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19.地下アジト(R15性表現)
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枕の中身は木の実の殻だ。さほど強度があるわけではない。ゴズメルがごしょごしょと腰を振ると、すぐに角がへたってしまう。
「ん……っ、ん……っ」
ゴズメルは呻きながら膝でグッと枕を潰した。
(こんなふうにリリィにしたら、あの子の腰は砕けちまうかも……)
昨夜は抱き合って互いの陰部を擦り合わせた。リリィは無知なゴズメルをリードするかのように下になってくれたのだ。巨乳でリリィの顔を襲うようにしながら膝を割り開く。女同士の冗談みたいな正常位は、しかし妙にしっくり来た。
『嬉しい……』
ゴズメルの胸に顔を隠しながら、リリィはそう呟いた。気持ちいいより苦しいだろうに、『もっと私を押し潰して』などとねだる。
狭いところに入りたがる猫みたいに可愛い。そう思う反面、きっとリリィも寂しかったのだろうと思った。ゴズメルにぺちゃんこにされながら、安らいだように笑っていた彼女が、今はひどく恋しい。
「うあぁ……っ、あ、あ、リリィ、リリィ……」
リリィの存在を意識すると、腰の振り方が荒々しくなる。足腰の筋肉が悲鳴をあげていた。寝床にほんのりと漂う残り香が鼻先をかすめ、もう腰が止まらない。
「リリィ、いく、いく、イッちまう……あ、おああっ」
もう一息、というところでビキッと腰に衝撃が走る。攣った。
「ひーっ・・・!」
痛すぎて尻の筋肉の感覚がない。ゴズメルは自分が肉屋の天井にぶらさがっているソーセージになった気がした。背骨から肉がぶらぶら吊られている気がするのだ。『安静にしててね』というリリィの言葉が脳に蘇ってくる。
(うえーん、オナニーもまともにできないよー! スッキリしたいのにー!)
頭の中ではジタバタと四肢を動かして駄々をこねているのだが、実際には「ア、ア……」とピクピクしているだけだ。その時、小さな足音が聞こえなかったら、否応なしにふて寝していたかもしれない。
「…………!」
入口にかかった布をめくって中を覗き込んできたのは、二人の若い娘だった。ゴズメルと同じように褐色の肌を持ち、くしゃくしゃの髪の左右から角を覗かせている。
「ゴズメル姉……ッ……」
喋る途中で舌を噛んでしまったようだ。名前を呼ばれたゴズメルはきょとんとする。
二人はリリィに頼まれて、ゴズメルに食事を運んできてくれたのだった。
石の器に、団子にした芋が山と盛られている。二人は変な体勢のゴズメルのからだを解きほぐし、芋を口まで運んでくれた。ねっとりした芋に、ぷちぷちと虫の触感が混ざって美味しい。芳醇な香りがするのは、香草が混ぜてあるのだろうか? どことなく懐かしい味わいだ。
ゴズメルが親切な二人に名前を尋ねると、彼女たちはナギとムクゲと名乗った。
「やっぱり、リリィさんの言っていたとおり、ゴズメルお姉ちゃんは記憶をなくしてしまったんですね」
「う、うん……。ごめんね。それじゃあやっぱり、あんたたちはあたしの……」
「親戚です。お山がなくなる時、私たちとお姉ちゃんは知り合ったばかりだったけど、一緒に遊んでもらっていました」
喋るのは姉のナギばかりだ。妹のムクゲは、舌を噛んでからずっと黙りこくっている。なんだか表情も暗いので、ゴズメルは心配になってしまった。
「舌が痛いのかい? 水を飲んだらどうだろう……」
勧めてみたが、ムクゲは泣きそうな顔で首を振った。不安そうにナギの腕にくっついている。
「種族語を取られてから、ずっとこうなんです」
「シュゾクゴを……取る……?」
「はい」
ナギは妹を撫でながら「もともと私たちには私たちの言葉があったんですけど」と、経緯を説明した。
カトー率いる冒険者協会の襲撃に遭ったミノタウロス族は、必死に戦ったのだが負けてしまった。それでも何人かが踏みとどまって守ってくれたおかげで、ナギとムクゲたちのように後衛にいた者たちは地下へ逃げられたのだと言う。
神殿のある最下層へ、最下層のさらに地下、芋掘りの穴へと逃げ込んだ。山を襲う恐ろしい轟音を、仲間たちと身を寄せ合って耐えた。だが、本当に恐ろしかったのは、あたりが無音になってからだ。
様子を確かめるために穴の外に出ようとした彼らは、飛び込んだ穴がふさがっていることに気がついた。
「閉じ込められたのだと思って、本当に怖かった。もしもあの時リリィさんが一緒にいてくれなかったら、私たちは気が狂ってしまっていたかもしれません」
補助魔法でその場を照らしたリリィは、ミノタウロス族を元気づけてくれた。
『後ろに戻れないなら、前に進むしかないわ!』
力自慢のミノタウロス族は、みんなで力を合わせて穴を掘り進めた。どうにか水のある空間に出た時はホッとしたけれど……その時、歓声をあげようとしても、口から慣れた言葉が出てこないことに驚いた。
「びっくりしました。地上のひとたちが喋るような言葉しか話せなくなっているんです。……今も、なんだかゾッとしています。すみません、地上のひとを悪く言うつもりはないんですけど、自分がすごく気取った、整いすぎた言葉を使っているような気がして、落ち着かないんです」
話しながら思い出すのだろう。ナギはムクゲと一緒になって涙ぐんでいた。
「そのうちリリィさんのおじさまが助けに来てくれて、ここでの暮らしはとても良くなりました。少なくとも、生活していくことはできます。でも……」
取られた言葉は戻ってこない。ナギも、流暢に喋っているようではあるが、たまに言葉が出てこなくなってしまうことがあると言う。
「おじさまは、そもそも独自に言葉を発達させすぎたのが良くなかったと言っていました。この世界は言葉でできているから、変わった言葉を使いすぎると、腐食が起こりやすくなるんだって」
「ふしょく……?」
「ああ、ええと、すみません、私の言葉は変ですか? 腐ること……腐食してバグが生まれる、それが魔物になるって、おじさまは言っていました。そのおかげで強くなったとしても、悪い苔の病も引き寄せるのだと」
「…………」
ゴズメルは沈黙した。わからないことだらけだが、ミノタウロス族が種族語を奪われたことはハッキリしていた。ナギが心配そうにもう一度「私の言葉は変ですか」と尋ねる。ゴズメルは「ううん!」と力強く首を振った。
「全然、変じゃないよ。あんたは説明が上手だね、ナギ」
ナギの強張った笑みに、ゴズメルは胸が痛んだ。
たとえそれが正常化する意味を持っていたとしても、使い慣れた言葉を奪われるなんてどんなに辛いことだろう。
会話が不便なのはもちろん、複雑なことも考えられなくなってしまう。心の拠り所を失うのと同じだ。
(あたしがずっと不安だったのも、記憶喪失だけが原因だったんじゃないかもしれないな……)
喋れなくても、ぬくもりは感じる。ナギにくっついて小さくなっているムクゲの頭を、ゴズメルはよしよしと撫でた。
ムクゲはもともと好戦的な性格だったに違いない。目をキラッとさせると、子猫がじゃれるみたいにゴズメルの腕に絡んできた。石の皿が寝床にひっくりかえる。
「おっ、おっとと……」
「し、死合っ……!」
また舌を噛んでいる。種族語を喋ろうとすると、自然と口が閉じてしまうようだ。ぺっぺっとベロをひっこめると、ゴズメルに無言で挑みかかってきた。ストレスが溜まっているのだろうが、絡まれるほうはたまったものではない。
「ぎゃーっ! 治ってからにしてくれよお!」
「フーッフーッ」
「ムクゲ、落ち着いてよ」
寝床でドタバタじゃれあっていって、ゴズメルははたと気づいた。
「……!?」
攣った衝撃で気づかなかったが、脚の間に途轍もない違和感がある。「ちょ、ちょっとタイム!」ナギがムクゲを取り押さえている間、ゴズメルは自分の股を手で確かめた。
(おいおい、魔力の循環が急によくなったからって、こんな……)
ひっこんだばかりの男根が、また生えてきてしまっていた。
「ん……っ、ん……っ」
ゴズメルは呻きながら膝でグッと枕を潰した。
(こんなふうにリリィにしたら、あの子の腰は砕けちまうかも……)
昨夜は抱き合って互いの陰部を擦り合わせた。リリィは無知なゴズメルをリードするかのように下になってくれたのだ。巨乳でリリィの顔を襲うようにしながら膝を割り開く。女同士の冗談みたいな正常位は、しかし妙にしっくり来た。
『嬉しい……』
ゴズメルの胸に顔を隠しながら、リリィはそう呟いた。気持ちいいより苦しいだろうに、『もっと私を押し潰して』などとねだる。
狭いところに入りたがる猫みたいに可愛い。そう思う反面、きっとリリィも寂しかったのだろうと思った。ゴズメルにぺちゃんこにされながら、安らいだように笑っていた彼女が、今はひどく恋しい。
「うあぁ……っ、あ、あ、リリィ、リリィ……」
リリィの存在を意識すると、腰の振り方が荒々しくなる。足腰の筋肉が悲鳴をあげていた。寝床にほんのりと漂う残り香が鼻先をかすめ、もう腰が止まらない。
「リリィ、いく、いく、イッちまう……あ、おああっ」
もう一息、というところでビキッと腰に衝撃が走る。攣った。
「ひーっ・・・!」
痛すぎて尻の筋肉の感覚がない。ゴズメルは自分が肉屋の天井にぶらさがっているソーセージになった気がした。背骨から肉がぶらぶら吊られている気がするのだ。『安静にしててね』というリリィの言葉が脳に蘇ってくる。
(うえーん、オナニーもまともにできないよー! スッキリしたいのにー!)
頭の中ではジタバタと四肢を動かして駄々をこねているのだが、実際には「ア、ア……」とピクピクしているだけだ。その時、小さな足音が聞こえなかったら、否応なしにふて寝していたかもしれない。
「…………!」
入口にかかった布をめくって中を覗き込んできたのは、二人の若い娘だった。ゴズメルと同じように褐色の肌を持ち、くしゃくしゃの髪の左右から角を覗かせている。
「ゴズメル姉……ッ……」
喋る途中で舌を噛んでしまったようだ。名前を呼ばれたゴズメルはきょとんとする。
二人はリリィに頼まれて、ゴズメルに食事を運んできてくれたのだった。
石の器に、団子にした芋が山と盛られている。二人は変な体勢のゴズメルのからだを解きほぐし、芋を口まで運んでくれた。ねっとりした芋に、ぷちぷちと虫の触感が混ざって美味しい。芳醇な香りがするのは、香草が混ぜてあるのだろうか? どことなく懐かしい味わいだ。
ゴズメルが親切な二人に名前を尋ねると、彼女たちはナギとムクゲと名乗った。
「やっぱり、リリィさんの言っていたとおり、ゴズメルお姉ちゃんは記憶をなくしてしまったんですね」
「う、うん……。ごめんね。それじゃあやっぱり、あんたたちはあたしの……」
「親戚です。お山がなくなる時、私たちとお姉ちゃんは知り合ったばかりだったけど、一緒に遊んでもらっていました」
喋るのは姉のナギばかりだ。妹のムクゲは、舌を噛んでからずっと黙りこくっている。なんだか表情も暗いので、ゴズメルは心配になってしまった。
「舌が痛いのかい? 水を飲んだらどうだろう……」
勧めてみたが、ムクゲは泣きそうな顔で首を振った。不安そうにナギの腕にくっついている。
「種族語を取られてから、ずっとこうなんです」
「シュゾクゴを……取る……?」
「はい」
ナギは妹を撫でながら「もともと私たちには私たちの言葉があったんですけど」と、経緯を説明した。
カトー率いる冒険者協会の襲撃に遭ったミノタウロス族は、必死に戦ったのだが負けてしまった。それでも何人かが踏みとどまって守ってくれたおかげで、ナギとムクゲたちのように後衛にいた者たちは地下へ逃げられたのだと言う。
神殿のある最下層へ、最下層のさらに地下、芋掘りの穴へと逃げ込んだ。山を襲う恐ろしい轟音を、仲間たちと身を寄せ合って耐えた。だが、本当に恐ろしかったのは、あたりが無音になってからだ。
様子を確かめるために穴の外に出ようとした彼らは、飛び込んだ穴がふさがっていることに気がついた。
「閉じ込められたのだと思って、本当に怖かった。もしもあの時リリィさんが一緒にいてくれなかったら、私たちは気が狂ってしまっていたかもしれません」
補助魔法でその場を照らしたリリィは、ミノタウロス族を元気づけてくれた。
『後ろに戻れないなら、前に進むしかないわ!』
力自慢のミノタウロス族は、みんなで力を合わせて穴を掘り進めた。どうにか水のある空間に出た時はホッとしたけれど……その時、歓声をあげようとしても、口から慣れた言葉が出てこないことに驚いた。
「びっくりしました。地上のひとたちが喋るような言葉しか話せなくなっているんです。……今も、なんだかゾッとしています。すみません、地上のひとを悪く言うつもりはないんですけど、自分がすごく気取った、整いすぎた言葉を使っているような気がして、落ち着かないんです」
話しながら思い出すのだろう。ナギはムクゲと一緒になって涙ぐんでいた。
「そのうちリリィさんのおじさまが助けに来てくれて、ここでの暮らしはとても良くなりました。少なくとも、生活していくことはできます。でも……」
取られた言葉は戻ってこない。ナギも、流暢に喋っているようではあるが、たまに言葉が出てこなくなってしまうことがあると言う。
「おじさまは、そもそも独自に言葉を発達させすぎたのが良くなかったと言っていました。この世界は言葉でできているから、変わった言葉を使いすぎると、腐食が起こりやすくなるんだって」
「ふしょく……?」
「ああ、ええと、すみません、私の言葉は変ですか? 腐ること……腐食してバグが生まれる、それが魔物になるって、おじさまは言っていました。そのおかげで強くなったとしても、悪い苔の病も引き寄せるのだと」
「…………」
ゴズメルは沈黙した。わからないことだらけだが、ミノタウロス族が種族語を奪われたことはハッキリしていた。ナギが心配そうにもう一度「私の言葉は変ですか」と尋ねる。ゴズメルは「ううん!」と力強く首を振った。
「全然、変じゃないよ。あんたは説明が上手だね、ナギ」
ナギの強張った笑みに、ゴズメルは胸が痛んだ。
たとえそれが正常化する意味を持っていたとしても、使い慣れた言葉を奪われるなんてどんなに辛いことだろう。
会話が不便なのはもちろん、複雑なことも考えられなくなってしまう。心の拠り所を失うのと同じだ。
(あたしがずっと不安だったのも、記憶喪失だけが原因だったんじゃないかもしれないな……)
喋れなくても、ぬくもりは感じる。ナギにくっついて小さくなっているムクゲの頭を、ゴズメルはよしよしと撫でた。
ムクゲはもともと好戦的な性格だったに違いない。目をキラッとさせると、子猫がじゃれるみたいにゴズメルの腕に絡んできた。石の皿が寝床にひっくりかえる。
「おっ、おっとと……」
「し、死合っ……!」
また舌を噛んでいる。種族語を喋ろうとすると、自然と口が閉じてしまうようだ。ぺっぺっとベロをひっこめると、ゴズメルに無言で挑みかかってきた。ストレスが溜まっているのだろうが、絡まれるほうはたまったものではない。
「ぎゃーっ! 治ってからにしてくれよお!」
「フーッフーッ」
「ムクゲ、落ち着いてよ」
寝床でドタバタじゃれあっていって、ゴズメルははたと気づいた。
「……!?」
攣った衝撃で気づかなかったが、脚の間に途轍もない違和感がある。「ちょ、ちょっとタイム!」ナギがムクゲを取り押さえている間、ゴズメルは自分の股を手で確かめた。
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