ドラゴンさんの現代転生

家具屋ふふみに

文字の大きさ
上 下
85 / 129

85話

しおりを挟む
夕食パートは割愛。因みにボウリングは最後の最後でスペアを取れたそうですよ。ヨカッタネー。

――――――――――――――――――― 

 茜に一日中付き添って遊んだ次の日。流石にそろそろ配信をした方が良いだろうということで、凪沙を含めた三人はダンジョンへと赴いていた。

「これが凪沙の初めての出演になるのかな?」

「写った事はある。でも顔を出すのは初めて」

【柊】の面々は配信で一度写った事があるものの、カメラの機能によって全てモザイク処理をされていた。故に凪沙の顔出しは今回が初めてである。

「じゃ、配信始めるよー」

 手馴れた様子でカメラを起動し、配信サイトとのリンクを確認する。
 そして無事にスマホで配信が開始されているのを確認し、カメラのレンズへと目線を戻した。

「久しぶり! 『柊ちゃんねる』の奏だよー!」

 :きちゃ!
 :マジでお久では。
 :それな。てか人増えてる?

 目敏く画面端に写りこんだ凪沙を見付けた視聴者のコメントを確認し、奏が凪沙を手招きする。

「気付いた人もいるね。今回から一緒にダンジョンに潜る事になった凪沙だよー」

「ん。よろしく」

 :クール系美少女きちゃ!
 :瑠華ちゃんとは違った方面のクール系。
 :以前ちらっとお菓子作り配信で出て来た子?

「そだよー。元々探索者に興味があったみたいで、夏休みだしやってみたいって」

「かな姉ばかり狡いから」

 :おっとぉ?
 :これは…あれですな?

「…自己紹介はこれくらいにして、そろそろ本題に入らんか」

「あっ、そうだね」

 :瑠華ちゃんもお久!
 :瑠華ちゃん目立つ容姿してるのに、目撃情報全く無かったから……

「む。それに関しては最近【柊】の子らと共に出掛ける事が多かったからじゃの。流石に邪魔されたくは無かったのでな。〖認識阻害〗を強めにしておったのじゃよ」

 :なる。
 :聞けば聞くほどチートだよなそのスキル……
 :〖認識阻害〗って何ですか?
 :おや初見か。
 :本当にその言葉通りの固有スキルだよ。人の無意識に無理矢理入り込むから、認識されてるけど認知されないみたいな状態に出来る……で合ってる?

「大方それで合っておるぞ」

 視聴者がかなり正確にスキルの概要を把握している事に内心驚きつつも、それをおくびにも出さずに肯定だけしておく。

「初見さんも増えたのかな?」

 :初見です。
 :初見!
 :サナちから来ました。

 夏休みという事もあって、同接数は以前配信した時よりも増えている。それに伴い初見である人も増加した様だ。更にその中には瑠華達が助け出した配信者であるサナから来たという人もいた。

「サナさんから来たって人もいるんだね」

「有難いことじゃな」

 そんな目的で助けた訳では無いが、それで名前が少なからず売れたというのは素直に嬉しい事だった。

 :今回は何処のダンジョンなの?
 :渋谷ダンジョンじゃないっぽい。

「あ、そうだよ。凪沙は初心者だから、流石にね……。とはいえ東京第三ダンジョンは変わり映えしないから、今回は別のFランクダンジョンに来てるよ」

「その名も平原ダンジョン……なんでこんな名前なの?」

 :それな。
 :安直過ぎんかwww
 :これは制度が悪かったんじゃ……

 そもそもダンジョンの名前を付けるのは一体誰なのか。それはそのダンジョンの第一発見者である。
 これはダンジョン協会で定められた制度なのだが……そのせいか、ダンジョンの名前には時たまおかしいものがあったりする。
 例に出すとその人の趣味や好み全開の名前であったり、或いは今回の様にダンジョンの特徴から付けられたり、地名や発見された順番からだったりと、正しく多種多様である。

「ふざけた名前とかあるの……?」

 :あるぞ。
 :これが意外と多いの笑うんだwww
 :【自分家じぶんち】とかあったな……

「……ほんとの自宅?」

 :それは無いwww
 :名付けた本人曰く、『実家みたいな安心感のあるダンジョンだから』とか言ってたな。
 :実家みたいなダンジョンとは?

「……瑠華ちゃん分かる?」

「何故妾に聞くのじゃ……安心感を得るダンジョンというのは、少なからず存在してはいるそうじゃよ。それには敵が出ない、もしくは出ても少数か敵性を持たない、といった特徴が当てはまるのう」

「……駄目元で聞いたらばっちり答え返ってきて困惑」

 :草。
 :なんかデジャブだなこれwww

 雑談はこれくらいにして、いよいよダンジョンへと足を踏み入れる。その先は東京第三ダンジョンのように洞窟が広がっている訳では無く、その名の通り見通しの良い平原が広がっていた。

「相変わらず不思議空間…」

「前の瑠華お姉ちゃん達の配信でも、似たような感じだったよね」

「だねー。まぁここはあそこ程敵も強くないから安心してね」

 :奏ちゃんが意外としっかりお姉ちゃんしてる…

「どういう意味かなそれ!?」

 チラリと見えたコメントに奏が噛み付いている間に、凪沙が瑠華の元へと駆け寄る。

「瑠華お姉ちゃん。私の役目は?」

「基本は遠距離支援という形を取ってもらう事にはなるが…まぁ今回も前回と同様に敵の脅威度は低いでな。案ずる事は無い」

「ん…」

 その言葉を聞いて少し肩の力を抜きつつ、自らの得物である弓の弦を引いて調子を確かめる。

「アレはまだ掴めそうにないかの?」

「うん…流れはするんだけど、形にならなくて」

 その会話の内容は、以前瑠華が凪沙に獲得するよう頼んだスキルについてだ。初めてダンジョンに向かってからというもの、【柊】の庭でも練習を重ねていた。しかし、数日で獲得出来るほど甘くもなかった。

「一先ずは現状のスキルを伸ばす方針が良かろうな。[速射]も十分強力なスキルじゃからの」

「ん。頑張る」

「…なんか私除け者にされてるし……」

 :草。
 :これは草。
 :奏ちゃんってやっぱり不憫枠というか…
 :意外といじられキャラな気がする。
 :瑠華ちゃんが手玉に取るのが上手すぎるというのもある。
 :間違いなくそれだわ……





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

底辺ダンチューバーさん、お嬢様系アイドル配信者を助けたら大バズりしてしまう ~人類未踏の最難関ダンジョンも楽々攻略しちゃいます〜

サイダーボウイ
ファンタジー
日常にダンジョンが溶け込んで15年。 冥層を目指すガチ勢は消え去り、浅層階を周回しながらスパチャで小銭を稼ぐダンチューバーがトレンドとなった現在。 ひとりの新人配信者が注目されつつあった。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...