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学園 高等部2年 校外実習編

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「最初は、よく知らなかったんです」
「知らなかった?」
「はい」

 わたしが物心ついた時には、もうお姉ちゃんはいなかったから。お兄ちゃんから聞いていただけで、よく知らなかった。分からなかった。

「……でもある日、偶然に知り合ったんです」

 街中で、わたしはお姉ちゃんだと知らずに顔を合わせた。

「クーは気付いてたの?」
「おそらくは……」

 お姉ちゃん、勘はいいからなぁ…と、話が逸れた。
 わたしがお姉ちゃんと初めて会った時の第一印象は、不思議。

「不思議?」
「はい。今でもですけど」
「……まぁ、それは同感だわ」

 サラさんの反応に少し苦笑を零す。
 お姉ちゃんは、考えていることがとにかく分からなかった。表情が変わらないというのもあるんだろうけれど、それ以上に気持ちを制御することが上手かった。だから分からなくて、不思議という印象を持った。

「無属性しか使えないと聞いたのも、その時です」
「……どう感じた?」

 サラさんが少し固い声で尋ねてくる。『白』の差別について知っているからだろう。

「別になにも。貴族ではないと思っていましたし。逆に魔法が使えることが凄いと思いました」
「そう…」

 少しサラさんが安心したような表情を浮かべる。やっぱり差別を気にしていたみたいだ。

「…でも、その出会いが今の関係の理由にはなり得ないわよね?」
「はい。その後も何度か会ったんですけど……そのを知ったんです」
「強さ?」

 お姉ちゃんは、強い。それは魔法とかじゃなくて、心。

「…学園で、少し耳に挟むこともあったので」

 お姉ちゃんの悪口や蔑みの言葉を。
 しかし、そんなことでお姉ちゃんはへこたれなかった。それどころか、貪欲に自分に出来ることの知識を求めた。

「…言わば、お姉ちゃんはわたしの憧れなんです」

 どんなことにも負けず、ただ自分の成すべきことを成す。わたしの、理想の人だ。

「憧れ、ねぇ……確かにクーは心が強いかもしれない。けれど、それはあなたがいたからじゃないかしら?」
「……え?」

 わたしが、いたから?

「クーってああ見えて結構寂しがり屋でね。わたしと知り合ってからは、ずっと2人でいたわ」
「そうだったんですか…」

 だから、あんなに仲がいいんだ。

「…まぁ、わたしとしては、牽制としての意味もあって、クーと一緒にいたんだけどね」
「牽制…?」
「悪口と……男よね」
「あぁ……」

 納得した。蔑まれていたとしても、それは貴族からであって、準平民や平民からはお姉ちゃんは慕われていたと聞く。むしろアイドルのような存在であったとも。

「…クーは自覚しないから。悩殺された男どもは数知れずよ」
「うわぁ……」

 お姉ちゃん、罪な女です…。

「まぁ話は戻すけど、とにかくクーが悪口を耐えられたのは、兄妹の存在があったからでしょうね。人間、自分を認めてくれている存在がいることを知っていれば強いから」
「…………なる、ほど」

 ……こんなちっぽけなわたしでも、サラさんの言う通りお姉ちゃんの助けになれていたらいいなぁ……




 


 
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