72 / 138
間章「ニャンヤンのお祭り」
19.確保☆
しおりを挟む
この時のルカは女物の肌着に、揉み屋の客用施術着を着ていた。
いつもの修道服は番頭に斬りかかられた際に血で汚れ、穴も空いてしまった。朝に来た時、レイラが部屋から施術着を出してくれたのだが、これは前の閉じないゆったりとした上着で、下穿きの用意はなかった。
『施術が済むまで、お客様は脱ぐことはあっても着ることはないですから』
レイラにそう言われて、ルカはあらためて自分がどういう場所にいるのかを実感した。こんな胸も脚も出るような恰好はしたことがない。
固まっているルカを見て、レイラは『お待ちになってください』と言った。あろうことかそのまま着ているものを脱ぎだすので、ルカは驚いて後ろを向いた。
その肩越しに、レイラはそっと肌着を差し出した。
『…………!』
それは肩紐つきの肌着だった。花飾りのあしらわれた胸元から、ふんわりと裾が広がっている。客の劣情を煽るためなのだろう、白いうえに生地も薄いので肌が透ける。それでも、膝は隠れるだろうが。
『お古ですが、あなたにさしあげます。トーチカ、着てください』
『あ、あなたはどうするのですか! いけません、どうか服を着てください!』
『あなたは私の親友を救ってくださる方です』
レイラの声は震えていた。
『……私は裸でいることに慣れていますが、あなたはそうではないのでしょう。トーチカ、私の子があなたを無理にここへ来させたのです。せめてこれくらいのことは』
彼女は、ルカがトーチカではないことに薄っすら気づいているようだった。
気の弱いレイラに覚悟を示されて、ルカは生温かい肌着を受け取らないわけにはいかなかった。
男らしくない華奢なからだつきが功を奏し、着ることはできた。胸も腰もストンとしているせいで、裾がとても長くなってしまったが、施術着を羽織れば服らしくはなる。頭巾は不格好に見えたけれど。
レイラは女神像を拝むように手を組み、『あなたの役に立てて嬉しい』と言った。
問題はルクスに呼ばれた今、その姿で外に出なければならないということだった。
だが、朝のレイラは一糸まとわぬ素裸で小道を駆け戻り、着替えて戻って来たのだ。恥ずかしいなどと言っていては、医者を呼んでくることはできない。
ルカはカーツェとレイラに事情を伝えて、腰高窓から外へ出た。おそらく老医師がこの窓をまたぐことができないのだろう。
(後で中に声をかけて、踏み台を用意してもらわなければならない)
そう考えながらルクスの方へ小走りに行くルカは、ふと不思議に思った。なぜルクスは何も言わずルカを呼び寄せたのだろう。医師を置いて自分で伝えに来ればいいのに。
その時、ルクスが叫んだ。
「ルカ、逃げろ! 罠だ!」
えっ、と思った時にはもう遅かった。茂みから出てきた黒いものでルカの目の前が塞がる。
ジェイルの髪と、瞳だった。
「……よお」
驚愕のあまり固まっているルカの顔を、彼はじっと見下ろしていた。
「俺抜きで、お楽しみだったらしいな。おい」
彼の武骨な手が、いつの間にか肩を掴んでいた。
「なんだ、だんまりか? たった一晩で男ぶりが上がったんじゃないか……うん? おら、そのツラよく見せてみろ」
手は、動けないルカの首を辿り、顎を掬い、唇を撫でかけて、止まった。ルカは心臓を掴まれた気がする。目が潤んだのは、口づけてもらえないのかと恐れたからだ。ジェイルはルカの二の腕を掴んだ。
「来い。行くぞ」
「あっ」
引っ張って歩かされようとしたルカは、だが進めなかった。ルクスが脚を掴んでいるからだ。
「ダメ! ルカ、行っちゃダメだ!」
ジェイルが舌打ちをして、ルカはぞっとした。ジェイルのまとう雰囲気はいつにも増して荒々しかった。
ルカはルクスを庇おうとしたのだが、その前にジェイルに抱き上げられた。
蹴飛ばされたルクスは小道に転がる。
「おまえは用済みだ。俺の気が変わらんうちに去れ」
ジェイルは、冷たく言い放った。涙目で睨みつけてくるルクスを、傲然と見下ろす。
「忠告しておいてやる。こんなお人好しを手前勝手に利用するようなガキは、碌な死に方をしない」
「なんでだよ、やめろよ! ルカを、トーチカを返せよっ! 僕らにはトーチカが必要なんだよ!」
ジェイルは二度は言わなかった。彼が容赦なく蹴り上げようとしたルクスの顔面を、老医師が身を伏せて庇った。
「……フン」
興を削がれたように、ジェイルは踵を返した。
怒りを露わにするジェイルに抱かれ、ルカは体が動かなかった。小道を抜けて揉み屋の本館に入り、ようやく頭が事態に追いついて、体が恐怖に震え始める。ルカは頼んだ。
「下ろしてください」
「ダメだ」
ジェイルはルカを抱き直して言った。
「状況が変わった。今すぐ町を出る」
「えっ……」
ルカは目の前が真っ暗になった。
「そんな、約束が違います。お祭りの日までは居てくださると言ったのに」
「状況が変わったと言っているだろうが。誰のせいだと思ってる」
自分のせいかのように言われて、ルカは頭に血が上った。
(私が外泊したからといって、事情も聞かずに予定を変えるのはおかしい)
頭の中ではそう論理立った思考が立つのに、口から出てきたのは全く違う言葉だった。
「あなたは私がねだればなんでも聞いてくださるはずです!」
自分がこんなにみっともないセリフを吐く日が来るなんて、ルカは思ってもみなかった。
叫ぶように訴えて、すぐに後悔した。いったい、なにを言っているのだろう? まるでジェイルが自分のわがままを聞くのは当たり前だとでもいうような、幼稚で、傲慢な態度だ。
(違う、こんなことを言う私は、私ではない)
頭が沸騰するように熱くなった。ジェイルに恋人のように抱かれている自分も、体格に合わない女ものの肌着を身に着けた自分も、ルカではない。ルカは修道士だ。人と女神に仕えるのが本分である。自分を必要としている人たちのもとへ戻らなければならない。
ジェイルはルカの発言に一瞬呆けたかに見えた。だが、ルカが腕の中でじたばたと暴れると、声を荒げた。
「おいっ暴れるな! いい加減に聞き分けろ……あぁ、クソッ」
しまいには泣き出してしまうルカを、ジェイルは廊下に放り出した。そのうえ腕を捩じ上げて、ルカの額を壁に向かって押し付けてしまう。なんて乱暴なことを――そう思ったルカは、かつかつと近づいてくる足音に身を縮めた。
押さえつけられて顔を上げられずとも、その集団が何者かは靴を見ればわかる。
それは雄黄の騎士団だった。
彼らはジェイルとルカを見咎めた。「何をしている」と問い質されて、ジェイルは笑い出した。それはルカが聞いたことのない、ひどく俗っぽくて嫌な笑い方だった。
「見てわからないのか。揉み師の世話になっているんだが」
「……ふうん。わざわざ、廊下で」
ルカからは見えないが、その声は女性のものだった。落ち着いた低い声だ。
目の前には布のかかった個室がある。ジェイルは「ここで誘惑されたんだから仕方ない」と吐き捨てた。
「俺は我慢強いほうじゃなくてね。それにこいつも」
ジェイルはあからさまな手つきで、ルカの腰を撫でた。
「……っ!」
彼らの視線が自分の腰に集まるのがわかった。ジェイルは「こういう状況がお好みらしい」と言って、ルカの施術着の裾をめくりあげた。
「ひゃ、あっ」
ルカは高い声を漏らさずにいられなかった。肌着がどれくらい透けるものかは見て知っている。いやいやをするようにかぶりを振るのだが、ジェイルはねっとりとした手つきで腰を撫でまわしている。ゆっくりと手の平全体が円を描いた、と思うとその手がふっと浮いた。
ルカは既知の感覚に、ぱぁんと尻を張られる前から、もうよがり声を上げてしまっていた。
「ひあぁっ! あぁんっ!」
ごく、と唾を飲んだのが集団の中の誰だったのか、ルカはわからない。ただジェイルの手の奴隷となって、痛みとも快楽ともつかない衝撃をびくびくと待ちわびてしまっている。
「……うん? なんだ、まだ見てるのか。なかなかいいシュミしてんな、おまえら」
ジェイルはルカの尻を堪能しつつ、騎士団をまとめて嘲った。一人の騎士が何か言い返そうとしたようだったが、女騎士が片手で制した。
「失礼。我々はこの店に潜伏しているという、トーチカなる人物を探しているのです」
「へぇ」
ジェイルのどうでもよさそうな返事に、彼女は食い下がった。
「あなた何か知ってるんじゃないですか?」
「すげえ言いがかりだな、おい」
「あら、すみません。何か気に障りました?」
言い合いの合間にも、ジェイルは緩慢な手つきで下穿きの前を寛げていた。人前で事を為そうとする好色ぶりに騎士団はどよめいたが、彼女は一歩も退かなかった。
「たとえトーチカがどういった人物であったとしても、私たちは彼を捕まえます。名前や姿を変えようと、必ず。反乱の煽動というのはとても重い罪ですし……ベルマイン様へのいい手土産になりますから」
「いや、知るかよ……」
ジェイルはルカの背中にべったりと胸を添わせた。彼は性交に及ぶと見せかけて、ルカを隠そうとしていた。
熱い胸板からジェイルの力強い動悸が伝わってきて、ルカはなぜか泣きそうになる。頭の上で何を言い合っているのかはよくわからなくても、ジェイルが自分を守ろうとしていることは痛いほど伝わってくる。
女騎士は少し考えるような間をおいて「あなた、いい体してますね」と言った。
ジェイルが黙っていると「ラウムの騎士は鍛え方が足りないようです」と続ける。
「さっきから何が言いたい」
「……私はアガタと申します。もし騎士団の仕事に興味があればご連絡ください。稼げると思いますよ。カード賭博のサクラなんかより、よっぽど」
いつもの修道服は番頭に斬りかかられた際に血で汚れ、穴も空いてしまった。朝に来た時、レイラが部屋から施術着を出してくれたのだが、これは前の閉じないゆったりとした上着で、下穿きの用意はなかった。
『施術が済むまで、お客様は脱ぐことはあっても着ることはないですから』
レイラにそう言われて、ルカはあらためて自分がどういう場所にいるのかを実感した。こんな胸も脚も出るような恰好はしたことがない。
固まっているルカを見て、レイラは『お待ちになってください』と言った。あろうことかそのまま着ているものを脱ぎだすので、ルカは驚いて後ろを向いた。
その肩越しに、レイラはそっと肌着を差し出した。
『…………!』
それは肩紐つきの肌着だった。花飾りのあしらわれた胸元から、ふんわりと裾が広がっている。客の劣情を煽るためなのだろう、白いうえに生地も薄いので肌が透ける。それでも、膝は隠れるだろうが。
『お古ですが、あなたにさしあげます。トーチカ、着てください』
『あ、あなたはどうするのですか! いけません、どうか服を着てください!』
『あなたは私の親友を救ってくださる方です』
レイラの声は震えていた。
『……私は裸でいることに慣れていますが、あなたはそうではないのでしょう。トーチカ、私の子があなたを無理にここへ来させたのです。せめてこれくらいのことは』
彼女は、ルカがトーチカではないことに薄っすら気づいているようだった。
気の弱いレイラに覚悟を示されて、ルカは生温かい肌着を受け取らないわけにはいかなかった。
男らしくない華奢なからだつきが功を奏し、着ることはできた。胸も腰もストンとしているせいで、裾がとても長くなってしまったが、施術着を羽織れば服らしくはなる。頭巾は不格好に見えたけれど。
レイラは女神像を拝むように手を組み、『あなたの役に立てて嬉しい』と言った。
