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ラブラブハッピー番外編

かわいそうなオズヌと素敵なお婿さんのお話④★

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 結婚式のあと、オズヌは血と小便に汚れた夫を最下層の湯殿へ運んだ。涙が止まらなかった。トロイメライはなんと愚かだったのだろう。ぽっと出の雑種が、あのグレンを倒せるわけがないのだ。

 わかっていてやめさせなかったオズヌは彼よりもいっそう愚かだった。あの空想のお城が、もしかしたら現実になるかもしれないと夢見てしまったのだ。我ながらおこがましかった。夢は美しい夢のままにしておくべきだった。トロイメライにもしものことがあったら、すばらしい王国も城も、途端にむなしいものとなってしまうのに。

 不幸中の幸いというべきか、グレンはみんなの前でトロイメライを山の子供と認めてくれた。見物に来た者たちもトロイメライの戦いぶりを見て、無礼なよそ者にしてはできる、と認識を改めてくれたようだった。

 一対一の神聖な対決にオズヌが乱入してしまったことについては、最下層の弱者がやったことだからと不問に処された。結局、クメミ山の根底に流れる弱者への侮りが事態を丸く収めたことになる。オズヌ一家は弱者にしては珍しい見世物を提供しただけ。決して脅威にはなりえないのだから、全力で叩き潰す必要もないというわけだ。

(……婿殿も、これでバカげた夢から目が覚めただろう)

 最下層の古びた洗い場で、オズヌはため息をついた。夫の汚れた服をこわごわと脱がせ、膝枕して顔の血を拭き取る。布巾はみるみるうちに赤黒く染まった。眼鏡を外した彼の顔が思いがけないほど幼くて、オズヌの目には涙が浮かんだ。

(こんなにボロボロになって)

 自分のせいだと思った。何もわかっていないトロイメライをオズヌがクメミ山まで連れてきてしまったのだ。結婚してお山の子となったからには、もう元の集落には戻れない。彼は這い上がれない沼に落ちたも同然だった。

 ぽたり、滴った涙がトロイメライの眉間で弾けた。ゆっくりと目を開けた彼の声はかすれていた。

「オズヌさん……?」

「うん」

「あれ、ボク……」

「いいんだ。喋らないでいいから」

「ボクたち、いっしょに戦ったネ……?」

「……!」

 あの時。いったい臆病で弱っちい自分のどこにあんな力があったのか、オズヌは我ながらわからない。ただ角がジンジンと疼いて、気がつくと雄たけびを上げてグレンに突進していた。一対一の勝負に乱入するなんてルール違反もいいところ、おまけにまったく無意味な行動だった。

 勢いだけで飛び出したオズヌは、壁打ちしたボールみたいにポインと跳ね返されてしまった。仰ぎ見たグレンの威容は凄まじかった。身にしみついた強者への恐れが蘇る。オズヌは恐怖のあまり息もできなかった。弛緩した股から尿を垂れ流し、ただただ震えていたのだ。

「あんなの、一緒に戦ったって言わないよ……」

「そうですか?」

「そうだよ……」

「でもボク、次は負けないよ」

 次。

 次なんてない、とオズヌは言うべきだった。結婚式で、強者のお目こぼしがあったから許されたのだ、いい加減にしろ。彼のためにも自分のためにも、そうわからなせなければならない。しかし口は開いても舌は動かなかった。

 どうしてだろう。膝の上の、トロイメライの輝かしい顔を見ていると、こいつ次は勝つんじゃないかという気がしてくる。

 オズヌは下唇を噛んだ。夫の濡れた眉間をぬぐう。彼の闘志を、自分のような弱虫の涙で汚したくはなかった。

 その時、トロイメライは何を思ったのか顎を浮かせた。目を閉じ、唇を「んっ」と突き出してくる。求められていることを察したオズヌは、その屈託のなさに驚いてしまった。

 別にそんなつもりはなかったのだが、確かに、気がついてみると彼は裸だし、自分は立てないし、何かを期待されてもおかしくはない状況である。

(だって怪我をしているのに……いや、でも、もう夫婦なのだし、こんなになるまで戦ってくれたのだから……)

 意を決したオズヌはおそるおそる彼の顔を覗き込んだ。と、動かないだろうと思っていた腕が伸びてきた。ガシッと角を掴まれる。オズヌは雷に打たれたかのようにびびびと震えた。

「あっ、あ、やぁん、いやん」

 頭から水に落ちるかのような口づけだった。オズヌは泡を吐くように溺れた。トロイメライの舌は甘い。鼓膜に反響する水音は不思議と懐かしい。まぶたの裏にぼんやりと明るい景色が浮かんだ。

(ああ、ここはお城だ……)

