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入院タイヘン記①〜虚血性大腸炎による入院体験記〜

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注)血便などのワードがたくさん出てきます。





医師は言った。

「これは入院になりますね。できれば一週間」

だが私は断った。

「入院は無理なんです。子どもをみる人がいないので」

絶句する医師、看護師。

その顔にははっきりと「正気かコイツ」と書いてある。

私は続けて言った。

「主人は子どもにご飯を用意したこと、一度もないんです」

苦笑する医師、看護師。

同情と驚きの入り混じった笑みであった。

結局私はこの後、二泊三日の入院生活を送ることになる──





昨年九月のことである。

世間では早くもインフルエンザが猛威をふるい出した。

長男の小学校でも休校措置が取られ、休校が明けたとたん長男が感染。次男、私と次々に感染し、やっと治ったかと思いきやまた何らかの感染症らしきものに三人とも感染した。次男に至っては挙げ句の果てに喘息症状が出る始末。

おかげで三週間近くも家の中に閉じ込められるハメとなる。

そして十月に入り、やっと長男が登校を始めた矢先、私の消化器官に異変が起きた。

夕食後のことである。突然腹が痛みだし、私はトイレに駆け込んだ。

このところ家の中ばかりで運動をしておらず、そのせいで便秘になっているのかもしれなかった。

便座に座って頑張っていると、体内に何かの衝撃を感じた。

下痢と共に血便が出たのである。同時に猛烈な吐き気。

私はなんとかトイレットペーパーを使い、トイレから這い出て床にうずくまった。

明らかに血圧が急降下した感覚である。

陣痛レベルの腹痛の中考えるのは、腸の粘膜が剥がれたのかもしれないということ、救急車を呼ぶべきかどうか、そして流しに重なる汚れた食器のことであった。

この痛みと出血は一体全体なんなのか。

そういえばかつて、コろナ禍の自粛生活で同じような症状に見舞われた芸人の記事を読んだことがある。彼は運動の重要性を説いていた。

病名はたしかナントカ腸炎だったような……。

そう思いネットで関連ワードを入れて検索すると、「虚血性大腸炎」というのがヒットした(ちなみにその芸人は鉄拳であった)。

「虚血性大腸炎 自然治癒」と検索すると、軽症ならば安静にしていれば治ると書かれている。

が、自分が軽症なのか重症なのかもわからないままに自己判断するには危険すぎた。

そもそも激しい痛みが全く引かない。引く気配もない。

すぐにでも病院に行きたいところだが、夫は夜中にならないと帰ってこないし、子どもを置いていくわけにも行かないしで、結局は痛む腹を騙し騙し食器を洗い、子どもの世話をし、風呂にも入らずに布団に入った。

食器を洗ったことでいくぶんスッキリしたけれど、横になっても眠れず、結局朝まで一睡もせずのたうちまわりながら朝を迎えた。

翌朝、長男を登校させ、でも次男は喘息の症状が強いので休ませ、夫を叩き起こし近所のクリニックに連れて行ってもらう。

事前に調べたところ院長が消化器内科の専門だとわかったので、きっと対応してくれると思ったのである。

ところが。

受付に症状を伝えたとたん、「看護師が対応します」と言われ看護師が出てきた。

どうも私の症状はそのクリニックで診るには重すぎたようだ。

一番近い、おそらく対応してくれるであろう病院を教えてもらい、さっそく向かった。

もちろん腹は依然として下のあたりが痛むままである。

ここでは三十分以上待たされることとなる!

もう、夫の帰りを待ってすぐに救急車呼んじゃった方が良かったんじゃないかと少し後悔した次第である。

医師に症状を話し、CTを撮ることに。CTは初めてであったからドキドキした。

その後、診察室で説明を受けた病名はやはり「虚血性大腸炎」。

ほら当たってたぜ! と少し嬉しかったが、喜ぶのもどうかと思ったので必死に真面目なフリをして聞いていた。最悪精神科まで受診させられてしまう。

そして冒頭のやりとりが行われるのである。

入院だと?! しかも一週間も!

最悪の結果になってしまった。

この日の夫は昼過ぎから仕事があるのである。

休んでもらうにしても、次男はまだ私がいないと泣くこともあるし(もう四歳なのに)、これまで家事を夫がやったことはない。

長男の学校のアレコレもしなければならず、不安要素が多すぎる。

今すぐにでも帰りたい気分である。特に次男は喘息が苦しそうなのだ。

「とりあえず止血剤の点滴を打ちますから、その間にご家族と電話してみてください」と至極もっともなことを言われたので、その通りにした。

ベッド上で点滴を受けながら駐車場で待っているはずの夫と電話する。

「えー入院? 俺今日仕事休めんから帰ってきて」

説明したとたん、予想通りのセリフが返ってきた。次男の泣き叫ぶ声も聞こえる。

うん。やっぱり帰ろう。

「帰ります」と看護師に言うと医師がやってきて、「せめて出血が止まるまでうちにいてくれないと困る」と心底困ったようにおっしゃるので、可哀想になりまた電話。

すると今度は「一泊と言わずゆっくりしてきなよ~」と、別人格が乗り移ったかのように百八十度言うことが変わっていた。

よくわからないが入院できるようになった。メデタシ。

続く。
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