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学園 高等部1年 対抗戦編

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「お姉ちゃ──うわ、なにこの魔力濃度」

 兄2人と入れ替わるようにしてパン屋へと入ってきたのは……クーリアの妹、リーフィアだった。
 入って早々、リーフィアはパン屋内の魔力濃度の濃さに、思わず顔を顰めた。

「あぁ、ごめんリーフ。すぐ戻す」
「それはいいんだけど……何があったの?多分お姉ちゃんの機嫌が悪かったか、怒ったんだろうけど……」

 さすがクーリアの妹か。クーリアのその時の様子を勘で言い当てる当たり、姉のことをよく分かっている。

「……お兄ちゃんがきた」
「あぁ…」

 それだけでリーフィアは納得してしまった。どれだけ妹達に信用されていないのか……少し兄2人に同情してしまう。

 ちなみにこうしてリーフィアと話している間にも、クーリアは放出した魔力を再吸収していた。
 ……だが、魔力の再吸収など、そんなこと普通出来はしない。クーリアの魔力制御の高さがなせる技である。

「……相変わらずの制御力だね」

 半ば呆れた様子でリーフィアが呟く。

「まぁわたしにはそれしか取り柄がないからね」
「そんなことないよ!」

 リーフィアが思わず強く否定した。
 クーリアは自身を過小評価することが多い。だが、リーフィアはそれを止めて欲しいと常に思っていた。
 姉が正当な評価を受けない。それがとても悔しいのだ。

「……ごめん。つい」

 それを知るクーリアだからこそ、自身を過小評価しないようにしていた。今回は本当にうっかりだったので、素直に謝った。

「はぁ……まぁ、今に始まったことじゃないし、お姉ちゃんの気持ちも分かるんだけどね」
「なら」
「でも!お姉ちゃんは十分すごいんだからね!他の誰かが認めなくても、わたしが認めるから!」
「はいはい」

 ほんとに分かってるのー?と疑いの目で見られるが、クーリアはその目を無視する。すると聞く気がないと分かったのか、リーフィアは諦めた表情をしてため息をついた。

「はぁ…まぁ、いいや。それで体調は?」
「全然大丈夫だよ。心配かけてごめんね?」
「なんで謝るの!お姉ちゃんは悪くないでしょ!」
「う、うん、まぁそうなんだけど……つい、ね」
「……ほんとに住まなくていいの?」

 改まった様子でリーフィアが尋ねてきた。住むとは、クーリアがフェルナスの屋敷に住むということだろう。
 ちなみに今現在リーフィアや兄2人は別のところに住んでいる。色々と事情があるのだ。

「うん。わたしは、ここが好きだから」

 じーっとリーフィアがクーリアの目を見つめる。だが、すぐにまたため息をついた。クーリアが曲げるつもりがないことを理解したのだ。

「お姉ちゃんらしいね………で、気になってたんだけど、その狼、なに?」

 一転して興味津々といった様子で、クーリアが抱くリーヴォへと視線を向ける。

「あぁ、この子?リーヴォ」
「契約獣?」
「そうそう。撫でる?」
「え、いいの?!」

 そう言うが、もう既にリーフィアの手は撫でる体勢に入っていた。似た者姉妹である。

 クーリアが初めてリーヴォに会った時と同じように、まるで壊れ物を扱うかの如く、リーヴォを撫でた。するとリーヴォは満更でも無い様子で、目を細めて尻尾を揺らしていた。

 ………ちなみに、クーリアがリーヴォをリーフィアに抱かせなかった理由は、リーヴォが離れようとしなかったからであった。




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