 気分が高揚するあまり幻覚を見ている。そう頭ではわかってはいたが、なにぶんはじめてのキスだった。それも共に死線をくぐりぬけたトロイメライとのキスだった。あんなにみっともない負け方をしたというのに、オズヌは本当に女王様になったような心地だった。豊かで平和な王国が、現実にこの腕の中にある。

 あの瞬間を、記憶の中で永遠にとっておけると思ったのに。

「オズヌさん」

 暖かな洞窟の中で、トロイメライはオズヌの涙を吸った。

「う……っ、うぅ……っ」

「泣かないで、オズヌさん。ボクここにいるよ。悲しいことはなんにも起こってないです」

 本当にそうだろうか。

 死ぬわけがないと思っていたグレンは呆気なく命を奪われた。クメミ山は消え去り、同胞の安否はいまだ知れず、なじみ深い言葉はもう二度と戻ってこない。

(みんな、生活を立て直すのに必死で忘れたふりをしているだけだ)

 オズヌも同じなはずだ。産んだ子を育てなければならない。毎日やるべきことはある。しかし違和感が拭い去れず、いちいち立ち止まってしまう。なぜか。最下層暮らしが板についた、恥ずかしい、弱いミノタウロスだからだ。

 周りに合わせて表面的な平静を装うのも、もう限界だった。しょげかえったオズヌの背中をトロイメライは撫でた。

「……ボク、オズヌさんの今の話しかたスキですよ。しゃべれるようになって、本当によかった」

「だって……でも……」

「お父さんとお母さんも生きてて、元気な赤ちゃんも生まれて、なんにも泣くことないよ。いろんなことがあったけど、ボクたちは今ステキな洞窟にいます。あったかいね」

 鼻先へのキスは蝶がとまるかのようだった。瞬きするオズヌに、トロイメライは甘い息を吹きかけた。

「オズヌさん、二度目のはじめてみたい」

「に、にどめの……?」

「そう。ケガしてないし、一度目のはじめてより上手くできますネ。ボク、ウブな花嫁さんにうんと優しくします」

「えっ。えぇっ」

 トロイメライの提案にオズヌは顎を引いた。はじめてなわけがない。彼に抱かれ、もう何人も子供を産んでいるのに、今さら処女のように扱うなんてどうかしている。

 しかし、彼にじっと見つめられたオズヌは、確かに処女も同然だった。自分の肉体が恥ずかしくてたまらないのだ。授乳に慣れた乳房は雪の積もった枝のように垂れ下がり、腰はだらしない寸胴で、臍が縦ではなく横一文字になっている。

「ああ、やだあ……」

 オズヌは手足とを総動員して体を隠そうとする。その脇を、トロイメライは「そう、そう」と言ってツンとつついた。

「一度目のはじめての時も、おんなじ。ボクのことは脱がせたのに、自分は照れちゃって」

「うっ、うあん」

「おふろで服がびちょびちょになって、結局帰れなくて、あとからお母さんが着替えを」

「も、もういいですっ、だまってくださいっ」

 動揺すると敬語になってしまう。トロイメライに笑われて、オズヌはますます身を縮め、そっぽを向いた。

「それでも最後には、ボクにぜーんぶ見せてくれました。とってもとってもかわいかった」

 背中にピットリと身を寄せてくる。トロイメライの猛った性器がお尻をなぞった。

「あ……」

「今もこんなにかわいい。ボク昔はなんにも持ってなかったのに、欲しかったもの、オズヌさんが全部くれました」

「……そんな、それは、ちがう」

「ちがう? 二度目のはじめてはくれないですか?」

「わ、わかった、わかったから……っ、全部あんたの好きにしていいから、もぉ……!」

 ぎゅっと握りこんだ手元で、やわらかい苔がつぶれる。青い匂いに触発されて、オズヌの尻尾は勝手に揺れた。膨らんだ穂先でトロイメライの臍と自分の腰の間をふさふさと掃除してしまう。かすかに笑う彼の手が、オズヌの股に回った。指の腹がそっとクリトリスに触れる。

「あぁーっ、あぁーん」

 犬のように遠吠えするオズヌの股を、トロイメライは嬉しそうに撫でた。

「お股きもちいいね、オズヌさん。女の子のおちんちんがプックリして」

 長い結婚生活で甘やかされ、肥大化したクリトリスは、わずかな刺激で達することを覚えた。指の腹で転がされると、愛液が果汁のようにあふれてくる。

「痛くないように、優しく、優しくネ。なでなでします」

「んぉ、おッ、おっ、やらっ、んゃあんっ」

 弱い刺激がもどかしい。オズヌはトロイメライの指を追って腰をへこつかせた。処女にあるまじき淫らな腰振りを、トロイメライは「だーめ」と封じた。後ろから股を掴みなおして、指を浮かせてしまうのだ。腰を振ったところで擦り付けるものがない。
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