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第5章 村編

第124話 料理しよう

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 とりあえずアッシュの特訓はここまでにする。まぁアッシュの負担が凄いってのもあるんだけど、一番の理由は、これ以上やってもあまり効果はないから。
 特訓っていうのは、いわばレベルアップによる伸び代を増やす為のものでもある。だから、レベルが上がらないと、これ以上やっても効果が薄いのよね。

「フィリアにそういう常識があって良かったわ」
「……ママの私に対する評価が知りたい」
「ちゃーんと信用してるわよ。確認よ、確認」

 ほんとかなぁ……まぁ、マリアは私が心を読むことができるのを知ってるし、嘘はつかないか。


 …………でね、結局何が言いたいのかっていうと……

「暇だーーー」

 そう。やることなくなって、暇なのよね。私自身の特訓をするっていうのもありではあるけど……

「絶対やめてね?嫌な予感しかしないから」

 失礼な。そんなことない…よ?

『自覚あり…』

 う、うるさい!ちょっと、ほんのちょっと地面が抉れるとか、吹き飛ぶとか、それくらいだから!

「それくらいって言葉の使い方、間違ってると思うわよ……」
「うっ!」

 いや、方法はあるにはあるよ?前作ってた亜空間使うとか。でもねぇ……ちょっと怖い。だって作ってからステータスかなり上がってるし。空間自体壊しちゃいそうだからね……。

「はぁ……」

 深く息を吐いて、テーブルに突っ伏す。あ、ちなみにアッシュは今森で実戦してる。一応居場所と状況は確認してる。何かあったらすぐに駆けつけられるよ。

「……ねぇ、それってどれくらいまで捕捉できるの?」
「ん?んー……どれくらいだろ?まぁ今パパがどこにいて、何してるのかくらいは分かるよ」

 世界地図ワールドマップホント便利。ただ、何してるのかっていうのは、場所から推測するしかないんだけどね。

「……つまり、ここから王都まで把握できるの?」
「多分?」

 あとは私の脳内演算能力による。限界まで試したことはないから、多分って答えるしかないのよね。すると、分かりやすくマリアの顔が引き攣った。なんで?

「……ますます国に取り込まれそうね」

 あぁー…そういうことね。確かにマーキングさえしておけば、敵国の状態を知ることも出来るからね。

「知られないようにすれば大丈夫だよ」
「ほんとかしらねぇ…私的には、フィリアがバラしちゃいそうなんだけど」
「信用無い!?」
「だってそうでしょう。あなた、便利なら普通にそっちを使おうとするんだから」

 ……否定できない。だって、出来ることなら楽な方がいいじゃない?だから無詠唱使うし、索敵範囲が広ければ世界地図ワールドマップも使うよ。もちろん、後者みたいなやつは、バレないようにはするけどさ。ついポロッと言っちゃいそう。自分に自信がない……しくしく。

「そういえば、フィリア」
「……なに?」
「料理できる?」

 はて?なんで唐突に?

「出来はするよ?」
「あ、そうなの。てっきりできないかと」
「それはちょっと傷付くんだけど……私だって普通にできるよ!」

 まったく。伊達に前世で一人暮らししてないからね!

「じゃあ今日のご飯、フィリアが作る?」
「なんで?」
「暇でしょう?」

 確かに暇だけど。暇だけど!なにその理屈。

「愛娘の手料理なんて、親からしたらとっても食べたいものよ?」
「……そういうもの?」
「ええ、そういうものよ」

 ふーん、そうか。なら作ってみようかな。せっかくなら、日本料理を。
 ……まさかそれが狙いだったり?いや、ないよね。

(楽しみだわぁー…多分フィリアの前世の料理も出てきそうだし)

 ……まさかでした。まぁいいけどさ。じゃあせっかくなんだし、最高の料理を作りましょうか!

「あ、レミナ。今日はフィリアが作るから」
「えっ!?そ、その…大丈夫、ですか?」
「まぁ大丈夫じゃないかしら。キッチン壊したりはしないと思うし」

 ……さぁやろうか。うん。ただ、言わせて欲しい。…ちゃんと力加減はできますからね?!


 さてと。キッチンに立っていざ料理!というか、かなり久しぶりな気がする。ご飯は……炊飯器引っ張り出してきて炊こう。
 メニューは……男の子のアッシュがいることだし、唐揚げとか?あとは…味噌汁?なんか合わないな……まぁ、前から味噌汁は作りたいって思ってたから、いっか。

 まずだいぶ前に作っていた亜空間から炊飯器を引っ張り出して、研いでいたお米をセット。あとはボタンを押すだけ。簡単だね。

「それなに?」
「んー…魔道具?」
「それどうしたの?」
「…作った?」

 空間作る時に一緒にできたから、作ったってことになるのかな?

「作ったって…」
「気にしない気にしない」

 さてと。次は唐揚げ。1口大に鶏肉を切り、ボウルに醤油とすりおろしたニンニクと生姜。それと酒を入れて、1口大に切っておいた鶏肉を入れて味を付ける。30分くらい?

 その間に味噌汁。出汁は……干し魚で。
 出汁をだしたら、野菜投入。お肉もいれとこ。

 作っている間に味が染み込んだと思うので、卵をバットに割入れて肉をくぐらせ、粉をつける。それを油に突っ込んで……二度揚げするか。そっちのほうが美味しいし。

「できた…」

 うん、中々上出来ではなかろうか。味噌汁もできたし。あとは……キャベツの千切りを皿にしいて、そこに唐揚げを並べる。味噌汁もよそって、ご飯は茶碗……なんてないものね。スープ皿でいいか。

「できたの?」
「うん」

 マリアが料理を覗き込む。

「美味しそうね」
「本当に。でも、見たことないです。まさか…」
「うん。私の前世の料理だよ。さぁ、食べよ!」

 できた料理をテーブルへと運んでいると、アッシュが帰ってきた。

「ただいま……むっちゃいい匂いする!?」
「おかえり、アッシュ。今日はフィリアが作ったのよ」
「え!?」

 そんなに驚くこと?女の子だよ?料理くらいできるよ?

「さぁ。冷めないうちに食べちゃいましょ」

 なんかはぐらかされた…まぁいっか。

 全員が席について食べ始める。どうだろう…?

「美味しい?」

 全員が一口食べて固まってしまった。あ、あれ?美味しくなかった…?

「……美味しい」
「え?」
「美味しいわ!すごく。こんな料理もあったのね」
「ええほんとに。美味しいです」
「美味い!ほんとに作ったの?」

 よ、良かったぁ……心配は杞憂だったね。でも…

「アッシュ、それはどういう意味かな?」
「あ、いや、ちょっと…信じれなくて」
「なんで?」
「あ、っと…」
「な ん で ?」
「……お姉ちゃんには作れないと思ってたからです」
「よし、アッシュ、後で模擬戦しよっか」
「えぇ!?」

 文句言わない。最初嘘ついたんだから。最初から正直に言っても模擬戦はするつもりだったけど。

『それどう答えても避けられない…』

 うん。そうだよ。悪いか。

『開き直ってる!?』

 だって……模擬戦しようって言ったのは、今日の実戦でどんだけ実力ついたか確かめたかったからだし。

「食べたらやるよ」
「………今ほど美味しい食事を恨んだことはない」

 ゆっくり食べれないってことだろうね。現に手は止まってないし。
 ……ただ、それだけ美味しいって思ってくれているってことだから、嬉しいね。たまには人に振る舞うのもいいかもね。











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