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第4章 王都 学園高等部生活編

第99話 最後の戦い

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 コルギアスが口を大きく広げ、ブレスの最終体勢をとる。
 それと同時に私は一気に身体強化をかけて、顎の下へと滑り込む。

 クギャァ!?

 コルギアスが困惑の声を出す。
 それもそうだろう。さっきまで格好の的だと思っていたものが、一気に自分の死角に回り込んできたのだから。

「体術・兎月蹴りとげつげり

 これは足で上に蹴りあげる武闘スキル。
 片足がコルギアスの顎の下にあたり、上へと蹴り上げる。
 身体強化を足に集中した結果、コルギアスの口を上へと向けることに成功する。

 簡易型ブレスは、いわば単発式のエネルギー弾のようなもの。それが天井へと発射される。

 ドガァァァンッ!!

「おぅ…凄まじい」

 天井が崩れ、岩がコルギアスへと降り注ぐ。

 ギャァァァ!!

 だが、それは大してダメージにはならない。でも、それでいい。

「さぁ。こっちだよ」

 コルギアスの注意を引ければそれでいい。
 コルギアスは私のことを見つけて、睨みつける。
 もう、私しか見えていない。

「フィリア!?」
「大丈夫!」

 マリアが心配する。まぁそれも当然かもね。
 コルギアスが襲いかかる。ブレスは諦め、巨大な前足で踏みつけようとする。

「当たらない、よっ!」

 動きが遅くともその範囲が広い。かわすのはやっとだ。

 ロビンに目配せする。まだ、タイミングじゃない。
 ロビンに渡したコルギアスの魔剣は翡翠の力を持っている。でも、劣化版。だからこそ、弱点を狙う必要がある。

「あそこが…逆鱗」

 首の1部の鱗が逆さになっている所がある。それが逆鱗。鱗の中で最も硬く、最も弱い。
 矛盾しているようだけど。言い得て妙なのだ。
 そこに刃が通れば、倒すことができる。故に弱点。どんなになまくらな武器でも、20センチ入れば、倒せる。

「だからこそ注意を引かないと、ねっ!」

 足だけでなく尻尾でも攻撃してくる。受け止めることはできない。だから、見せたくはなかったけど、空歩を使って空中に避ける。

「フィリアが…飛んだ?」

 うん、まぁ飛んだよ。歩いたに近いけど。

「これ、以上はっ!」

 本気を出せば何とかなる。でも、それはしない方がいい。エルザがわざわざ祝福を与えたんだ。それにはなにか理由があるはず。ならば、この敵は私が倒さない方がいい。
 ……だよね?

「なかなか隙がない…!」

 ロビンが叫ぶ。確かにただ暴れてるだけだけど、そのせいで懐に入り込めない。
 だったら…作ってみせる。

「来なさい!」

 私は地面に降り、真正面に立つ。

 グワァァァァァァァ!!

 一気に口を開け、突進してくる。

「ホーリーチェイン!」

 光り輝く鎖が様々な場所に巻き付く。私の目の前で突進が止まる。

「くっ!パパ!」
「お、おう!」

 ほとんど私の力ではあるけど、仕方ない。
 この鎖は込めた魔力に比例して強度が上がる。今の私ができる最大の魔力を込めた。それでも鎖が悲鳴を上げる。どれだけ強いのよ!!

「おらぁぁ!」

 コルギアスの魔剣が青白い光を纏う。でも、炎のようにはなっていない。
 コルギアスの魔剣が逆鱗に突き刺さる。

 グギァァァ!!

 コルギアスが暴れ出す。それと同時に鎖がとうとう引きちぎられる。私の魔力はほぼ空に近い。

「うぉ!?」

 首が持ち上がり、ロビンが空高く飛ばされる。魔剣はまだ奥に届いていない。

「キュアノス、イレーネっ!」

 翡翠刀ではないけれど、同じ光ならっ!
 その予想は当たっていたようで、コルギアスの魔剣が蒼い炎を纏う。

「何だ!?」

 ギャァァァ!!

 コルギアスが苦しみの声を上げる。炎は静かに、しかし確実にコルギアスを浄化していく。

 その時、ロビンがとうとう手を離してしまった。

「エアクッションっ!」

 魔力が少なくてもそれくらいならできる!
 地面に衝突する瞬間、落ちる勢いがゆっくりになる。よかった…

「フィリアっ!?」

 マリアが駆け寄って来るのが目に入る。

「大丈夫!?」
「大丈夫、だよ…」

 弱々しく微笑む。正直しんどい。今までで1番かもしれない。

「フィリア…」

 マリアが私の手を握る。そこから、優しい、マリアの魔力が流れ込んでくる。

「マ、マ?」
「まったくもう…無茶して!」

 マリアの顔は泣きそうだ。まぁ無茶をしたという自覚はあるんだけどね。

「大丈夫だよ、それより、コルギアスが」

 コルギアスはまだ生きている。炎は着実にコルギアスの体を崩壊させていく。

「はぁ…」

 疲れ切った体に鞭打つ。まだ、私のは終わっていない。

「フィリア…」
「私がすることだから」

 ロビンの手から離れたことで、炎の勢いは弱くなってしまっている。このままでは倒しきれない。

「翡翠、力を貸してね」
『もちろん!』

 ロビンはさっきの衝撃で気を失っている。リーナはそれの介抱に。ドノバンさんはそれの護衛を。

「ママは…マルティエナさんを」
「…分かったわ」

 さてと。私は光学迷彩を展開する。私の職業を知る人は少ないに越したことはない。漏らすとは思えないけど。それでもね。

「翡翠」
『ほいさ!』

 ……どこでそんな言葉覚えた。

 私は空歩でコルギアスの頭に近づきつつ、翡翠を抜く。その刀身に蒼い炎がまとわりつく。

「これで、終わりっ!」

 脳天に翡翠を突き刺す。

 ギャァァァ!!

 コルギアスが暴れる。私はさらに深く突き刺す。逆鱗を狙わなくとも、その鱗を貫き、脳に届けば倒せる。まぁ力技だよね。

 グル……

 とうとうコルギアスが暴れなくなる。それと同時に私は炎…聖火を燃え上がらせる。これで浄化できる…

「ふぅ…」

 翡翠を引き抜き、コルギアスの頭が地面に落ちきる前に地面へと降りる。

 これで、やっと終わるね。
 ……で、ここからどうやって帰るんだ?





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