黒猫いちごと白猫ざくろの動物診療カルテ オスの三毛猫不知火編

プロローグ

マンションの５階のとある部屋。
窓辺に座った大きな黒猫が夕焼けで赤く染まる空をじっと見つめている。

　「コウモリがたくさん来たね。そろそろかな。」

ひときわ大きなコウモリが窓のそばまで来て綺麗な円を２回描いた。

　「ざくろお姉ちゃんポポーだ！仕事の依頼だよ。今夜２時だって」

　「いちご、でも今日はご主人が休日出勤で何時に寝るのか分からないわ・・・」

白い小柄な猫が弟である大柄な黒猫にさも困ったというふうに言った。

　「ヴヴヴヴ・・・ぐぬぬぬぬぬうううん」

いちごと呼ばれた黒猫は窓ガラスに右の前足を付け、不思議な声を出した。

再び大きなコウモリが近づいてきて先ほどと逆回転で３回円を描いて去っていった。

　「なんて？」
　「３時まで待つって。少し困ったような眼をしていたから依頼主は大物かもね」
　「とにかくご主人の帰宅を待ちましょ」

　ざくろと呼ばれる白猫は淡いブルーの目を半分閉じ何かを考えているようだった。