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第5章 村編
第108話 葛藤
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僕…いや、俺は、産まれた時からいたあの子のことを、いつの間にやら好きになってしまっていた。
いつも優しくて、たまに見せる笑顔が好きだった。
最初は、家族として好きなんだって思ってた。
でも、養子だと知ってからだろうか。その気持ちが変わったのは。
「アッシュー!」
いつも元気にそう呼んでくれた。でも、本当の姉ではないと知り、弟として接するのが、なんだか嫌になった。
弟として見られるのが嫌で、男として見て欲しくて、いつまでも年下の弟扱いしてくることに腹を立てた。
そして口を聞かなくなり、ほとんど会話なんてしなくなってしまった。
………いや、あっちからは積極的に話しかけてきた。でも、俺はそれを無視し続けたんだ。最低だよな…。
母さんにも、父さんにも心配かけた。
だから、思い切って話してみたんだ。そしたら…
「あぁ…なるほどね。それは…」
「うーむ…ま、まぁいいんじゃない、か?」
呆れられたような、心配するような、そんな返事だった。
2人は本当の事を知っていたのだから、今考えると、あの反応は当然だったんだろうなと思う。
ある日5歳になり、教会で洗礼を受けた。聖女である母さんが取り行った。
目閉じて祈りを捧げた瞬間、女神エルザの像が光り輝いた。
「えぇ!?」
「な、なに!?」
母さんでも慌てるほどだったから、余程異常なことだったんだろう。
……それと、母さんには言っていないが、あの時誰かの声が聞こえたんだ。
綺麗な、女性の声。なんて言っていたのかは分からなかったけど、祝福されているということだけは分かったから、深く考えなくてもいいだろうってことで、言ってない。
洗礼を受け、ステータスを見たら……勇者の称号があった。それと、女神エルザの加護も。
両親は勇者があったことに驚きはなかったけど、加護があったのには驚いていた。
「俺より強くなるかもしれんな!」
父さんはそう言いながら俺を両手で持ち上げて、その場でクルクルと回った。かなり長い時間やられたせいで、気持ち悪くなって吐きかけた。
それを見て、母さんが父さんを叱っていた。
……その顔はとても怖かったとだけ言っておく。
洗礼を受けた後、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。なんでも俺が勇者の称号を持っていたことを祝うためだそうな。
「そう言えばフィリアのステータスに聖女はあったのか?」
騒がしい声の中でそんな父さんの言葉が聞こえ、思わず耳をすました。
「…分からないわ。鑑定しても分からないし、聞く機会を失ったから」
今度は母さんの声が聞こえた。でも、変だ。養子なのにどうしてステータスに聖女があると思ったんだ?
……確かにその笑顔は聖女っぽかったけど。
それ以降の会話は聞こえなかった。なんでそんな事を話していたのかは気になったけど、聞くのをいつの間にか忘れていた。
そしてしばらくの月日が流れた。
洗礼を受けて以来、あの子は村に帰って来ていない。
両親にその事を話してみても、あっちで忙しいらしいとしか言われなかった。
……もしかしたら俺のせいかもしれないと思ったのはすぐだった。でも、どうやって接すればいいのか分からなくて、そもそも会えないから話せなくて。
どうしようかと悩んでいるうちに、気づけば2年の月日が流れていた。
「アッシュは…王都に行かないほうがいいかもしれないな」
「えっ!?」
突然なんでそんなことを言われたのか分からなかった。
だって、王都にいくとずっと思っていたから。
「アッシュが勇者であることはかなり知れ渡ってしまったからね……行ったら学園で授業どころじゃないかも」
母さんから理由を言われてようやく理解する。確かに村でも人だかりができるほどだし、仕方ないのかもしれないと思った。
ただ……また、話す機会を失ったと思った。
それからしばらく村でレミナに勉強を教えてもらっていると、両親が王都に行くと言い出した。いつ戻るかは分からないと言われた。
