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第3章 従魔研編
104.二人の告白
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「ゼン、朝の事はすまない!」
帰って来るなリ土下座されて、ゼンはその、子供に土下座する女戦士という構図が余りにもみっともない気がして、一緒にいたリーランとロナッファの腕を取り、無理矢理二階に上がって彼女達の部屋に押し込んだ。
「……話はここで聞きます。土下座はいりませんから」
いつの間にか家具に高級なものが増えている獣王国組の部屋は、それ程女の子らしい部屋ではないのだが、どこかしら自分の部屋とは香りが違い、ゼンを落ち着かなくさせる。
対面のソファで縮こまっているロナッファを、リーランが勇気づけている。
「ロナ様、さっきのを、土下座なしで言えばいいだけですよ!」
「う、うむ。朝の事で詫びたいのだ。本当にすまないと思っている!」
座りながら、眼前のテーブルに額をつきそうになるまで頭を下げているロナッファを見て、ゼン心中では密かに溜息をつく。
「……あれが、獣人族の流儀や常識なら、謝る必要はないのでは?」
「いや、違う。ああいう事をしていたのはずっと昔の話だ。わ、私がそれを持ち出したのは、私には、女としての魅力が乏しいから、ゼンに振り向いてもらえないと思ったからだ」
「……え?」
ゼンが疑問の声を思わず上げたのは当然だ。ロナッファは、外見的に言えばとても華々しい美貌の持ち主で、一見すると武人には思えない程に可憐だ。
実際に、獣王国での周囲の人気は高く、男女ともに憧れる者が多い。
対比に持ち出すのは可哀想なのだが、リーランをまだ咲き始めの蕾の花とするなら、ロナッファはすでに満開に咲き誇った大輪の薔薇、とでも言うべき存在なのだ。
とても女としての魅力が乏しい等とは言えないだろう。
隣のリーランが微妙な表情をしているのはそのせいだ。
「わ、私はデカいし、大柄で、がさつだ。自分でも自覚はある。それに、年の差もあって、きっとゼンの好みには合わないだろう。それでも私はゼンが好きなのだ!」
「………」
ここまで率直に言われたのは、余りないような気がする。いや、ハルアの「結婚して」があったが、「結婚」と「好き」は、結婚の方が重大な話なのに、感情表現の「好き」の方が心に突き刺さるものがあるのは、ゼンがまだ若いせいだろうか。
「確かにきっかけは、模擬試合に負けた事が始まりだったが、ゼンは私よりずっと大人の、器の大きな人間だと思う。自分が不利な状況の戦いでも諦めず冷静に判断し、それをくつがえせる不屈の闘志。
戦い以外でも、常の周りの者を思いやる心を忘れず、目上の者を敬い、だからお前を慕う者は数多くいる。
そんなゼンが、私はとても口では表せない程に好きになってしまったのだ、だから――」
「褒め過ぎ。俺はロナ…が言うような偉い男でも、強い男でもないよ。弱いからこそ、色々考えて、それを何とか補っているだけで…」
ゼンはロナの発言と中断させてまで割り込んだのは、余り面と向かって褒められるのに慣れていないせいもあるし、それが過大評価だと思うせいもある。
「それで、いいではないか!私も、多少多少は強くなったと慢心していた。上には上が、いくらでもいると言うのに。だから、ゼンの様に、ただ腕力だけではない強さでそれを補うのはとてもいい事だと、私は思うのだ!」
「そういう風に全肯定されると、面映ゆくて困るのだけど……」
ゼンは元来照れ屋な所がある。率直過ぎて頬が赤くなるのを隠せない。
「困る事などない!そ、そういう奥ゆかしい所も、私はとても好きだ!」
ロナッファは、ゼンの様子に好感触を得たと思い、駄目押しの様に自分の心を明け透けに告白する。
「……謝罪の気持ちは分かりました。許すとかそんな偉そうな事を言う気はないし、そこまで怒っていた訳じゃないから、もう前の通りでいいです」
これ以上問答をしていると、「好き」と「褒め」を繰り返されるだけだと気づいたゼンは、とりあえず、ロナッファの謝罪を受け入れ、その長く続きそうな連鎖を止めた。
「……俺は、旅の途中で、ある貴族に、「うちの下女と寝て、種を残せ。流水の剣士の子なら、護衛として少しは使えるガキが産ませられるかもしれんからな」と言われた事があります。
当然、その貴族はぶっ飛ばしましたが、そいつは師匠にまで苦情を言いに来て、同じ事を言っていたので、更に死ぬ程殴られていましたが」
ある意味、勇気ある馬鹿貴族だ。“あの”ラザンに喧嘩を売れる程に突き抜けた馬鹿は、そうそうはいない。
「それと、修行途中、睡眠(スリープ)魔術の罠(トラップ)にはまり、妙な生物実験をしている魔道士に捕まって、精子採取されそうになった事もあります。
それも、気が付いてすぐに(従魔の助けで)脱出して、その研究所は再建不可能なぐらいに破壊して、当人にも同じような目に合わせました。
だから、という訳でもないのですが、ロナの言い分には、それらと重なるものがあったので、つい大人げなく……俺、子供だからそれでいいのかな?まあ、ともかく、そういうのもあって、必要以上に腹が立って、約束を反故にしてしまってすみませんでした」
ゼンは“気”の指導の事で謝罪した。
「い、いや、ゼンが謝る事はない!私が無神経だったのだ!」
「そうです。ロナ様は時々驚くほど無神経です」
リーランは深々と実感のある肯定をする。
「そこで同意するな!」
「ロナ様の謝罪は済んだようなので、私の番にさせて下さい、師匠」
リーランはロナッファの抗議を気にする事もなく、やっと自分の出番だと、その存在を主張する。
「俺は君の何の師匠なのか、激しく疑問なんだけど、何の話?リーランに謝罪を受けるような事はされていないと思うけど」
「はい、謝罪ではなく、告白の方です。ロナ様はドサクサに紛れて、好き好き好き連発してましたから、私の方がオマケとして忘れ去れるのは、絶対に嫌なので!」
私はそんなに連発していない、と小声で呟くロナッファだが、確かに3回好きと言っている。
「……リーランを忘れ去るのは凄く難しそうだけど」
「それほど印象的に見てもらえているなら光栄です。
私も、師匠……ゼン、さんの事が好きです。改めて名前言うと照れますね。
きっかけがロナ様と同じでも、私の方が先なんですから!
それに、私もゼンさんが王都に滞在していた短い期間の間に、もっと好きになってしまいました。
ぶっきらっぼうなのに優しくて、意外と照れ屋で、自分を全然強いと思ってなくて、それなのにやる時はやる、みたいな、不言実行の出来る男の子で、だから私はもう旅支度を済ませて、あの時ついて行くつもりだったんですよ。
でも、ゼンさんもラザン様も、私が思っていたよりもずっと早くに王都から去り、追いかけようもなくて、あの時のお父様を一人放っておく訳にもいかず、こうして消息が分かって、お父様の許可もちゃんと得てこちらに来れたのです。
なので改めて、私、リーラン・レグナードは、あの時からずっとゼンさんをお慕いしておりました。家も国も捨てる覚悟があります。どうか、非才な私めを、おそばにおいて下さいますように、伏してお願い致したいと思っております」
中々に堂に入った、丁寧過ぎる見事な告白内容だった。恐らく、ずっとその時が来る事を考え、用意していたのだろう。
それでもゼンとしては、それにどう答えていいか、戸惑うばかりなのだが。
―――ゼンはしばらく考えてから、自分の“ある”話をする事にした。
「……子供の話が先に出ていたから、身内しか知らない俺の、“秘密”の話をしておくよ。相手のこういう事を知らずに恋愛話なんて出来ないと思うから。
……信じられないかもしれないけれど、俺には“スキル”がない。何にも、何一つとして持ってないんだ」
ゼンにとってはもう当り前の事なのだが、世間一般常識としてはあり得ないその話をするのは、二人の心変わりを期待しての事だ。