問題はルクスに呼ばれた今、その姿で外に出なければならないということだった。
だが、朝のレイラは一糸まとわぬ素裸で小道を駆け戻り、着替えて戻って来たのだ。恥ずかしいなどと言っていては、医者を呼んでくることはできない。
ルカはカーツェとレイラに事情を伝えて、腰高窓から外へ出た。おそらく老医師がこの窓をまたぐことができないのだろう。
(後で中に声をかけて、踏み台を用意してもらわなければならない)
そう考えながらルクスの方へ小走りに行くルカは、ふと不思議に思った。なぜルクスは何も言わずルカを呼び寄せたのだろう。医師を置いて自分で伝えに来ればいいのに。
その時、ルクスが叫んだ。
「ルカ、逃げろ! 罠だ!」
えっ、と思った時にはもう遅かった。茂みから出てきた黒いものでルカの目の前が塞がる。
ジェイルの髪と、瞳だった。
「……よお」
驚愕のあまり固まっているルカの顔を、彼はじっと見下ろしていた。
「俺抜きで、お楽しみだったらしいな。おい」
彼の武骨な手が、いつの間にか肩を掴んでいた。
「なんだ、だんまりか? たった一晩で男ぶりが上がったんじゃないか……うん? おら、そのツラよく見せてみろ」
手は、動けないルカの首を辿り、顎を掬い、唇を撫でかけて、止まった。ルカは心臓を掴まれた気がする。目が潤んだのは、口づけてもらえないのかと恐れたからだ。ジェイルはルカの二の腕を掴んだ。
「来い。行くぞ」
「あっ」
引っ張って歩かされようとしたルカは、だが進めなかった。ルクスが脚を掴んでいるからだ。
「ダメ! ルカ、行っちゃダメだ!」
ジェイルが舌打ちをして、ルカはぞっとした。ジェイルのまとう雰囲気はいつにも増して荒々しかった。
ルカはルクスを庇おうとしたのだが、その前にジェイルに抱き上げられた。
蹴飛ばされたルクスは小道に転がる。
「おまえは用済みだ。俺の気が変わらんうちに去れ」
ジェイルは、冷たく言い放った。涙目で睨みつけてくるルクスを、傲然と見下ろす。
「忠告しておいてやる。こんなお人好しを手前勝手に利用するようなガキは、碌な死に方をしない」
「なんでだよ、やめろよ! ルカを、トーチカを返せよっ! 僕らにはトーチカが必要なんだよ!」
ジェイルは二度は言わなかった。彼が容赦なく蹴り上げようとしたルクスの顔面を、老医師が身を伏せて庇った。
「……フン」
興を削がれたように、ジェイルは踵を返した。
怒りを露わにするジェイルに抱かれ、ルカは体が動かなかった。小道を抜けて揉み屋の本館に入り、ようやく頭が事態に追いついて、体が恐怖に震え始める。ルカは頼んだ。
「下ろしてください」
「ダメだ」
ジェイルはルカを抱き直して言った。
「状況が変わった。今すぐ町を出る」
「えっ……」
ルカは目の前が真っ暗になった。
「そんな、約束が違います。お祭りの日までは居てくださると言ったのに」
「状況が変わったと言っているだろうが。誰のせいだと思ってる」
自分のせいかのように言われて、ルカは頭に血が上った。
(私が外泊したからといって、事情も聞かずに予定を変えるのはおかしい)
頭の中ではそう論理立った思考が立つのに、口から出てきたのは全く違う言葉だった。
「あなたは私がねだればなんでも聞いてくださるはずです!」
自分がこんなにみっともないセリフを吐く日が来るなんて、ルカは思ってもみなかった。
叫ぶように訴えて、すぐに後悔した。いったい、なにを言っているのだろう? まるでジェイルが自分のわがままを聞くのは当たり前だとでもいうような、幼稚で、傲慢な態度だ。
(違う、こんなことを言う私は、私ではない)
頭が沸騰するように熱くなった。ジェイルに恋人のように抱かれている自分も、体格に合わない女ものの肌着を身に着けた自分も、ルカではない。ルカは修道士だ。人と女神に仕えるのが本分である。自分を必要としている人たちのもとへ戻らなければならない。
