上 下
148 / 159
最終章 決戦

第147話 女王

しおりを挟む
 翡翠を携え、気配察知を頼りに進んでいく。そして、よくよく考えたら魔力眼で暗闇見えるじゃんってなったので、光の玉はとっくに消している。
 馬鹿だね私……。

 とりあえず反応が増えている場所へと向かってみる。すると、こちらへと近付いてくる反応が複数。だが、気付かれてはいないっぽい。

「どうするかなぁー」

 光学迷彩で避けることも可能ではあるのだけれど、結局のところ倒さなきゃならないので、このまま戦闘に移行する。

 ギシャァァァ!!

 近付いてきた一体のウッドワームが、こちらへ向けて消化液を吐き出してきた。
 ほんと、目がないのにどうやって私の存在感知してるんだか…。
 幸い距離があるので簡単にかわせる。けれど、攻撃されたら流石にしんどいな。

 ギシャァァァ!!

「…言わんこっちゃない」

 危惧していた、複数のウッドワームによる消化液攻撃。私の頭上に黄色い液体が襲いかかってくる。

「ふっ!」

 その消化液が落ち切る前に一気に駆け抜け、ウッドワームの元へ。そこからすれ違いざまに口へと聖火の矢を叩き込む。

 ギャッ!?

 あまりに一瞬の出来事だったからなのか、ウッドワームが驚きの声を上げる。そしてそのまま身悶え始め、やがて聖火に包まれて綺麗さっぱり居なくなった。

「はぁ…これ続けるのか」

 反応は未だに増え続けている。この作業を続けなければならないと思うと、憂鬱な気分になる。
 ……だがそれともう1つ、嫌な予感があった。

「…蠱毒状態になってないといいけど」

 もはやウッドワームは飽和状態にある。ならばわたしが危惧していることが起きるのも必然だろう。
 蠱毒とは、簡単に言えば毒虫が互いを喰らい、特別な毒を持った虫が出来上がることだった…はず。詳しいことはよく分からない。
 ともかく問題なのは、その特別な毒を持った虫だ。厄介であることは間違いない。

「急ごう」
『うん』

 暗い道を駆ける。幾度となくウッドワームと遭遇するが、口に聖火の矢をぶち込み、焼き尽くしていく。これならば翡翠も文句はないだろう。

 そうして優に100匹を越した時。とうとう増加が著しい場所へと辿り着いた。そしてそこに居たのは……

「……デカ」

 思わず声を漏らす。その場所に鎮座していたのは、先程から遭遇しているウッドワームの5倍はあろうかという巨体を持った、ウッドワームだったのだ。

「女王、かな?」

 ウッドワームを次々と産み出していることから、女王で間違いはないと思う。これを倒さなければ、永遠に増え続けるだろう。
 危惧していた蠱毒にはまだなっていないようだが、それでも急がなければ確実に起こるだろう。その前にケリをつけなければ。
 そう思い少し足を踏み出した時、

 キシャァァァァ!!!

「っ!?」

 突然女王が甲高い鳴き声を上げたと思えば、周りにいたウッドワームが一斉に襲いかかってきた。

「ちょっ!?」

 統率がとれた動きではないので簡単にかわせるが、何分数が多すぎる。このままでは押し切られるのは目に見えていた。

「刀術・乱戦・乱舞ロンドっ!」

 とはいえ、そのままやられる訳が無い。聖火を纏った翡翠を縦横無尽に振り回し、集まってきたウッドワームを粉々に切り刻んでいく。その度に体液が飛び散るが、今更気にしてなどいられない。





 キシャァァァ!!!

「うぐっ!」

 消化液をモロに右腕と右目に浴びる。結界は展開していたが、それすら溶かし、貫通してきた。
 ……私が言うのもなんだけど、チート過ぎる。

「はぁぁぁっ!」

 それでも激痛を根性でねじ伏せ、半ば取れかけの腕を振るい、最後のウッドワームの頭を地面へと縫い付ける。
 ……だが。

 キシャァァァ!!!

「嘘…でしょ…」

 次々と目の前で新たなウッドワームが産み出される。既に成体の状態で、だ。

 治癒は間に合わない。右腕は使い物にならないし、右目が潰されているせいで魔法が当たる保証はない。
 そうこうしている間にウッドワーム達は私へと迫り……

「……死んで、たまるかぁぁぁ!!」

 痛覚を切断し、翡翠を左腕に持ち替える。利き腕でない為に、力が乗らない。しかしそれを強化でごり押す。

 キシャァァァっ!?

 ウッドワームが驚いたような声を上げる。まぁ、普通右腕が無くなった状態で、未だ動く人間は最早化け物だろう。

 痛覚を切断した影響で、どれ程の負荷が左腕にかかっているのかは分からない。けれど、そんなことはお構い無しに全力で翡翠を振るった。










『ちょっ!?』

 ……あ。ごめん、すっぽ抜けた。


しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

処理中です...