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第10話 最近は毎日が充実しています

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今日僕はヴェーラさんの診療所にお邪魔している。
そして今は必死にネズミに対して治癒魔術の練習をしている。
ちなみにこのネズミの名は『う』
ネズミレースの競走鼠?である。チンチラ並の大きさでこうやって見るとかなりキモイ。

体内魔力を使うのではなく外の魔力を使うという点で多少苦労はしたがすぐに習得は出来た。やっていることは普段とあまり変わらない。患部に綺麗な魔力を通して傷を修復する。普段僕が使っているものより効率は良いが治りが遅い。

「はぁー、私それできるのに2年かかったのよ?ホント才能って恐ろしいわねぇー嫌になっちゃう。」
と今日は僕を膝に乗せお腹を後ろからさすりながら呟く。もう少し上触ってきたらこの肘ぶつけてやろうかな。

そもそも魔術と魔法は似ているが別物。魔法は魔術よりもずっと次元が上のことをしているとのこと。そのため魔法を1度でも使えば感覚的に魔術の習得もできるのだとか。ただ如何せん魔法を使える者は多くはなく、こうして魔術が口伝で習得できるのとは反対に魔法は一部の習得者が技術を秘匿し続けているらしい。

そして生活魔術、主に水を出したり火を出したり清掃クリーンなど人類を支えている技術の1つだ。僕はサルサがやっているのを見てずっと真似をしようとしていたが僕の魔力の性質のせいで一生できないと思っていた。が、それ以前の問題だった。これも1日でなんなくクリア。

「お腹うっすいわねぇ~、ちゃんと食べてる?それに同居人の冒険者大丈夫なの?サルサって果断のサルサでしょ?」

「何その二つ名。かっこよ。」

「噂によるととにかく決断が早くて冷酷なの。何かあったら直ぐにパーティーを抜けるしダンジョン内で重傷者が出ても一瞬で躊躇わずに切り捨てる。2ヶ月くらい前かしら、臨時でパーティーを組んで深層ダイブしたそうだけど結局サルサだけが無事に帰ってきたって言うじゃない。それもあって冒険者達からは少し煙たがられてるらしいわよ。」

「ふーん。」

「ただ、サルサが所属していたパーティーに問題があったのも事実なのよね。男女関係や取り分。サルサは斥候だから前を張っていて、それなりに危険も伴うはずなのに大体を無傷で切り抜けてしまう。特に若い子達はそれのありがたみに気付けずに取り分で揉めることも多かったらしいわ。結局サルサが抜けたパーティーは全て問題が発覚している。最近の深層ダイブ失敗にしてもダンジョンから血濡れで出てきたサルサを見たって人もいるしね。なんというか運が無いのよね。」

それであんなに傷だらけだったのか。
それにしても果断、かぁ。もし僕が今後何かあって使いものにならなくなったらちゃんと切り捨ててくれるのかな。迷惑はかけたくないし。あとどさくさに紛れて人の頭に自分の頭を乗せるのはやめて欲しい、重い。

「それで?サルサとはどんな生活してるの?」

「どんなって普通ですよ?朝起きて朝食軽く作って一緒に家を出て。家帰ってサルサが帰ってくる前に掃除してご飯作って一緒に食べて。その後ナイフの訓練して水浴びて武器の手入れして一緒に寝る。こんな感じですかね?」

「それあまり普通って言わないわよ。シオくんが全部やってるじゃない。それにしても至れり尽くせりで本当に羨ましいわね。私もシオくんにお世話されたいんだけど。やっぱり家《うち》に来ない?」

「遠慮しておきます。僕にはサルサがいるので。」

「うわぁーんお姉さんフラれちゃった~、ねーそこの男の子~私の事慰めて~」

「なんですかその二重構え、てか離してくださいよっホントにっッ!力強くないッ?頬ずりやめて!ね、ホントにやめて!!そこ手入れるな!!!」

こうして僕は家路に着く。


こういう日診療所はどうしてるのかって?
普通に閉じてるよ?もし患者が来たら?
まぁあれだ。
運がなかったと思ってくれ。
ここは闇医者、そういうこともあるもんだ。

僕の名はシオ。

明日をも知れぬ闇医者さ。
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