ジェイルはルカの発言に一瞬呆けたかに見えた。だが、ルカが腕の中でじたばたと暴れると、声を荒げた。
「おいっ暴れるな! いい加減に聞き分けろ……あぁ、クソッ」
しまいには泣き出してしまうルカを、ジェイルは廊下に放り出した。そのうえ腕を捩じ上げて、ルカの額を壁に向かって押し付けてしまう。なんて乱暴なことを――そう思ったルカは、かつかつと近づいてくる足音に身を縮めた。
押さえつけられて顔を上げられずとも、その集団が何者かは靴を見ればわかる。
それは雄黄の騎士団だった。
彼らはジェイルとルカを見咎めた。「何をしている」と問い質されて、ジェイルは笑い出した。それはルカが聞いたことのない、ひどく俗っぽくて嫌な笑い方だった。
「見てわからないのか。揉み師の世話になっているんだが」
「……ふうん。わざわざ、廊下で」
ルカからは見えないが、その声は女性のものだった。落ち着いた低い声だ。
目の前には布のかかった個室がある。ジェイルは「ここで誘惑されたんだから仕方ない」と吐き捨てた。
「俺は我慢強いほうじゃなくてね。それにこいつも」
ジェイルはあからさまな手つきで、ルカの腰を撫でた。
「……っ!」
彼らの視線が自分の腰に集まるのがわかった。ジェイルは「こういう状況がお好みらしい」と言って、ルカの施術着の裾をめくりあげた。
「ひゃ、あっ」
ルカは高い声を漏らさずにいられなかった。肌着がどれくらい透けるものかは見て知っている。いやいやをするようにかぶりを振るのだが、ジェイルはねっとりとした手つきで腰を撫でまわしている。ゆっくりと手の平全体が円を描いた、と思うとその手がふっと浮いた。
ルカは既知の感覚に、ぱぁんと尻を張られる前から、もうよがり声を上げてしまっていた。
「ひあぁっ! あぁんっ!」
ごく、と唾を飲んだのが集団の中の誰だったのか、ルカはわからない。ただジェイルの手の奴隷となって、痛みとも快楽ともつかない衝撃をびくびくと待ちわびてしまっている。
「……うん? なんだ、まだ見てるのか。なかなかいいシュミしてんな、おまえら」
ジェイルはルカの尻を堪能しつつ、騎士団をまとめて嘲った。一人の騎士が何か言い返そうとしたようだったが、女騎士が片手で制した。
「失礼。我々はこの店に潜伏しているという、トーチカなる人物を探しているのです」
「へぇ」
ジェイルのどうでもよさそうな返事に、彼女は食い下がった。
「あなた何か知ってるんじゃないですか?」
「すげえ言いがかりだな、おい」
「あら、すみません。何か気に障りました?」
言い合いの合間にも、ジェイルは緩慢な手つきで下穿きの前を寛げていた。人前で事を為そうとする好色ぶりに騎士団はどよめいたが、彼女は一歩も退かなかった。
「たとえトーチカがどういった人物であったとしても、私たちは彼を捕まえます。名前や姿を変えようと、必ず。反乱の煽動というのはとても重い罪ですし……ベルマイン様へのいい手土産になりますから」
「いや、知るかよ……」
ジェイルはルカの背中にべったりと胸を添わせた。彼は性交に及ぶと見せかけて、ルカを隠そうとしていた。
熱い胸板からジェイルの力強い動悸が伝わってきて、ルカはなぜか泣きそうになる。頭の上で何を言い合っているのかはよくわからなくても、ジェイルが自分を守ろうとしていることは痛いほど伝わってくる。
女騎士は少し考えるような間をおいて「あなた、いい体してますね」と言った。
ジェイルが黙っていると「ラウムの騎士は鍛え方が足りないようです」と続ける。
「さっきから何が言いたい」
「……私はアガタと申します。もし騎士団の仕事に興味があればご連絡ください。稼げると思いますよ。カード賭博のサクラなんかより、よっぽど」
29
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる