上 下
101 / 159
第4章 王都 学園高等部生活編

第100話 真相

しおりを挟む
 コルギアスの体が蒼い炎に包まれ、焼かれていく。
 その様子を見届け、私はマリアの方へと駆け寄る。

「ママ、マルティエナさんは?」
「大丈夫よ。怪我はないわ」

 私も見てみる。確かに擦り傷などはあるが、大した怪我ではない。まとわりついていた魔力も消滅している。

「よかった」
「そうね……でも、フィリアも自分の心配しなさい。魔力もう無いでしょ?」
「それは…」

 確かに魔力はほとんど無かった。
 でも、マリアから貰った魔力と、自然回復でだいぶ回復している。
 ……それでも総量の1割も満たないが。

「ロビンも大丈夫よ」

 後ろからリーナの声が聞こえた。

「ほんと?」
「ええ。もう目を覚ましたわ」

 見てみると、ドノバンさんに支えられながらも立ち上がっていた。まだ休めばいいのに。

「よかった…」
「ええ。でも、まだ終わってないわ」

 私たちの目的。それは生徒の救出。それはまだ終わっていない。

「でも、ここはどこなの?」

 周りを見渡せば、岩肌が目に入る。明らかに場所が変わっている。

「多分、次元の狭間ね」

 次元の狭間…

「おそらくコルギアスを倒したことで、この空間は崩壊する。というか、もう既に崩壊してきている」

 ほら、とリーナが指さした先を見る。そこは岩肌が無くなり、見覚えのあるタイルが現れていた。

「それじゃあ、このまま待ってたらいいの?」
「ええ。そうよ」
「フィリアは休みなさい。疲れたでしょう?」
「魔力はもう大丈夫だよ?」
「そっちじゃなくて、精神的に、身体的にってことよ」

 正直言うと、どれも疲れていない。魔法で治せてしまうからね。
 でも、これは断ることは無理そうなので、有難く休ませてもらおう。
 とはいえ眠気もないので、壁際に座り、瞑想することにした。

 ーーーーーーー

 フィリアが壁際で瞑想を始めた。漏れ出ている魔力は、戦う前とは比べ物にならないほど弱くなっているけれど、回復していっているのか、少しづつ増えている。

「フィリアちゃん、凄いわね」
「ええ。私の娘なのが誇らしいけど……怖くもあるわね」

 フィリアには聞こえていない。周りの音すら聞こえないほど、集中している。
 膨大な魔力。それを今は全て制御できているとは思う。だけどこれからは?
 フィリアはまだ成長するはず。それを今後も制御することができるか不安でしかない。

「大丈夫じゃない?フィリアちゃんはしっかりとその力を分かっているから」
「そう、ね…」

 私が信じてあげないと。膨大な魔力を持っていても、女神の使徒であっても、私の娘であることに変わりないのだから。

「うぅ…」
「マルティエナ!?」

 マルティエナが目を覚ました。まだ顔色は悪い。

「あ、れ?私…」
「よかった…ほんとによかった…」

 マルティエナは状況を理解できないらしい。それも無理はないけど。

「大丈夫?」
「うん…私、確か…」

 そこまで言って、口を噤む。見るからに顔色が悪くなる。

「ごめん、な、さい…」

 涙を流しながら、謝罪の言葉を出す。

「あなたは悪くないわ」

 そう言っても、マルティエナは首を振る。どうして?

「私の、せい、なの」
「なにが?」
「私が…私が…うわぁぁぁ!」

 号泣して抱きついてきた。なにが言いたかったの?
 とりあえず宥めて落ち着かせる。

「落ち着いて、ゆっくり話して」
「……うん」

 私から離れ、マルティエナは大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

「この事件。実は、私のせいなの」

 はっきりと、私の目を見てそう言った。

「え…どういう、こと?」

 頭の中は混乱状態。マルティエナが、元凶…?

「私の国に、世界樹があるのは知ってる?」
「ええ。それはもちろん」

 知識として当たり前のものだ。

「それがね…乗っ取られたの」
「乗っ取られた…?」
「うん。正確にはそのダンジョンが、だけど」

 世界樹は中がダンジョンとなっており、もっとも難易度が高いダンジョンと呼ばれている。でも、それが乗っ取られた?

「でも。それとどう繋がるの?」
「ここで問題を起こせば、集まってくれるでしょ?」

 私はなにも言えなかった。どうして、なにも相談してくれなかったの?

「そんなの…言えばすぐ来たのに」

 そう言うと、マルティエナは首を横に振った。

「ダンジョンが乗っ取られたのは、秘密のことなの。だから、呼び寄せて来てもらう訳にはいかなかった」
「つまり、秘密裏に集まって来てもらう必要があった?」

 マルティエナは頷いた。
 通信の魔道具は、傍受されることがある。だから、1番安全なのは集まって話すこと。でも、話すためだけに集まるには時間がかかる。
 だから、緊急事態を起こして急いで集まってもらったってことね。

「でも、それでも生徒を危険な目に遭わせていいとは思わない」
「うん。だから私は生徒を保護する予定だった。怪我させたりするつもりも、ここまで大事にするつもりもなかった」
「じゃあ生徒は無事なの?」
「……分からない」
「どういうこと?」
「……このダンジョンも乗っ取られたの」

 この、ダンジョンも?

「誰、なの?」
「分からない。ローブを被っていたから」
「ローブ、ね…」

 確かに居たわね。このダンジョンに。

「でもどうやって?」
「それも分からない。でも、それによってダンジョンの構造が変えられてしまった」
「それは…」

 ダンジョンの構造を変えることができる人なら、乗っ取るのも簡単だったのかしら。

「目的は?」
「このダンジョンを乗っ取ったのは、六大英雄を消すためって言ってた…」
「消すため…でも、それにしては本気で来てないわよね?」
「うん。それは寸前で私が変えたの。残していたバックドアからでもダンジョンを変えられるようになっていたから。それでみんなを守った」

 それが、あの状態だった、という訳ね。

「でも、それなら罠とか無くせなかったの?」
「みんなを疑った訳じゃないけど、やっぱり腕は落ちてるかなって思ったから、その後の戦いのウォーミングアップにって…ごめんなさい」

 だからそれぞれ内容が違ってたのね。

「これで、謎は解けた…でも、マルティエナが乗っ取られたのは何故?」
「バックドアを使っていたことがバレて、罠を張られてたの…それで乗っ取られた」

 そういうことね。

「理解は出来るけど、その前に話して欲しかった」
「そうだな。相談しても誰も責めはしない」
「うん……ごめんなさい」

 でも、だとすると子供たちが危険な状態にあるかもしれない。早くしないと……



しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

処理中です...