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62話
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紫乃ちゃんが繰り出した二体の式神? が私の方へと飛び込んで来る。一体は狼型だから結構慣れた姿だけど、もう一方の鳥はちょっと不味い。だって私遠距離攻撃出来ないから、飛ばれたら攻撃手段が無いもの。
先ず対処するのは狼の方。何か特殊な動きは今のところ見られないから、多分ただの突進か噛み付き。それくらいなら…っ!?
「うっ…」
駄目だ牙が掠った。いつも通りに動いて躱してたら間に合わない。思ったより行動阻害ってきっつい…!
そして問題はそれだけじゃない。狼が過ぎ去った瞬間私の眼前に迫る白い羽が…あっ。
「はっ!?」
一瞬意識を失ったと思えば、次の瞬間には戦う前と同じ光景が視界に広がる。
「はい。お亡くなりになりましたね」
そんな軽く言う事じゃないと思うの…。
「奏様は遠距離攻撃手段をお持ちでは無いようですね」
「うん…まぁ持ってたとしてもこの状況で当てる自信は無いけど」
身体がかなり重いからね。多分簡単に見切られる。だからこちらから仕掛けるのではなくて、カウンターを狙う動きが最適だとは思うんだけど……
「無理ぃッ!」
攻撃が随分速いよ! 合わせられる訳ないじゃん!
「ふむ…身体の使い方が硬いですね」
「使い方? あっ…」
スコンと額に羽が突き刺さり何度目かの死に戻り。死ぬ瞬間は痛み無いのが幸いだわ…
「刀というものは腕で扱うものではありません。一つの攻撃は流れを持って行われます」
それは刀の使い方配信を見ていた時も言っていた気がする。でもその流れがよく分かんなかったんだよね。
「踊る様にというのは少々過剰表現ですが、感覚としてはそんなものです」
「踊る…」
私別に踊るのが得意とか無いからなぁ…あ、首切られた。さっきから鳥の殺意高いな!?
踊るとか流れるとか言われても直ぐに理解して動ける様になる訳が無い。うぅ…痛みがあるのはちょっと慣れたけど、何回も死んでると流石に気持ちが沈む。
「中々難儀しておるようじゃの」
「瑠華ちゃん!」
結構心がズタボロになり始めた時、来てくれた瑠華ちゃんを見て一気に落ち込んでいた気持ちが急上昇するのを実感した。我ながら単純だなぁ……。
「ふむ…式神よ、暫し離れよ」
瑠華ちゃんの言葉で、式神二体が私から離れる。あれ? これ紫乃ちゃんが出したやつのはずでは…まぁ瑠華ちゃんだし出来るか、うん。
「さて奏。状況はまぁ把握しておるが、一応奏の口から聞こうかの。何に詰まっておるのじゃ?」
「あっ、えっとね…紫乃ちゃんから身体の使い方が硬いって言われて、それで流れとか踊る様にとかって言われたんだけど…」
「その具体的な動きが分からなかったという訳じゃな」
「そーなの。むぅ……」
私の実力不足なのは分かるけど、ちょっと…いや大分悔しい。だってこの技量が無いって事が、瑠華ちゃんが使ってる薙刀と同格の武器持ってるのに使えないって事に繋がってるから。
「妾が見せても良いのじゃが…」
……うん、瑠華ちゃんが薙刀以外使えないはずがないもんね。刀だって当然使えるか。
「それは奏にとって糧になるかは微妙じゃな」
「そうなの?」
「奏は教えられるよりも、感覚的に動いて最適化した方が合っていると思うのじゃよ」
「最適化、か」
それは瑠華ちゃんがそれだけ私に期待してくれてるって認識でいいのかな。
「その認識で構わぬぞ」
「……瑠華ちゃんって考えも読めるの?」
「…まぁここは妾の思考空間じゃからの。そこに居る二人の思考を読む事などは造作もない」
……多分普段から考え読めてるんじゃないかな。あっ、顔逸らした!
「奏の本能に任せるのもありではあるが、一つ助言はしておこうかの」
「露骨に話逸らしたね……助言?」
「うむ。奏よ、“自ら動く必要は無い”ぞ」
「…ん?」
自ら動く必要は無い? それってどういう意味だろう……瑠華ちゃんの助言だし間違いは無いんだろうけど。
「では再開じゃ」
「ふえっ!?」
言葉の意味を考えていたら、無情にも瑠華ちゃんが再開を宣言して私の頭が首とおさらばする。ほんっとあの鳥許さん!
「自ら動く必要は無い…動きを、利用する?」
今の私は身体がかなり重くて速さが出ない。だから相手の攻撃を躱すのは正直言って難しい。とすれば敢えて当たる事で相手の力を利用するなら?
私に振り下ろされる爪を見ながら考える。あ…この爪、刀で真正面から受けたらどうなるんだろ。
でも動くには遅すぎて切り裂かれて死に戻り。……何となく見えた気がする。
「ふふっ…」
あっ、瑠華ちゃん笑ってる! 多分気付いたのかな?
向かってくる狼の動きを観察する。生き物では無いけれど、その動きは生き物にしか見えない。だからこそ、行動には何かしらの事前動作がある。この動きは……噛み付き!
さっきまではカウンターを狙って攻撃に合わせようとしてた。でも私にはそれは多分まだ早かったんだろう。だから―――カウンターの動きから、攻撃を抜く。
剥き出しの牙に刀を向け……よし間に合った。受け止めつつ力を抜いて、反動をそのまま受け入れる。すると私の身体が滑る様に狼の横へと押し出され、目の前を狼が通過した。
……躱せた? 躱せた!
「瑠華ちゃん!」
「……奏」
瑠華ちゃんが上を指さす。上? ……あっ。
―――――スコン。
……ほんっとあの鳥許さない。
――――――――――――――――――――――――
魔鳥は羽を飛ばして戦う遠距離アタッカー。突っ込んで翼で切断も出来るよ! ウザイね!
先ず対処するのは狼の方。何か特殊な動きは今のところ見られないから、多分ただの突進か噛み付き。それくらいなら…っ!?
「うっ…」
駄目だ牙が掠った。いつも通りに動いて躱してたら間に合わない。思ったより行動阻害ってきっつい…!
そして問題はそれだけじゃない。狼が過ぎ去った瞬間私の眼前に迫る白い羽が…あっ。
「はっ!?」
一瞬意識を失ったと思えば、次の瞬間には戦う前と同じ光景が視界に広がる。
「はい。お亡くなりになりましたね」
そんな軽く言う事じゃないと思うの…。
「奏様は遠距離攻撃手段をお持ちでは無いようですね」
「うん…まぁ持ってたとしてもこの状況で当てる自信は無いけど」
身体がかなり重いからね。多分簡単に見切られる。だからこちらから仕掛けるのではなくて、カウンターを狙う動きが最適だとは思うんだけど……
「無理ぃッ!」
攻撃が随分速いよ! 合わせられる訳ないじゃん!
「ふむ…身体の使い方が硬いですね」
「使い方? あっ…」
スコンと額に羽が突き刺さり何度目かの死に戻り。死ぬ瞬間は痛み無いのが幸いだわ…
「刀というものは腕で扱うものではありません。一つの攻撃は流れを持って行われます」
それは刀の使い方配信を見ていた時も言っていた気がする。でもその流れがよく分かんなかったんだよね。
「踊る様にというのは少々過剰表現ですが、感覚としてはそんなものです」
「踊る…」
私別に踊るのが得意とか無いからなぁ…あ、首切られた。さっきから鳥の殺意高いな!?
踊るとか流れるとか言われても直ぐに理解して動ける様になる訳が無い。うぅ…痛みがあるのはちょっと慣れたけど、何回も死んでると流石に気持ちが沈む。
「中々難儀しておるようじゃの」
「瑠華ちゃん!」
結構心がズタボロになり始めた時、来てくれた瑠華ちゃんを見て一気に落ち込んでいた気持ちが急上昇するのを実感した。我ながら単純だなぁ……。
「ふむ…式神よ、暫し離れよ」
瑠華ちゃんの言葉で、式神二体が私から離れる。あれ? これ紫乃ちゃんが出したやつのはずでは…まぁ瑠華ちゃんだし出来るか、うん。
「さて奏。状況はまぁ把握しておるが、一応奏の口から聞こうかの。何に詰まっておるのじゃ?」
「あっ、えっとね…紫乃ちゃんから身体の使い方が硬いって言われて、それで流れとか踊る様にとかって言われたんだけど…」
「その具体的な動きが分からなかったという訳じゃな」
「そーなの。むぅ……」
私の実力不足なのは分かるけど、ちょっと…いや大分悔しい。だってこの技量が無いって事が、瑠華ちゃんが使ってる薙刀と同格の武器持ってるのに使えないって事に繋がってるから。
「妾が見せても良いのじゃが…」
……うん、瑠華ちゃんが薙刀以外使えないはずがないもんね。刀だって当然使えるか。
「それは奏にとって糧になるかは微妙じゃな」
「そうなの?」
「奏は教えられるよりも、感覚的に動いて最適化した方が合っていると思うのじゃよ」
「最適化、か」
それは瑠華ちゃんがそれだけ私に期待してくれてるって認識でいいのかな。
「その認識で構わぬぞ」
「……瑠華ちゃんって考えも読めるの?」
「…まぁここは妾の思考空間じゃからの。そこに居る二人の思考を読む事などは造作もない」
……多分普段から考え読めてるんじゃないかな。あっ、顔逸らした!
「奏の本能に任せるのもありではあるが、一つ助言はしておこうかの」
「露骨に話逸らしたね……助言?」
「うむ。奏よ、“自ら動く必要は無い”ぞ」
「…ん?」
自ら動く必要は無い? それってどういう意味だろう……瑠華ちゃんの助言だし間違いは無いんだろうけど。
「では再開じゃ」
「ふえっ!?」
言葉の意味を考えていたら、無情にも瑠華ちゃんが再開を宣言して私の頭が首とおさらばする。ほんっとあの鳥許さん!
「自ら動く必要は無い…動きを、利用する?」
今の私は身体がかなり重くて速さが出ない。だから相手の攻撃を躱すのは正直言って難しい。とすれば敢えて当たる事で相手の力を利用するなら?
私に振り下ろされる爪を見ながら考える。あ…この爪、刀で真正面から受けたらどうなるんだろ。
でも動くには遅すぎて切り裂かれて死に戻り。……何となく見えた気がする。
「ふふっ…」
あっ、瑠華ちゃん笑ってる! 多分気付いたのかな?
向かってくる狼の動きを観察する。生き物では無いけれど、その動きは生き物にしか見えない。だからこそ、行動には何かしらの事前動作がある。この動きは……噛み付き!
さっきまではカウンターを狙って攻撃に合わせようとしてた。でも私にはそれは多分まだ早かったんだろう。だから―――カウンターの動きから、攻撃を抜く。
剥き出しの牙に刀を向け……よし間に合った。受け止めつつ力を抜いて、反動をそのまま受け入れる。すると私の身体が滑る様に狼の横へと押し出され、目の前を狼が通過した。
……躱せた? 躱せた!
「瑠華ちゃん!」
「……奏」
瑠華ちゃんが上を指さす。上? ……あっ。
―――――スコン。
……ほんっとあの鳥許さない。
――――――――――――――――――――――――
魔鳥は羽を飛ばして戦う遠距離アタッカー。突っ込んで翼で切断も出来るよ! ウザイね!
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