「スキルが、ない?しかし、ゼンはあんなにも強く、料理だって上手いではないか。あれは、研鑽を積んで料理補正とかに目覚めたからではないのか?」
「そんなのはない。俺はただ、全ての事を習い、覚えただけだよ。だから、本当ならその習得過程において、自分の覚えた技術に何かが加わるらしいけど、そんなのはないんだ」
「え……でも、そんな事って、あるのですか?スキルは、万人に等しく与えられる、神々の加護なのに……」
ロナッファもリーランも、とても信じ難い、と表情で語っている。
「うん。つまり、俺は神の加護も与えられない、どこかが変で、異常な体質の人間なんじゃないかな。高名な魔導士の人が、色々俺の身体や心を調べてくれたけど、何も分からなかった。
もっとも、スラムなんてよく“神々から見捨てられた地”なんて呼ばれているから、それに最も相応しいのが俺なのかも、とか思うよ」
ゼンは自嘲気味に笑う。
「だから、もし子供が出来たとしたら、俺のその、“無能力”な血を受け継いでしまうかもしれない。あるいは、半端なスキルしか所持出来ない、生まれながらに重いハンデを背負った子供とかが生まれるかもしれない。
それで俺は、自分の目の届かない所に、子供を作ろうなんて思わないし、自分の責任として、その子供がちゃんと独り立ち出来るようになるまでは、絶対に面倒見るつもりなんだ」
(でもそれ以前に、余り女性と付き合うつもりなんてなかった。絶対に不幸にしてしまう気がして……)
それでもそれは、ザラが救出出来た事で少しは弱まった感のある話なのだが。
「そういう、気味の悪い無能力な人間のガキの事なんて忘れて、国に戻って二人に相応しい、貴族や戦士を探した方が有益だと、俺は考える」
話の結論を出したつもりでゼンは話し、席を立とうとしたが、それは考えが甘かった。
「何言ってるんですか!スキルがないのにそんなに強くて料理も出来て多才なんて、あり得ない程の苦労をして成長している人を、異常だとか変なんて思いません!
むしろ凄いと思っていたのが、もっと物凄い人だったと見直したぐらいです!」
「うむ、そうだぞ。私達はスキルという神々の加護の底上げで強くなったり、技術を習得したりしている。それもなしで、いわばゼロからの技術習得、それで私と互角以上に渡り合える猛者を、どうして異常などとさげすめると言うのだ!」
二人とも、逆にゼンがもっと凄い苦労をして来たその事を褒めたたえている。
完全に逆効果だった。
なのでゼンはもう一つの話をする。
「……俺には、もうずっと昔から心に決めた人がいるんだ。だから、二人の気持ちは嬉しいのだけど、諦めて欲しい……」
二人はそれを聞いて、先程までの勢いはなくなったように思えた。
しかし―――
「その者とは、もう上手くいって、付き合っているのか?」
ロナッファは恐ろしく真剣な表情でゼンに問う。
「あ、いや、まだ告白も出来ていない、です。しても、うまく行かないかもしれない……」
それに気押され、つい本当の事を答えてしまう。
「なら、私は控えでも、いや、その者とうまくいったとしても、私は2番目、3番目以降でも構わない。気持ちが受け入れてもらえないとしても、傍にいさせてもらえないだろうか?」
「あ、はい!はい!私も、師匠が結婚されたとしても、諦められません。愛人でも妾でも構いません。どうかお傍に……」
まるでくじけない。
なんだか、ハルアとの会話を彷彿とさせるやり取りになって来た。
「いや、俺まだ成人してないし、愛人とか妾とか言われても……」
「近習としてでも、お仕えさせて下さい!」
「私は、お前達のパーティーやクランに参加してもいい!」
強過ぎる。二人に後退の選択はないみたいだ。
ゼンは、とにかくしばらく考えさせてくれ、と保留の逃げに出た。
とりあえずの時間稼ぎに過ぎないが、今すぐ何かを答えろ、と言われても、明確な答えなど出せるわけがない。
そうして、ようやく二人の部屋から出た頃にはとっくに夕食の時間になっており、ゼン達は、3人だけ遅刻の遅い夕食となった。
早い者はもう食べ終わっていて、3人はかなり目立っていた。
夕食に呼びに来なかったのは、何か大事な話中なのだと察せられ、遠慮されていたようだ。
リュウとラルクには、朝方の揉め事の件で謝罪されていた、と話し合いの一部だけを話しておいた。それであれ程長くなる事はないと分かっているようだが、誰もそれ以上は聞いてこないのが有難かった。
サリサは、思っていたよりも平然としていて、朝方睨んでいたのを忘れたような感じだ。
自己完結して許す事にしてくれたのだろうか?それなら良いのだが……。
ゼンは急いで夕食を済ませた。
いつも通りに美味しいとは思うのだが、二人の魅力的な女性の、熱烈で押しの強い告白に、さすがのゼンも平静ではいられなかった。
初めから知っていたのだから、今更言われても、普通に対処出来ると思っていたのだが、現実はそううまくは行かないらしい。
ずっと頭がグラグラ揺れているような感じで、とても食事を楽しめる余裕はなかった。
自分にそれ程の価値を見出せないゼンとしては、どうして自分なんかを好きになり、あれ程強くこだわるのか、今一つ理解に苦しむところなのだ。
それでもまだ、獣人族の価値観の最重要項目が“強さ”である事で、あの二人についてはまだ分かりやすい部分もある。
それはきっかけに過ぎず、とゼンの、彼女達が思う長所などを並べてくれたが、それらは別に、自分でなくとも他の人にも普通にあるように思えるのだ。
特に、優しい、というのは、ゼンにとっては人を気遣い、行動する事は、もう条件反射に近い、やっていて当り前の事で、それを優しい、と言われても、何故?と疑問符が並ぶ、不思議要素だ。
どうにもゼンは、“想い”の封印を解かれたせいで、今まで分かっていなかった、感じていても無視して問題にしていなかった様な、周囲の人の感情の機微などの情報がいっぺんに入って来るようになって、処理し切れていない状態だった。
戦闘のやり取り、駆け引きの方が余程に単純(シンプル)で、分かりやすい。
一つ所に定住しての日常生活。
そこで自分が人に好かれる、という、今まではよく理解出来なかった事が、うすぼんやりと分かってきた事で、ゼンの困惑は前より一層大きくなってしまった。
ある程度月日が経ち、それに慣れればゼンも落ち着くのだろうが、今は一度に色々な事が起きている。
従魔研での仕事。そこに関わる、自分に好意を持っているらしき女の子達。
獣王国からやって来て、前から自分を好きだったと言う美少女と、自分との勝負に負け、自分を好きになったと言う美女。二人とも無闇やたらと積極的だ。
そして、自分が想いを寄せていたと分かってしまったサリサとの微妙な関係。
自分が救出した、恩人のザラから寄せられるひたむきな想い。
それらが一つ一つ訪れるのなら、まだ何とか対処のしようもあるのだろうが、全てが今現在ゼンにのしかかっている問題だ。
もっとも、従魔研の3人に内ではハルア一人が結婚を申し出て来ただけで、他の二人には何も言われていないので、単にゼンの自意識過剰なのかもしれないのだが。
ともかく食事を済ませ、従魔二人に子供達の仕事ぶりなどを聞き、渡してある生活費で不足はないか、等の確認をして、ザラの所に行き、こちらも子供達の様子を聞く。
今のところは何の過不足もなく、子供達は家事の仕事に従事しているようだ。
むしろ、安心して住める場所にいて、危険のない仕事、充分な食事に風呂など、子供達にとっては今までの一日一日を無事に過ごせるか、食料や水の確保が出来るか、などのギリギリな生活を送っていた頃に比べれば、今は天国にいるようだ、と喜んでいる者ばかりだそうだ。
過去、スラムで過ごしていたゼンにも、その気持ちはよく分かる。
だがそれは、今だけの幸福かもしれない。
ゼンは冒険者だ。いつとも死ぬとも知れぬ。今は、迷宮や魔物討伐に出ていないが、そうした活動を再開すれば、命の保証などなにもない。
無論、ゼンとて死ぬ気など毛頭ない。生きる為に最大限の努力をするし、その為のクラン構想だ。信頼出来る仲間を集める事、それは、上級に上がれば欠かす事の出来ない要因になる。
それでも、絶対に死人を出さない、とするのは不可能だろう。その時犠牲になるのは自分かもしれない。冒険者とは、そうしたリスクを背負って巨額のリターンを期待する、そんな賭博士じみた危険な仕事を日夜こなすのが常なのだ。
それに、ゼンがスラムの子供全員を雇う事など出来ないし、そんな事をしても自己満足の偽善に過ぎない。だから、仕事をする事を覚えさせるのがここの役目だと思っている。
うまく行けば、後10名は雇い入れて、孤児院とここで子供達を分け合うような感じになる。
スラムでは、自分や従魔達の誰かを護衛につけるので、親や保護者のいない子供はなるべく孤児院に行くように説得している。
最初の6名の後、もう3名程追加で孤児院に連れて行った。
孤児院の経営状態は決して悪い様には見えなかった。もし悪ければ、それなりの寄付も考えていた。
ゼンが、ポーチ内にため込んでいる各種素材等は、餞別だとラザンに押し付けられたものもあって、王都のオークションに出した物以外もまだかなりの量が残っている。
ゼンの師匠のラザンは、『流水』で、もう達人級、もしかしたらそれ以上の域に到達した超人だ。『流水』は極めれば攻防一体の剣術。防具不用、剣一本あれば全て事足りる、素材や魔石での利益等はたまって死蔵するばかりになる。
日々の生活費等、その極々一部で充分贅沢な暮らしを、しようと思えば出来る。
だから、そのかなりの量を、ゼンはもらい受けている。多分、一生遊んで暮らしても使い切る事は出来ないぐらいの財産が、ゼンのポーチには眠っている。
その一部は、これからのクランで使われるだろう。
もし、ゼンが戦死するような事があれば、全てはゴウセルに譲られる。素材をため込んだポーチは小城の部屋に残してある。普段つけているのは、武器収納や、その他の道具、魔具他を収納し、もう一方はこれから集める素材用となっている。
ライナーに渡したのも合わせれば、計4つの似た様なポーチをゼンは持っていた。
パラケスが暇に飽かせてゼン用に造ってくれた物で、これだけでも付与された魔術のとんでもない効果で一財産になる。
それらを、ゴウセルがスラムの子供達の為に役立ててくれるだろう。
不吉な事を言っても仕方のない事だが、冒険者が遺書を前もって書いておくのは義務のような物だ。いつどこでそれが訪れるのか分からないのだから。
ゼンは、疲れた身体に鞭打って、無理に風呂に入ると、疲れ切った身体をベッドに横たえる。
今日は凄く疲れた。
特に、獣人族、二人の話を聞いたのがかなり過酷な(比喩)重労働だった。
何か、かすかな違和感があったのだが。それが何かを確かめる前に、ゼンは深い眠りについた。
だから、目を覚ました自分の手が、後ろにまわされて太い縄上の物で縛られ、更に念を入れたらしく腕も身体をグルグル巻きにされた縄で厳重に動かなくされていた。
自分の部屋の中。
本当なら強盗!とでも騒ぐところなのだが、目の前にサリサがいるので、どうやら強盗ではない事が分かる。
「……これなら、ゆっくり話し合いが出来るわね」
艶やかに笑うサリサに、ゼンは頭痛と目まいを覚えるのだった……。
*******
オマケ
ミ「狼とか虎とか、あたしは嫌いですの!」
リ「そうですね。『狼』とか虎とか」
ゾ「……一緒くたにされても困るんだが。そんな、冷酷非情な視線でこっちを見るなよな……」
ガ「冷血鉄血熱血……」
セ「まあ、気持ちは分からなくもないので、我慢してあげるしか?」
ボ「ゼン様、モテるのは仕方ないんじゃ?」
ル「主さま、モッテモテ~♪お?」
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