で立ち止まったので、荷車を引く騎士は「見張りを立てておきますか」と彼女に尋ねた。誰かが忌み子を逃がすことを恐れていると思ったのだ。
だが、アガタは緩やかに首を振った。
「その必要はありません。司祭でさえ忌み子を閉じ込めておくことを承知したのです。もはやこの町に、あの者の味方は誰ひとりいません」
それから外へ出た彼女は、道のわからなくなったひとのように左右を見回した。
「……終わりの日というものは、こんなにも変わりないものなのですね」
後に続く騎士たちは、互いに横目を見交わした。アガタはふたりを振り向いて言った。
「ご覧なさい。みな、当たり前のように食べたり飲んだりしています。あんなにも楽しそうに」
セイボリーの町ではニャンヤンのお祭りが始まろうとしていた。道の中央は猫のために広く空けられ、はじには伝統的な料理を出す屋台が軒を連ねている。人通りはまだ少なかったが、仮装しない騎士たちはとても目立っていた。
アガタはぼんやりと天を仰いだ。また雨でも降るのかと、騎士たちは彼女に倣う。しかし空は祭りの日にふさわしく青かった。薄っすらとたなびく薄雲が女神の羽衣かのように日輪を横ざまに飾っている。
「行きましょう」
アガタが歩き出そうとした時だった。通りを走ってくる騎士の姿があった。
一昨日、襲撃に来た悪漢どもと対決した騎士の一人だ。彼ら十二名はアガタの指示通り、別行動で悪者どもを捕らえる任にあたっていた――そのはずだった。
「アガタ様! 大変です」
「どうした。ほかの者たちは」
「わかりません。私たちは分断され、一人ひとり襲われたのです」
「なに」
「敵はまだ歓楽街に潜んでいます。私だけがこうしてあなたのもとへたどりつきました」
大汗をかく騎士は、顔を腕でぬぐい、ぎょっとしたようにのけぞった。
「アガタ様、なぜ笑っておられるのです」
「……これが笑わずにいられるか」
アガタは肩で風を切って歩き出した。
「私は今ようやく、この味気ない仕事にやりがいを見出した。おまえたちも喜ぶがいい。私たちは、この世ならざる者を焼き滅ぼす機会に恵まれたのだから!」
騎士たちが去ってしばらく経った頃、修道士たちが列をなして聖堂から出てきた。催し物が始まる予感に、町のひとびとは諸手を打ち鳴らす。
修道士たちはみな頭上に浅くて大きなザルを掲げていた。そこには糸でかがった美しい鈴の玉がぎっしりと詰まっている。
猫を目にするたびに修道士たちはザルから玉を一つ取って道へ転がした。猫は喜んで玉にじゃれつき、子供たちは「あれが欲しい」と親にねだる。目の利く大人たちは「今年の鈴の玉は色彩がいい」「音は今ひとつだ」などと品評しあった。
そして多くの者たちが「領主さまからの、あの素晴らしい贈り物は転がってこないだろうか」と、まだ見ぬザルの中身に胸をときめかせていた。
このようにして、ニャンヤンの祭りは開始と相成ったのである。
驚く司祭に、彼女たちは「祭りの日の仮装をお届けにあがったのです」と言った。
「ど、どうしてあなたたちが?」
「私たちはトーチカにそれを頼まれていました。口惜しいことに一度は騎士たちに燃やされてしまいましたが、手が慣れていたので、二度目の仕事はより綺麗に数多く仕上げることができたのです」
「トーチカ……?」
司祭は動揺していた。どんな建前があろうとも、揉み師の仕事は女神の教えに背くものにほかならない。彼女たちは受け取ってもらえないのかと気おくれしたが、ひとりの揉み師はめげずに言った。
「トーチカは恐れ知らずの勇士です。あなたは私たちを穢れていると思うのかもしれませんが、私たちのお得意様がこのことを命じたのです。私たちは仕事のためにここへ来ました」
この言葉に勇気づけられ、揉み師たちは口々に言った。
「そうです。私たちはみんな薄布一枚で働いているのに、これだけの仮装を縫い上げたのです」
「私たちの手を離れたこれは、もはやただの布です」
「受け取ってくださらなければ、私たちは揉み屋の番頭になにを怠けているのかと折檻を受けるでしょう。ええ、彼は私たちをとてもひどく打ちます」
「下手したら打ちどころが悪くて死んでしまうかも……そうなったら、まあ、別に誰のせいとは言わないけど……」
揉み師たちに脅迫される司祭を見て、補助の修道師たちはみんな「いったいどうする気だろう」と横目で彼の様子を見た。
強面の司祭は「……ありがたいことです」と、一礼して受け取った。
「出来のよい品をたくさんいただきました。私たちもぜひこれを使わせていただきます。残りは町のひとびとが自由に使えるよう手配しますから」
修道士たちは「えぇーっ」と顔を見合わせたが、揉み師たちはそれで納得した。
揉み師の手がけた仮装を否応なしに身に着けることになった修道士たちは、ぶつぶつと囁きあった。
「いったい今年の祭りはどうなっているのでしょう。荒くれた者たちが聖堂を占拠したり、揉み師が仮装の寄付に来たりするなんて」
「ひゃーっ、なんてことだ。この仮装からは女性の香りがします!」
「心を騒がせてはなりません! 俗世の女性に惑わされて、なぜ修道士の務めが果たせますか」
「ねえ、一昨日の爆発さわぎのことをどう思いますか。けが人が出なかったらよかったようなものの」
「それより問題なのは、今も蔵に閉じ込めてある、あの恐ろしい忌み子です。あんな汚らわしい者が紛れ込んでいたなんて、私は気味悪くて仕方ない」
修道士たちが聖堂の影で話しつつ仮装を身に着けていると、三人の騎士たちが通りがかった。
「あら、可愛らしいこと」
アガタにそう言われて、修道士たちは思わず身を寄せ合った。彼女は忌み子相手とはいえ、聖堂で剣を振るったのだ。だが、気の強い者が「鈴の玉を返してください。それをどこへ持って行くのですか!」と声を上げた。
騎士たちは、あの木箱を積んだ荷車を引いていたのである。
アガタは薄笑いして首をかしげた。
「何を言っているのかしら。一昨日にお返しにあがったから、私たちは今ここにいるのです。昨日は司祭さまが清めの祈りをささげてくださいましたね。聖なる儀式を見せていただけなかったのは残念だったけれど」
「詭弁です! あなたがたは儀式のあと、すぐに鈴の玉を持って行ってしまったではありませんか!」
その時、アガタが彼の耳元の壁にバンッと手をついた。大きな音に、修道士たちはみな凍りつく。
だが、彼女の声はとても穏やかだった。
「……悲しいわ。あなたは、私たちのことをそんなふうに思っていたのですか?」
アガタに、すっと猫のように額をすり寄せられて、その修道士は真っ赤になった。
「な……なっ、なにを……っ」
「私たちを嫌わないでください。ベルマイン様は悪い者たちから鈴の玉を守るようにと私たちをここへ遣わしたのですよ」
「は、離れなさい、ふしだらな! あなたはこれ以上、私に顔を近づけてはならない!」
「なにを恥ずかしがっているの、お若い修道士様、騎士の私を女と思ってはいけません」
残る修道士たちは、この破廉恥な現場を見ないように手で顔を覆い、わーわーと声にならない声を上げていた。
部下の騎士が背後で咳払いすると、アガタは笑って身を起こした。
「わかっていただけましたか? わかったのなら、司祭様に伝えてください。私たちは鈴の玉を持って出かけるのです。これを使って大きな仕事をしなければならないから」
茹でたように赤くなった修道士は、しおらしくうなずいた。
アガタは顔から笑みを消してその場を離れた。彼女が蔵の前で立ち止まったので、荷車を引く騎士は「見張りを立てておきますか」と彼女に尋ねた。誰かが忌み子を逃がすことを恐れていると思ったのだ。
だが、アガタは緩やかに首を振った。
「その必要はありません。司祭でさえ忌み子を閉じ込めておくことを承知したのです。もはやこの町に、あの者の味方は誰ひとりいません」
それから外へ出た彼女は、道のわからなくなったひとのように左右を見回した。
「……終わりの日というものは、こんなにも変わりないものなのですね」
後に続く騎士たちは、互いに横目を見交わした。アガタはふたりを振り向いて言った。
「ご覧なさい。みな、当たり前のように食べたり飲んだりしています。あんなにも楽しそうに」
セイボリーの町ではニャンヤンのお祭りが始まろうとしていた。道の中央は猫のために広く空けられ、はじには伝統的な料理を出す屋台が軒を連ねている。人通りはまだ少なかったが、仮装しない騎士たちはとても目立っていた。
アガタはぼんやりと天を仰いだ。また雨でも降るのかと、騎士たちは彼女に倣う。しかし空は祭りの日にふさわしく青かった。薄っすらとたなびく薄雲が女神の羽衣かのように日輪を横ざまに飾っている。
「行きましょう」
アガタが歩き出そうとした時だった。通りを走ってくる騎士の姿があった。
一昨日、襲撃に来た悪漢どもと対決した騎士の一人だ。彼ら十二名はアガタの指示通り、別行動で悪者どもを捕らえる任にあたっていた――そのはずだった。
「アガタ様! 大変です」
「どうした。ほかの者たちは」
「わかりません。私たちは分断され、一人ひとり襲われたのです」
「なに」
「敵はまだ歓楽街に潜んでいます。私だけがこうしてあなたのもとへたどりつきました」
大汗をかく騎士は、顔を腕でぬぐい、ぎょっとしたようにのけぞった。
「アガタ様、なぜ笑っておられるのです」
「……これが笑わずにいられるか」
アガタは肩で風を切って歩き出した。
「私は今ようやく、この味気ない仕事にやりがいを見出した。おまえたちも喜ぶがいい。私たちは、この世ならざる者を焼き滅ぼす機会に恵まれたのだから!」
騎士たちが去ってしばらく経った頃、修道士たちが列をなして聖堂から出てきた。催し物が始まる予感に、町のひとびとは諸手を打ち鳴らす。
修道士たちはみな頭上に浅くて大きなザルを掲げていた。そこには糸でかがった美しい鈴の玉がぎっしりと詰まっている。
猫を目にするたびに修道士たちはザルから玉を一つ取って道へ転がした。猫は喜んで玉にじゃれつき、子供たちは「あれが欲しい」と親にねだる。目の利く大人たちは「今年の鈴の玉は色彩がいい」「音は今ひとつだ」などと品評しあった。
そして多くの者たちが「領主さまからの、あの素晴らしい贈り物は転がってこないだろうか」と、まだ見ぬザルの中身に胸をときめかせていた。
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