31 / 138
学園 高等部1年 対抗戦編
25
しおりを挟む
予想通りというべきか。クーリアの祖父母はサラの家にいくことを許可した。
というかものすごく喜んでいた。
その様子を見て、クーリア、そしてサラでさえ引いていた。
「クーのおじいさん達、喜んでたね…」
「うん……わたし、そこまで心配させてたのかな?」
「……クーって今まで誰かと遊んだことある?」
「ない」
クーリアが即答した。
(それならあの喜びようも納得だわ…)
サラはすこしクーリアの祖父母に同情した。
「ところで…」
「なぁに?」
「……この時間からサラの家に行くってことは…泊まり、なの?」
「もちろん」
クーリアの祖父母はそれも分かっていて、許可したのだ。もちろんクーリアも分かってはいたのだが、どうしても聞かずにはいられなかった。
……もしかしたら違うかもという期待を込めて。
それは見事に玉砕した。
クーリアの住む家から歩き始めてしばらく。もう既に日は落ち、辺りは暗くなり始めていた。
そんな時、クーリアが唐突に口を開いた。
「サラの家って…どっちの?」
その言葉の意味を理解できる人は、おそらくサラしかいないだろう。
「……知ってたの?」
「まぁ多少は?」
あっけらかんとそう答えるクーリアだが、サラは内心とても驚いていた。
なぜなら、話したことなど1度もないからだ。
「そう……行くのは本邸よ」
「帰っていい?いいよね」
「ダメに決まってるでしょ。こら!言ってるそばから逃げようとしない!」
本邸と言う言葉を聞いた途端、クーリアは逃げ出した。
だが、体格で優るサラに簡単に捕獲された。
「やだ!帰る!」
「大丈夫だって!」
一体なにが大丈夫なのか…。
まだ逃げようとするクーリアを、サラは引きずりながら家へと向かった。
「うぅ…」
「本、読みたいでしょ?」
「そうだけどぉー……」
クーリアが嫌がったのにはある理由があった。
無論その理由はサラも知っていた。だからこそ、大丈夫だと言ったのだ。
その理由というのが……
「サラのお父さん、いない?」
そう、サラの父親だ。
決して暴力をふるってくるだとか、下に見てくるだとか、そういう理由ではない。
ただ、その……クーリアは怒っているのだ。
クーリアはサラの父親と会ったことがある。その時のある発言で……ちょっとクーリアが傷付いたのだ。
体ではない。心が、だ。
「いないよ。でも、そろそろクーも許してあげたら?」
もちろん謝ってはくれたのだが、その傷は相当深かったらしく、未だクーリアはサラの父親を許していない。というより、会うのを避けているので、そもそも許す機会がないのだ。
「……考えとく」
短くそう言い、クーリアはそのままサラによって引きずられていった…。
というかものすごく喜んでいた。
その様子を見て、クーリア、そしてサラでさえ引いていた。
「クーのおじいさん達、喜んでたね…」
「うん……わたし、そこまで心配させてたのかな?」
「……クーって今まで誰かと遊んだことある?」
「ない」
クーリアが即答した。
(それならあの喜びようも納得だわ…)
サラはすこしクーリアの祖父母に同情した。
「ところで…」
「なぁに?」
「……この時間からサラの家に行くってことは…泊まり、なの?」
「もちろん」
クーリアの祖父母はそれも分かっていて、許可したのだ。もちろんクーリアも分かってはいたのだが、どうしても聞かずにはいられなかった。
……もしかしたら違うかもという期待を込めて。
それは見事に玉砕した。
クーリアの住む家から歩き始めてしばらく。もう既に日は落ち、辺りは暗くなり始めていた。
そんな時、クーリアが唐突に口を開いた。
「サラの家って…どっちの?」
その言葉の意味を理解できる人は、おそらくサラしかいないだろう。
「……知ってたの?」
「まぁ多少は?」
あっけらかんとそう答えるクーリアだが、サラは内心とても驚いていた。
なぜなら、話したことなど1度もないからだ。
「そう……行くのは本邸よ」
「帰っていい?いいよね」
「ダメに決まってるでしょ。こら!言ってるそばから逃げようとしない!」
本邸と言う言葉を聞いた途端、クーリアは逃げ出した。
だが、体格で優るサラに簡単に捕獲された。
「やだ!帰る!」
「大丈夫だって!」
一体なにが大丈夫なのか…。
まだ逃げようとするクーリアを、サラは引きずりながら家へと向かった。
「うぅ…」
「本、読みたいでしょ?」
「そうだけどぉー……」
クーリアが嫌がったのにはある理由があった。
無論その理由はサラも知っていた。だからこそ、大丈夫だと言ったのだ。
その理由というのが……
「サラのお父さん、いない?」
そう、サラの父親だ。
決して暴力をふるってくるだとか、下に見てくるだとか、そういう理由ではない。
ただ、その……クーリアは怒っているのだ。
クーリアはサラの父親と会ったことがある。その時のある発言で……ちょっとクーリアが傷付いたのだ。
体ではない。心が、だ。
「いないよ。でも、そろそろクーも許してあげたら?」
もちろん謝ってはくれたのだが、その傷は相当深かったらしく、未だクーリアはサラの父親を許していない。というより、会うのを避けているので、そもそも許す機会がないのだ。
「……考えとく」
短くそう言い、クーリアはそのままサラによって引きずられていった…。
0
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
乙女ゲームの村人に転生した俺だけど悪役令嬢を救いたい
白濁壺
ファンタジー
ホームから転落死した成瀬明人(なるせあきと)は乙女ゲーム『メアリーワールド』の村人ビィティに転生した。だがビィティは奴隷のような生活を強いられており体は栄養失調でやせ細っていて、いつ死んでもおかしくない状態だった。だが、この世界は何十回と遊んだ乙女ゲームの世界。ビィティはミニゲームのダンジョンを探しだし、戦わずにお金を稼ぐ方法を編み出す。お金を貯めたビィティは仲間にした二体の精霊と王都を目指すのだが……。
(二部学園編始めます)
幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!
中野莉央
ファンタジー
将来の夢はケーキ屋さん。そんな、どこにでもいるような学生は交通事故で死んだ後、異世界の子爵令嬢セリナとして生まれ変わっていた。学園卒業時に婚約者だった侯爵家の子息から婚約破棄を言い渡され、伯爵令嬢フローラに婚約者を奪われる形となったセリナはその後、諸事情で双子の猫耳メイドとパティスリー経営をはじめる事になり、不動産屋、魔道具屋、熊獣人、銀狼獣人の冒険者などと関わっていく。
※パティスリーの開店準備が始まるのが71話から。パティスリー開店が122話からになります。また、後宮、寵姫、国王などの要素も出てきます。(以前、書いた『婚約破棄された悪役令嬢は決意する「そうだ、パティシエになろう……!」』というチート系短編小説がきっかけで書きはじめた小説なので若干、かぶってる部分もありますが基本的に設定や展開は違う物になっています)※「小説家になろう」でも投稿しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる