11 / 29
第11話 戦闘開始
しおりを挟む
朝早くローラント地方軍とゴルゴダルラ軍が対峙している。もっともローラント地方軍のは両脇を川と山、背後にクレートの町。前方には柵と杭。そのさらに前方に多数の溝が掘ってあった。杭の後ろに弓兵、柵の後ろには剣兵と槍兵。
「背後にクレートの町とシドル将軍の騎兵がいるから背後からは攻められないはず。周辺も斥候《せっこう》部隊で調べてある。伏兵もいない。ざっと数えた感じ報告通り三万弱か、この様子なら別動体はないな」
ルークスは各将兵に命令した。
「一騎討ちは禁止とする。戦利品や捕虜を獲ろうとして隊列を乱した者は、縛り首で処刑する」
戦闘が始まった。お互いの弓兵の撃ち合いから始まった。この射撃戦は一方的な展開になった。まずローラント地方軍の方が高所にいる。加えて弓兵ならローラント地方軍の方が人数も多く錬度も高い。その上、掘られた溝が邪魔で足場が安定しない。次々とゴルゴダルラ軍の弓兵は犠牲になっていった。
その様子を見ていたゴルゴダルラ軍の騎兵は苛立った。そしてまもなく指示がないのに勝手に突撃を開始した。
ルークスは内心困惑した。
「ゴルゴダルラ軍の命令系統はどうなっているんだ?」
小声で呟いたので誰にも聞かれなかった。ルークスは次に目を疑った。ゴルゴダルラ軍が逃げ惑う弓兵が邪魔になったのか、馬で轢き殺すか、切り殺しながら斜面を進んできたからだ。
「自国の兵ではないのか?」
ルークスは疑問に思ったが、今考えることは勝利であって分析は後だ。
無秩序に突撃しているゴルゴダルラ軍騎兵。だけどその勢いは続かなかった。ローラント地方軍の前に足止めの溝が掘ってあったからだ。
「そう言えば夜に雨が降った形跡があるな」
ぬかるんだ地面に足をとられて重装備のゴルゴダルラ軍騎兵は身動きがとれなくなっていた。そこへローラント地方軍の弓兵は攻撃を集中した。中には溝を突破した騎兵もいたが、杭で守られた弓兵には攻撃できなかった。仕方なく中央の剣兵と槍兵の部隊に突入した。しかし、劣悪な地面、両側からの矢の雨のせいで肉薄する頃にはボロボロの有り様。騎馬突撃の衝撃力はもはやどこにもなかった。一方ローラント地方軍はそんな騎士を馬から引き摺り下ろし、作業のようにあの世へ出荷していった。
「この状況を見てどう動く?」
ゴルゴダルラ軍は騎兵突撃の第二波目を敢行した。結果はさっきと一緒であった。そして次に第三の突撃をしてきた。
「騎兵突撃こそが騎士の戦い方であり、また最上位の戦法だと信じている。……とは聞いていたがこれほどか。信用しているというよりは盲信しているという感じだな。おそらく今まで騎兵の突撃だけでなんとかなっていたのだろう」
ルークスはこの情報を聞いた時に今回の作戦を考えた。
ゴルゴダルラ軍は失敗する突撃を四回、五回、六回とやってきた。
「さすがに何か策を考えると思ったが……。今までの成功で新しい作戦を考えられない状態か」
突撃の回数は十回に達した。結果はもちろん第一回からの繰り返し。
十六回目の突撃に失敗した時に変化が起こった。ついにゴルゴダルラ軍が退却を開始した。
「追撃部隊!ゴルゴダルラ軍を追撃開始。ただし伏兵には注意だ。それと討伐よりは、武器や食糧の回収を目的にせよ」
ルークスは追撃の命令を出した。
「我が軍の犠牲者は?」
「約千名ほど。内訳は死者数と負傷者で半々です」
「ゴルゴダルラ軍は?」
「暫定ですが死傷者一万八千、逃亡三千、退却七千」
キルレシオに換算したら一対二十近いな。一応快勝かな?それがルークスの感想だった。
「回収部隊、死体から武器や防具。それとフリーになっている馬を回収だ」
「は」
「味方はともかく敵兵の死体は一ヵ所にまとめて焼き払うか」
放置したら病気の元だ。戦後処理が一通り終わる。
「みんな良く戦ってくれた。今日はもう大丈夫だろう」
ワインを振る舞うことを告げるとルークスの発言に兵士が歓声を挙げた。
「背後にクレートの町とシドル将軍の騎兵がいるから背後からは攻められないはず。周辺も斥候《せっこう》部隊で調べてある。伏兵もいない。ざっと数えた感じ報告通り三万弱か、この様子なら別動体はないな」
ルークスは各将兵に命令した。
「一騎討ちは禁止とする。戦利品や捕虜を獲ろうとして隊列を乱した者は、縛り首で処刑する」
戦闘が始まった。お互いの弓兵の撃ち合いから始まった。この射撃戦は一方的な展開になった。まずローラント地方軍の方が高所にいる。加えて弓兵ならローラント地方軍の方が人数も多く錬度も高い。その上、掘られた溝が邪魔で足場が安定しない。次々とゴルゴダルラ軍の弓兵は犠牲になっていった。
その様子を見ていたゴルゴダルラ軍の騎兵は苛立った。そしてまもなく指示がないのに勝手に突撃を開始した。
ルークスは内心困惑した。
「ゴルゴダルラ軍の命令系統はどうなっているんだ?」
小声で呟いたので誰にも聞かれなかった。ルークスは次に目を疑った。ゴルゴダルラ軍が逃げ惑う弓兵が邪魔になったのか、馬で轢き殺すか、切り殺しながら斜面を進んできたからだ。
「自国の兵ではないのか?」
ルークスは疑問に思ったが、今考えることは勝利であって分析は後だ。
無秩序に突撃しているゴルゴダルラ軍騎兵。だけどその勢いは続かなかった。ローラント地方軍の前に足止めの溝が掘ってあったからだ。
「そう言えば夜に雨が降った形跡があるな」
ぬかるんだ地面に足をとられて重装備のゴルゴダルラ軍騎兵は身動きがとれなくなっていた。そこへローラント地方軍の弓兵は攻撃を集中した。中には溝を突破した騎兵もいたが、杭で守られた弓兵には攻撃できなかった。仕方なく中央の剣兵と槍兵の部隊に突入した。しかし、劣悪な地面、両側からの矢の雨のせいで肉薄する頃にはボロボロの有り様。騎馬突撃の衝撃力はもはやどこにもなかった。一方ローラント地方軍はそんな騎士を馬から引き摺り下ろし、作業のようにあの世へ出荷していった。
「この状況を見てどう動く?」
ゴルゴダルラ軍は騎兵突撃の第二波目を敢行した。結果はさっきと一緒であった。そして次に第三の突撃をしてきた。
「騎兵突撃こそが騎士の戦い方であり、また最上位の戦法だと信じている。……とは聞いていたがこれほどか。信用しているというよりは盲信しているという感じだな。おそらく今まで騎兵の突撃だけでなんとかなっていたのだろう」
ルークスはこの情報を聞いた時に今回の作戦を考えた。
ゴルゴダルラ軍は失敗する突撃を四回、五回、六回とやってきた。
「さすがに何か策を考えると思ったが……。今までの成功で新しい作戦を考えられない状態か」
突撃の回数は十回に達した。結果はもちろん第一回からの繰り返し。
十六回目の突撃に失敗した時に変化が起こった。ついにゴルゴダルラ軍が退却を開始した。
「追撃部隊!ゴルゴダルラ軍を追撃開始。ただし伏兵には注意だ。それと討伐よりは、武器や食糧の回収を目的にせよ」
ルークスは追撃の命令を出した。
「我が軍の犠牲者は?」
「約千名ほど。内訳は死者数と負傷者で半々です」
「ゴルゴダルラ軍は?」
「暫定ですが死傷者一万八千、逃亡三千、退却七千」
キルレシオに換算したら一対二十近いな。一応快勝かな?それがルークスの感想だった。
「回収部隊、死体から武器や防具。それとフリーになっている馬を回収だ」
「は」
「味方はともかく敵兵の死体は一ヵ所にまとめて焼き払うか」
放置したら病気の元だ。戦後処理が一通り終わる。
「みんな良く戦ってくれた。今日はもう大丈夫だろう」
ワインを振る舞うことを告げるとルークスの発言に兵士が歓声を挙げた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
裏アカ男子
やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。
転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。
そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。
―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる