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第4章 王都 学園高等部生活編

第95話 魔法陣起動

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 ロビンが来て、とにかく話を聞くことにした。

「ロビンの方はどうだったの?」
「どうっていってもなー…とにかく罠が多かった。あと、蜘蛛」

 罠は私の方には無かったな。

「罠で蜘蛛…トラップ・スパイダー?」
「ああ。とんでもなく面倒くさかったぞ」

 トラップ・スパイダーは魔物の1種で、デカい蜘蛛。
 自分の糸を利用して罠を作る。
 落とし穴や普通に巣を張っただけのものから、個体によっては罠スキルを持っていることもあり、転移の罠など厄介なものまで作る。かなり面倒な魔物。

「トラップ・スパイダーまでいるなんて…」

 本来このダンジョンにはいない魔物だからね。

「こっちには罠は無かったわね」
「こっちも」
「そうだったのか。まぁそれはそれで良かったな」

 まぁね。聞くとマリアも同じ感じだった。
 まさかロビンだけが鬼畜だったなんてないよね?

「タイルの破片は?」
「最後の方に宝箱に入ってたな」

 ……なんで宝箱なんかに入ってるのよ。まぁスルーされるよりはマシかもしれないけど。逆に怪しく思うよ。でも意識操作されてる節があるしなぁ。
 一体なにが目的なんだか。

「お。マリアにロビン。フィリアもいるじゃないか」

 扉が開いて入ってきたのはドノバンさんだった。

「ああ。大丈夫だったか?」
「無論だ。まぁ少し手間取ったがな」

 確かにドノバンさんは大盾使いだからね。戦うのが専門じゃない。一応バトルアックスを持ってはいるけど。

「ドノバンの方はなにがあったの?」
「それがなぁ。罠だらけだったんだよ」

 ロビンと同じかな?

「トラップ・スパイダーはいた?」
「んにゃ。そもそも魔物が1匹もいなかったな」

 あら?

「どういうこと?」
「とにかく四方八方から矢やらナイフやらが飛んできてな。それをずっと防いで進んできたんだ」

 なるほど。大盾が活きるね。でも、なんかそれも仕組まれてる気がする。
 上手くいき過ぎてる。相性とかね。

「タイルの破片はあった?」
「破片……あぁ。これか?」

 やっぱりドノバンさんも持っていた。

「地面に落ちてたんだよ」

 それを拾ってきたのね。もう確定かな。
 マリアがドノバンさんからタイルの破片を受け取り、はめ込む。

「ピッタリ。あとは3人ね」
「なんだ?集めなきゃならんのか?」
「分からないのよ。でも、わざわざタイルを散らばらせる様なことしてあるんだから、何かありそうじゃない?」
「確かに…」

 この部屋にはもうひとつ扉がある。でも、押しても開かなかった。
 魔法で吹き飛ばそうかとも思ったけど、そもそも扉に魔法無効アンチマジックがかけられているらしく、壊せなかった。
 私の攻撃ですら無効化したんだから、かなりのものだと分かる。この魔法を敵がかけたのだとしたら、だいぶやばいかもしれない。

「お、みんな集まっているのか」
「あら、本当ね」

 次に入ってきたのはレビンさんとリーナ。あと残りはマルティエナさんか。

「大丈夫だった?」
「ああ。頭痛い」
「どうしたの?怪我でも……」
「いや、使い過ぎて頭が痛いんだ」

 どういうこと?

「謎解きばっかだったんだよ」

 ……どこの密室ですか?それ。
 レビンさんはここに来るまでずっと謎解きしていたらしい。
 謎を解くと扉が開いて先に進める。そしてまた謎を解く。それの繰り返しだったそうだ。
 私だったら無理だね。
 ちなみにリーナは私たちと同じく、モンスターハウスだったらしい。風魔法で切り刻んだそうな。
 ……怖いよ。

「まぁ良かったんじゃない?戦闘苦手でしょう?」
「まぁな…」

 やはりそうか。それぞれが死なない範囲の困難を用意している。まるで試すように。
 私とマリア、リーナは戦闘力を。ロビンは罠解除の器用さを。ドノバンさんは防御を。レビンさんは頭脳を。それぞれ試されている。
 …あれ。じゃあマルティエナさんは?

「マルティエナはまだね。それじゃあ2人ともタイルの破片は持ってる?」
「あるぞ」
「あるわ」

 2人からマリアが破片を預かり、また欠けたところにはめる。

「あら?どういうことかしら?」

 いきなりマリアがそう言った。私はマリアの元へと駆け寄る。

「どうしたの?」
「……これ。二人の分で埋まるわ」
「え?」

 マリアの手元を見る。確かにピッタリと埋まる。全てが。だとしたらマルティエナさんの分は?

「マルティエナさんは…?」
「…有り得ないとは思うけど、まさか、ね…」

 まさか…

「…やられた?」
「…まだそう決まった訳じゃないわ」

 そらそうだ。勝手に殺したことにするのは、まだ早い。

「とりあえず、はめてみましょう。みんな、念の為魔法陣の上からどいてね」

 私も敷物を片付ける。そしてロビンから貰った方の剣をだして、臨戦態勢になる。

「はめるわよ」

 マリアが最後のタイルをはめ、直ぐに飛び退く。
 すると、魔法陣が光を放ち始める。でも、そんな綺麗とか言える光じゃあない。禍々しい、あの地龍の時と同じ光。

「なんなのよ……これは」

 私の横から言葉が聞こえる。マリアだ。
 マリアは固唾を飲んでこの光景を見つめている。その他の人も同様だ。


 そして、魔法陣の中央から、なにかがせりあがってきた。











 ……………それは、私がよく知るだった。



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