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第6章 王都編

第133話 ロックゴーレムの討伐その弍

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 反応があった方向へ走っていると、体長3メートルほどのロックゴーレムが2体現れた。うん、察知した数と同じだね。もう少し奥にも反応があるけれど、それは今はいい。

「さて。どうやろうかな…」

 討伐証明が魔石である以上、それを破壊して倒すことはできない。
 でも生き物…とはちょっと呼べない存在だからね。頭壊しても動いちゃう。
 となれば……

「外殻を破壊して魔石を取り出すのが1番か」
「その方法が大変だから、倒せる人は限られるのよ」

 後ろからマリアの声が聞こえる。どうやら完全に高みの見物をするようだ。
 ……まぁ、別にいいんだけどさ。そんなにジロジロ見ないでよ。やりにくい。


 私の姿を見つけたのか、ロックゴーレムがズシン、ズシンと重そうな足音を立てて近付いてくる。頭の部分には、丸い目のようなものが3つ3角に並んでいる。とりあえずあそこを壊してみるか。

「アイスアロー!」

 トリガーワードを敢えて言った。そっちの方が魔力消費は少なくて済むし。魔力が多いと言っても、少ないに越したことはない……まぁ、本当はマリアの目があるからだったりするんだけど。前にトリガーワードを言えって言われたからねぇ……。

 私の周りに長さ10センチほどの氷の矢が6本出現する。
 うーん…そのまま飛ばすのは味がないか。横回転でも加えてみよう。

「いけっ!」

 高速に横回転が加えられたアイスアローが、私の掛け声で一斉にロックゴーレムの目へと向かう。
 真っ直ぐ飛んで行ったアイスアローは、狂いなくそれぞれのロックゴーレムの目へと吸い込まれるようにして命中する。
 …………そして、アイスアローはそのまま頭を貫通した。

「………」

 後ろからの目線が痛い!い、いや、私だってまさか貫通するとは思わなかったんだもん。

「……これで止まってはくれないか」

 貫通した事で完全にロックゴーレムの目は潰されたはず。でも、真っ直ぐこちらへと歩いてくる。となるとあれはダミーの目。
 ………そうか。魔力を感知して向かってきているのか。

「めんどくさい…」

 目くらましは効かない。でも、頭を貫通できたことを考えると、外殻は案外楽に破壊できそうだ。

「本来そんなに楽じゃないんだけどね……」

 …後ろのマリアの言葉は無視する。重要なのは結果だ、うん。

「とりあえず足止めするか」

 追加でアイスアローを生成し、膝の球体関節を狙う。

 パキンッ!

「これじゃあダメか…」

 アイスアローが砕け散った。ロックゴーレムの球体関節は無傷。確実に威力不足だね。
 …熱して冷やしたら割れるかな。ダメか。マリアに見られたらまたなんか言われる気がする。

「うーん……」
「…魔物の目の前で呑気に悩めるって凄いわね」

 そう言われてもねぇ?ロックゴーレムの動き遅いんだもの。油断してる訳では無いけど、十分に考え事をする余裕はある。

 ……うん。これでいいか。

「…マッドウェイブ」

 地面に手を着いて、思い付いた魔法を行使する。すると、ロックゴーレムの足元の地面が泥濘ぬかるみ始める。
 最初は少し足が滑るくらいだったが、次第にロックゴーレムの自重で足が沈み始めた。

「よし」

 砂地獄、いや、泥地獄の出来上がり。

「…相変わらずとんでもない方法思いつくわね」

 え、そう?ロックゴーレムは重いから沈むんじゃないかって考えるのは、結構普通だと思うんだけど。

 とりあえずロックゴーレムが腰の部分まで沈んだところで、魔法を止める。腕は腰より下まであるので、一緒に埋まった。これは嬉しい誤算。
 後は風魔法で魔石がある所をピンポイントで抉って……取れた。

「なんで風で岩が削れるの…?」
「…知らない」

 だってやったら出来ちゃったんだもん。……まぁ、それなりに魔力は消費したけど。

 魔石が無くなったことで、ロックゴーレムが完全に沈黙する。バラバラになったりはしないんだね。ちょっと意外。

「…それはあなたがロックゴーレムの体を固めてるからよ!」
「あ」

 そっかそっか。忘れてた。

「全く……どうしてそういう所は抜けてるのかしら」
「うぐっ」

 自覚は、ある。なんというか…ひとつの事にしか集中できない体質というか。そんな感じなんだよね。

「…まぁ、いいわ。ちゃんと戦えてたし。……倒し方はアレだけど」
「じゃあ本来はどうやるの?」
「本来、というか、決まった倒し方はないんだけどね。でも、少なくともあなたみたいは倒し方は、聞いたことも見たことも無いわ」
「へー」
「…で。その私が知ってる倒し方は、大体ゴリ押しね」
「ゴリ押し?」
「そう。岩には岩をってね」

 あぁ……想像できちゃった。ロックゴーレムに魔法で岩を撃ち込むところ。ゴリ押しってそういうことね……。

「足なんかを壊せば再生するまで時間がかかるから、その間に胸部の外殻を破壊して魔石を取り出すの。でもその時、外殻と一緒に魔石を吹き飛ばしちゃうってこともよくあってね…」
「な、なるほど…」

 前にダンジョンで大爆発を起こした時、魔石は無傷だった。そのことから考えると、魔石が壊れるという心配は要らないんだろう。でも、見失うっていう可能性があるとは思わなかったなぁ……。

「まぁ、アレを見る限り、フィリアにその心配は要らないわね」

 まぁ、ねぇ。直接ほじくり出すから。

「……あれ」
「どうしたの?」
「…さっきまでこの奥にいたはずの、ロックゴーレムの反応が消えた」
「どこかに行ったんじゃない?その場に留まってる訳じゃないし」

 確かにそうかもしれないんだけど……範囲外に行ったというより、いきなり消えた感じなんだよね。
 ……気にし過ぎかな。



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