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第8話 クレートの町

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 使用人達を雇った翌日。ルークスはシドルとクレートの町に来ていた。

「ルークス殿、クレートの町はどうですかな?」

「町の感想としては空き家が多いですね。最前線の町なんだから当然と言えば当然ですけど」

「なるほど確かにそれは否定できませんな。荒れているとまでは言いませんが手入れをしてない農地もありますから」

「ただ防衛拠点としては都合がいい地形なので少し安心しました」

「と言うと?」

「ゴルゴダルラ国の領土までほぼ一本道、背後からの強襲は警戒しなくていいだけでも防衛は楽になります。側面を川、もう一方の側面は森林、背後にクレートの町で防御陣地を築けば戦闘は我々に有利に展開できるでしょう」

 二人はクレートの町を下見をしたので訓練場に戻った。シドルとしては下見ではなく見回りであったが。訓練場に戻ったらベン・ルビン会長が来ていた。

「鐙《あぶみ》の初回生産分を持って来ました」

「どのくらい?」

「とりあえず三百ほど」

「シドル指揮官どうします?一応千個は注文してありますが、追加しますか?」

「……うーん、追加注文したいのは山々だが予算の会議も何もしてないからな。値段次第では返答が……」

「……確かに独断で予算の内容を変更は問題になるかもしれないか。現状は鐙は確保が優先ではありますが、緊急ではないので後日注文すればいいでしょう」

「そうだな」

「それに」

「それに?」

「ルビン会長。鐙の生産に十分な職人を確保できてます?」

「十分な量の定義にもよりますが、何せ初めてのことですからそんなに多人数ではないですな」

 つい先日製造開始した物がいきなり、大量生産開始なんてできるわけがない。しばらくは試行錯誤しながらになるのは当然だ。さすがに前世でも作ったことはないしな。見たことはあるけど。

「ルビン会長。クロスボウと長弓《ロングボウ》とスコップは確保できてる?」

「そちらは問題なく」

「スコップ?」

 シドル指揮官が怪訝な顔をしている。

「ルビン会長」

「なんでしょう?ルークス様。」

「クレートの町近くの農地を購入して欲しい。最前線の町の農地だから安く買えるはずだ。誰も手入れしてない荒れている農地もあるからな」

「それは構いませんが……ルークス様名義でよろしいので?」

「ああ、それとスコップと鋤や鍬もクレートの町に送っておいてくれ」

「なるほど」

 シドルが納得したのか呟いた。

「ところで鐙は誰から使用というか訓練を開始します?」

「まぁ順当に行けば騎兵隊からだが……」

「……私はこの地に来たばかりですから、その辺はおまかせしますよ。誰が何を得意なのかは何も知りませんので、ただ情報はあった方がいいので聞いただけですので……という訳で今回到着した鐙は全てシドル将軍にお渡しします。使ってみたいという兵士がいるなら後で感想を聞けばいいですし、馬の体格にもよるので」

「そうだな。兵士に使わせて、感想を聞くとしよう」

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