「なんで?何しにいくの?」
「ちょっとした友人の助けに行くんだ。なぁに。心配はないさ。それまで、勉強頑張れよ」
本当は自分も行きたいと思った。けれど、両親は遊びで行く訳ではない。だから言わなかった。言えなかった。
両親が王都に行って、数日。勉強の合間の休憩をとっていると、下の階、つまり玄関から、母さんの声が聞こえた。
座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、俺は一目散に玄関へと走った。
そして、目の前に母さんの姿を見つけて、思わず笑顔になる。
「母さん!お帰り!」
そう言いながら駆け寄る。
「ただいま、アッシュ。いい子にしてた?」
「うん!ちゃんと勉強してたよ」
「そう、いい子ね」
そう言って頭を撫でてくれた。ちょっと恥ずかしいけど、撫でられるのは嬉しい。
「あれ?フィリア様は?」
……でもレミナの一言で気持ちが一気に落ち込んだ。
「まったく……」
その言葉は誰に対してだったのだろう。少なくとも自分に向けてではないと思った。だとすると……
「…"あれ"がいるの?」
言ってから思わずしまったと思った。でも、どう言ったらいいのか分からなくて、ついそう言ってしまった。
「あれ、が何か分からないけど、フィリアならいるわよ。今はちょっと居ないけど、帰ってきてるわ」
母さんの声に少しだけ怒りが含まれていることに気づいた。言わなきゃよかった……。
でも、今は?
「そう…」
なんだろう。会いたい、話したかったはずなのに、会いたくない。矛盾した、変な気分になる。
「アッシュ、ちょっと話があるのだけれど、いい?」
「なに?」
「ここじゃなくて、座ってゆっくりと話しましょうか。レミナ、お茶を用意してくれる?」
「は、はい…えぇっと、何人分でしょうか?」
「今は2人分。レミナも飲みたいのなら、用意していいわよ」
「お気遣いありがとうございます。では」
そして母さんから聞いた話は……正直信じられなかった。
養子だって言われたのに…実は養子では、ない…?
「……な、んで?」
自分でも驚くほど掠れた声が出た。
「アッシュを信じてなかった訳ではないのよ?ただ……教えるには早いんじゃないかって」
「そんな、こと」
「じゃあもし3歳くらいのときに言われて、言いふらすことなかったって確信は持てる?」
それは……無理、だったかも知れない。いや、確実に無理だ。
「………でも、それじゃあフィリア…いや、お姉ちゃんは、自分が養子ということにされているって知っていて、僕の言葉を受け止めていたってこと?」
「そうよ。フィリアは私から言われて、ずっと黙ってた。じっと耐えていた」
「そ、んな…」
養子であったなら、聞き流すくらいはできただろう。でも、血の繋がった姉弟だと知っていて聞いていたのなら……
「だからアッシュ。ちゃんと謝って仲直りするのよ?」
「…………う、ん」
辛うじて返事をする。謝って許されることなんかじゃないけど、それでも謝らないと。
「これでいいわよね?フィリア」
「いいよ」
「「え!?」」
突然聞こえる久しぶりに聞く声。間違いない。けれど、どこに…?
辺りをキョロキョロ見回すけれど、姿はない。
「フィリア…」
「はいはい」
母さんの呆れたような声に、また返事が聞こえる。すると母さんの隣の視界が歪んで……久しぶりに見る姿が目に入った。
「え!?い、いつからそこに…」
「えっと、最初から」
まったく気づかなかった…
「さっきの会話も…」
「ぜーんぶ聞いてたよ」
最初からって時点でそうだろうって思ったけど!
すると自分の顔が熱くなるのを感じる。しかし、直ぐに血の気が引く。
改めて会った気恥しさと、今までの態度の気まずさで。
「あ、え…」
「なに?」
目の前の少女が小首を傾げる。こんな状況なのに、可愛いと思ってしまった。
気まずくて、自分の顔を見られたくなくて、気がついたら立ち上がって外に走り出していた。
「はぁはぁ…」
呼吸が落ち着かない。心臓がバクバクする。頭の中がぐちゃぐちゃで整理がつかない。
だから木剣を持って素振りをする。こうすれば気持ちの整理が自然とできるから。
「アッシュー」
ビクッと体が強ばる。振り向きたくなくて、そのまま木剣を振り続ける。
「おーい」
無視だ無視!
「えい」
間の抜けた声が聞こえ、そんな言葉の様子とは裏腹に強風が吹きつけ、手に持っていた木剣が持っていかれた。
「うわ!?」
あまりにいきなりのことで、しりもちを着いてしまった。
「ごめんね。大丈夫だった?」
「っ!」
思わず距離をとってしまった…というか謝るということは、あの風は魔法ってことだよな?無詠唱であれか……
「……ほんと、なのか?」
口が勝手に言葉を発していた。
「え?」
「……ほんとの、お姉ちゃん、なのか?」
「あぁ。それね。ほんとだよ。黙っててごめんね」
「いや……」
顔を見られたくなくて、見たくなくて、また後ろを向いてしまう。
「その……「ごめん」え?」
後ろを向いたままで卑怯だと思う。けれど、俺にはその勇気がない。
「ごめん…今まで偽物とか…」
「あぁ。別にいいよー」
「軽くないか!?」
あまりの軽さに驚いてつい振り向いてしまった。
「軽かったらだめ?」
「あ、いや、そういう訳じゃ……」
振り向いてしまい、気まずい。……本当にそこまで深刻に考えてないみたいで、良かったとほっとする自分がいるのが、情けないくて。
「じゃあやる?」
「え、えぇ!?な、なに言ってんだよ!?」
な、何を言ってるんだ!?なんで、そんなこと……。
自分の顔が火照るのが分かる。
「いや、打ち合ったらいいかなぁと。あれで」
そう言って指さしたのは…木剣。
えっとー…待ってくれ。つまり、やるっていうのは、木剣で打ち合いをやる?ってこと……
うわぁぁぁぁぁ!!恥ずかしい!!な、なんてこと考えてたんだ俺は!?
……穴があったら入りたい!!
「という訳で、やろうか」
「という訳ってなんだ!?」
「いいからいいから」
目の前の女の子……お姉ちゃんがどこからか木剣を取り出して構える。
これは……やらなきゃだめ、か?
仕方なく俺は地面に落ちた木剣を拾い、正面に構えた。
いつも優しくて、たまに見せる笑顔が好きだった。
最初は、家族として好きなんだって思ってた。
でも、養子だと知ってからだろうか。その気持ちが変わったのは。
「アッシュー!」
いつも元気にそう呼んでくれた。でも、本当の姉ではないと知り、弟として接するのが、なんだか嫌になった。
弟として見られるのが嫌で、男として見て欲しくて、いつまでも年下の弟扱いしてくることに腹を立てた。
そして口を聞かなくなり、ほとんど会話なんてしなくなってしまった。
………いや、あっちからは積極的に話しかけてきた。でも、俺はそれを無視し続けたんだ。最低だよな…。
母さんにも、父さんにも心配かけた。
だから、思い切って話してみたんだ。そしたら…
「あぁ…なるほどね。それは…」
「うーむ…ま、まぁいいんじゃない、か?」
呆れられたような、心配するような、そんな返事だった。
2人は本当の事を知っていたのだから、今考えると、あの反応は当然だったんだろうなと思う。
ある日5歳になり、教会で洗礼を受けた。聖女である母さんが取り行った。
目閉じて祈りを捧げた瞬間、女神エルザの像が光り輝いた。
「えぇ!?」
「な、なに!?」
母さんでも慌てるほどだったから、余程異常なことだったんだろう。
……それと、母さんには言っていないが、あの時誰かの声が聞こえたんだ。
綺麗な、女性の声。なんて言っていたのかは分からなかったけど、祝福されているということだけは分かったから、深く考えなくてもいいだろうってことで、言ってない。
洗礼を受け、ステータスを見たら……勇者の称号があった。それと、女神エルザの加護も。
両親は勇者があったことに驚きはなかったけど、加護があったのには驚いていた。
「俺より強くなるかもしれんな!」
父さんはそう言いながら俺を両手で持ち上げて、その場でクルクルと回った。かなり長い時間やられたせいで、気持ち悪くなって吐きかけた。
それを見て、母さんが父さんを叱っていた。
……その顔はとても怖かったとだけ言っておく。
洗礼を受けた後、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。なんでも俺が勇者の称号を持っていたことを祝うためだそうな。
「そう言えばフィリアのステータスに聖女はあったのか?」
騒がしい声の中でそんな父さんの言葉が聞こえ、思わず耳をすました。
「…分からないわ。鑑定しても分からないし、聞く機会を失ったから」
今度は母さんの声が聞こえた。でも、変だ。養子なのにどうしてステータスに聖女があると思ったんだ?
……確かにその笑顔は聖女っぽかったけど。
それ以降の会話は聞こえなかった。なんでそんな事を話していたのかは気になったけど、聞くのをいつの間にか忘れていた。
そしてしばらくの月日が流れた。
洗礼を受けて以来、あの子は村に帰って来ていない。
両親にその事を話してみても、あっちで忙しいらしいとしか言われなかった。
……もしかしたら俺のせいかもしれないと思ったのはすぐだった。でも、どうやって接すればいいのか分からなくて、そもそも会えないから話せなくて。
どうしようかと悩んでいるうちに、気づけば2年の月日が流れていた。
「アッシュは…王都に行かないほうがいいかもしれないな」
「えっ!?」
突然なんでそんなことを言われたのか分からなかった。
だって、王都にいくとずっと思っていたから。
「アッシュが勇者であることはかなり知れ渡ってしまったからね……行ったら学園で授業どころじゃないかも」
母さんから理由を言われてようやく理解する。確かに村でも人だかりができるほどだし、仕方ないのかもしれないと思った。
ただ……また、話す機会を失ったと思った。
それからしばらく村でレミナに勉強を教えてもらっていると、両親が王都に行くと言い出した。いつ戻るかは分からないと言われた。
「なんで?何しにいくの?」
「ちょっとした友人の助けに行くんだ。なぁに。心配はないさ。それまで、勉強頑張れよ」
本当は自分も行きたいと思った。けれど、両親は遊びで行く訳ではない。だから言わなかった。言えなかった。
両親が王都に行って、数日。勉強の合間の休憩をとっていると、下の階、つまり玄関から、母さんの声が聞こえた。
座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、俺は一目散に玄関へと走った。
そして、目の前に母さんの姿を見つけて、思わず笑顔になる。
「母さん!お帰り!」
そう言いながら駆け寄る。
「ただいま、アッシュ。いい子にしてた?」
「うん!ちゃんと勉強してたよ」
「そう、いい子ね」
そう言って頭を撫でてくれた。ちょっと恥ずかしいけど、撫でられるのは嬉しい。
「あれ?フィリア様は?」
……でもレミナの一言で気持ちが一気に落ち込んだ。
「まったく……」
その言葉は誰に対してだったのだろう。少なくとも自分に向けてではないと思った。だとすると……
「…"あれ"がいるの?」
言ってから思わずしまったと思った。でも、どう言ったらいいのか分からなくて、ついそう言ってしまった。
「あれ、が何か分からないけど、フィリアならいるわよ。今はちょっと居ないけど、帰ってきてるわ」
母さんの声に少しだけ怒りが含まれていることに気づいた。言わなきゃよかった……。
でも、今は?
「そう…」
なんだろう。会いたい、話したかったはずなのに、会いたくない。矛盾した、変な気分になる。
「アッシュ、ちょっと話があるのだけれど、いい?」
「なに?」
「ここじゃなくて、座ってゆっくりと話しましょうか。レミナ、お茶を用意してくれる?」
「は、はい…えぇっと、何人分でしょうか?」
「今は2人分。レミナも飲みたいのなら、用意していいわよ」
「お気遣いありがとうございます。では」
そして母さんから聞いた話は……正直信じられなかった。
養子だって言われたのに…実は養子では、ない…?
「……な、んで?」
自分でも驚くほど掠れた声が出た。
「アッシュを信じてなかった訳ではないのよ?ただ……教えるには早いんじゃないかって」
「そんな、こと」
「じゃあもし3歳くらいのときに言われて、言いふらすことなかったって確信は持てる?」
それは……無理、だったかも知れない。いや、確実に無理だ。
「………でも、それじゃあフィリア…いや、お姉ちゃんは、自分が養子ということにされているって知っていて、僕の言葉を受け止めていたってこと?」
「そうよ。フィリアは私から言われて、ずっと黙ってた。じっと耐えていた」
「そ、んな…」
養子であったなら、聞き流すくらいはできただろう。でも、血の繋がった姉弟だと知っていて聞いていたのなら……
「だからアッシュ。ちゃんと謝って仲直りするのよ?」
「…………う、ん」
辛うじて返事をする。謝って許されることなんかじゃないけど、それでも謝らないと。
「これでいいわよね?フィリア」
「いいよ」
「「え!?」」
突然聞こえる久しぶりに聞く声。間違いない。けれど、どこに…?
辺りをキョロキョロ見回すけれど、姿はない。
「フィリア…」
「はいはい」
母さんの呆れたような声に、また返事が聞こえる。すると母さんの隣の視界が歪んで……久しぶりに見る姿が目に入った。
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「あ、え…」
「なに?」
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だから木剣を持って素振りをする。こうすれば気持ちの整理が自然とできるから。
「アッシュー」
ビクッと体が強ばる。振り向きたくなくて、そのまま木剣を振り続ける。
「おーい」
無視だ無視!
「えい」
間の抜けた声が聞こえ、そんな言葉の様子とは裏腹に強風が吹きつけ、手に持っていた木剣が持っていかれた。
「うわ!?」
あまりにいきなりのことで、しりもちを着いてしまった。
「ごめんね。大丈夫だった?」
「っ!」
思わず距離をとってしまった…というか謝るということは、あの風は魔法ってことだよな?無詠唱であれか……
「……ほんと、なのか?」
口が勝手に言葉を発していた。
「え?」
「……ほんとの、お姉ちゃん、なのか?」
「あぁ。それね。ほんとだよ。黙っててごめんね」
「いや……」
顔を見られたくなくて、見たくなくて、また後ろを向いてしまう。
「その……「ごめん」え?」
後ろを向いたままで卑怯だと思う。けれど、俺にはその勇気がない。
「ごめん…今まで偽物とか…」
「あぁ。別にいいよー」
「軽くないか!?」
あまりの軽さに驚いてつい振り向いてしまった。
「軽かったらだめ?」
「あ、いや、そういう訳じゃ……」
振り向いてしまい、気まずい。……本当にそこまで深刻に考えてないみたいで、良かったとほっとする自分がいるのが、情けないくて。
「じゃあやる?」
「え、えぇ!?な、なに言ってんだよ!?」
な、何を言ってるんだ!?なんで、そんなこと……。
自分の顔が火照るのが分かる。
「いや、打ち合ったらいいかなぁと。あれで」
そう言って指さしたのは…木剣。
えっとー…待ってくれ。つまり、やるっていうのは、木剣で打ち合いをやる?ってこと……
うわぁぁぁぁぁ!!恥ずかしい!!な、なんてこと考えてたんだ俺は!?
……穴があったら入りたい!!
「という訳で、やろうか」
「という訳ってなんだ!?」
「いいからいいから」
目の前の女の子……お姉ちゃんがどこからか木剣を取り出して構える。
これは……やらなきゃだめ、か?
仕方なく俺は地面に落ちた木剣を拾い、正面に構えた。
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