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学園 高等部1年 終
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「そろそろ行こっか」
「アウ!」
クーリアが手提げ鞄にリーヴォを入れて、転移の準備を行う。
(…直接は怖いな。少し遠い)
遠ければ遠いほど、消費する魔力は増加する。そして多くの魔力を用いるために、その制御も困難になる。なのでクーリアは、少し目的地から離れた、こちら側に近い場所へと転移することにした。
「…《テレポート》」
目を閉じ呪文を紡いだその瞬間、クーリアの姿が掻き消える。
「……ちょっとズレたか」
予想通りの場所より少しズレた場所へ転移してしまったが、誤差の範囲内であった。
(ここまでの距離を一気に転移したことってあまりないからなぁ…)
そもそも使う機会がほぼないのだから、当たり前である。
「さて。リーヴォ、案内お願いしていい?」
「アウ!」
クーリアが持つ鞄からリーヴォが飛び出し、森の中へと進み始める。一応クーリアも場所は分かるのだが、万が一迷っても困るので、リーヴォに道案内を頼んだのだ。
「っ!止まって!」
「アウ!?」
森を進んでいると、急にクーリアが声を張り上げた。その理由が……
「グォォォン!!」
雄叫びを上げながら、目の前に熊型の巨大な魔獣が現れたからだった。
(索敵はしてたのに…!)
クーリアが思わず唇を噛む。
夜になれば魔獣の活動は活発になる。それ故に反応の数は昼間の比ではなく、それら全てを脳内で把握することなど不可能。なのでクーリアは最低限の範囲を索敵していたのだが、それが仇となった。
「ちっ!」
クーリアが魔導銃を引き抜く。試し打ちなどしていない。ぶっつけ本番だが、やるしかない。
「リーヴォ!」
「ガウ!」
リーヴォが体長3メートルはあろうかという熊型の魔獣の足に噛み付く。魔獣の意識が、一瞬だけそちらへと向いたタイミングを、クーリアは見逃さなかった。
「喰らいなさい!」
クーリアが引き金を引く。するとドパンッ!と重い炸裂音が響き、銃身から青白い輝きを放つ弾丸が放たれた。それと同時に銃身の後方がスライドし、白煙を上げながら薬莢が排出される。
その弾丸は真っ直ぐ狂いなく、まるで吸い込まれるようにして、魔獣の胸を貫いた。
「グォォ…」
ズシンと熊型の魔獣が膝をつく。そしてそのまま横倒しに倒れた。
「…倒した?」
クーリアが恐る恐る近付く。それでも魔獣は動かない。どうやら倒せたらしい。
「ふぅぅ…怖かったよぅ…」
「ア、アウ?」
クーリアが近付いてきたリーヴォを抱き絞める。いきなりの行動にリーヴォは困惑気味だ。
クーリアは、魔獣と戦ったことはある。だが、ここまで大型の魔獣と戦ったことはなかった。それ故の恐怖と、安心感を感じていたのだ。
「……えっと、大丈夫?」
しばらくクーリアがリーヴォに頬擦りしていると、聞き覚えのある凛とした声が背後から聞こえた。
クーリアが振り向くと……予想通り、あの人間とは思えないほど美しい女性が立っていた。
「……ひとまず、場所移動しましょうか。こっちよ」
女性は熊型の魔獣に一瞬目線を向けてから、そう行って歩き始めた。
クーリアもここから離れたかったので、大人しくその後をついて行った。
「アウ!」
クーリアが手提げ鞄にリーヴォを入れて、転移の準備を行う。
(…直接は怖いな。少し遠い)
遠ければ遠いほど、消費する魔力は増加する。そして多くの魔力を用いるために、その制御も困難になる。なのでクーリアは、少し目的地から離れた、こちら側に近い場所へと転移することにした。
「…《テレポート》」
目を閉じ呪文を紡いだその瞬間、クーリアの姿が掻き消える。
「……ちょっとズレたか」
予想通りの場所より少しズレた場所へ転移してしまったが、誤差の範囲内であった。
(ここまでの距離を一気に転移したことってあまりないからなぁ…)
そもそも使う機会がほぼないのだから、当たり前である。
「さて。リーヴォ、案内お願いしていい?」
「アウ!」
クーリアが持つ鞄からリーヴォが飛び出し、森の中へと進み始める。一応クーリアも場所は分かるのだが、万が一迷っても困るので、リーヴォに道案内を頼んだのだ。
「っ!止まって!」
「アウ!?」
森を進んでいると、急にクーリアが声を張り上げた。その理由が……
「グォォォン!!」
雄叫びを上げながら、目の前に熊型の巨大な魔獣が現れたからだった。
(索敵はしてたのに…!)
クーリアが思わず唇を噛む。
夜になれば魔獣の活動は活発になる。それ故に反応の数は昼間の比ではなく、それら全てを脳内で把握することなど不可能。なのでクーリアは最低限の範囲を索敵していたのだが、それが仇となった。
「ちっ!」
クーリアが魔導銃を引き抜く。試し打ちなどしていない。ぶっつけ本番だが、やるしかない。
「リーヴォ!」
「ガウ!」
リーヴォが体長3メートルはあろうかという熊型の魔獣の足に噛み付く。魔獣の意識が、一瞬だけそちらへと向いたタイミングを、クーリアは見逃さなかった。
「喰らいなさい!」
クーリアが引き金を引く。するとドパンッ!と重い炸裂音が響き、銃身から青白い輝きを放つ弾丸が放たれた。それと同時に銃身の後方がスライドし、白煙を上げながら薬莢が排出される。
その弾丸は真っ直ぐ狂いなく、まるで吸い込まれるようにして、魔獣の胸を貫いた。
「グォォ…」
ズシンと熊型の魔獣が膝をつく。そしてそのまま横倒しに倒れた。
「…倒した?」
クーリアが恐る恐る近付く。それでも魔獣は動かない。どうやら倒せたらしい。
「ふぅぅ…怖かったよぅ…」
「ア、アウ?」
クーリアが近付いてきたリーヴォを抱き絞める。いきなりの行動にリーヴォは困惑気味だ。
クーリアは、魔獣と戦ったことはある。だが、ここまで大型の魔獣と戦ったことはなかった。それ故の恐怖と、安心感を感じていたのだ。
「……えっと、大丈夫?」
しばらくクーリアがリーヴォに頬擦りしていると、聞き覚えのある凛とした声が背後から聞こえた。
クーリアが振り向くと……予想通り、あの人間とは思えないほど美しい女性が立っていた。
「……ひとまず、場所移動しましょうか。こっちよ」
女性は熊型の魔獣に一瞬目線を向けてから、そう行って歩き始めた。
クーリアもここから離れたかったので、大人しくその後をついて行った。
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