上 下
91 / 159
第4章 王都 学園高等部生活編

第90話 罠

しおりを挟む
 えっとー…今の状況を説明しますと……落ちてます。絶賛急降下中です。

「ちょっと待ってぇぇぇ!!?」
「うおぉぉぉ!?」

 なんでこんなことになってるのか。それはほんのちょっと時間が遡る。

 ───────

「いねぇな…」

 5階層からずっと進んでいるけれど、一向に魔物の気配はない。とはいえ、気配を消すことができる魔物もいるにはいるので、警戒し続ける必要がある。

「フィリアも反応ない?」
「うん…全く」

 ダンジョンの力を奪っているのなら、魔物がいないということも理解できる。ただ、今まで行方不明になっている人はここを通ったってことだよね。不信に思わなかったのかな?

「とりあえず、一旦戻るか?」

 まだ私たちは6階層にいる。5階層のゲートキーパー部屋に戻ることは可能。確かに一旦戻って状況を整理したほうがいいかもしれない。ゲートキーパーは時間が経つと復活するそうだけど、それにはまだ時間があるらしい。

「ええ、そうね。戻りましょうか」

 私たちは道を引き返して5階層へ戻ることにした。
 ……だけど

 ガチャンッ!

「へ?」
「お?」
「え?」

 戻ろうとした矢先、突然私たちの下の地面が

「えぇぇぇぇ!?」

 そして冒頭に戻る。いや、まさか地面が落とし穴の罠になってるなんて、夢にも思わなかったんだもの。

「どこまで落ちるんだよぉぉぉ!」

 ロビンの悲痛な叫びが木霊する。絶対このまま地面に衝突したら死ぬ!

「あ!」

 突然地面が目に入る。ヤバい!?

「エアクッション!!」

 咄嗟に魔法を使う。エアクッションはその名の通り空気のクッション。かなりの速度で落ちてきたはずだから、魔力を多めに込めて発動させる。

 ボフンッ!

 せ、成功…

「助かったぁ…」
「ええ…ありがとう、フィリア…」

 マリアもリーナもパニック状態だったから、とても魔法は使えなそうだったのよね。咄嗟に魔法を使えた自分を褒めたい。

「ここは…」

 ライトはまだ健在なので、落ちた場所がよく見える。

「横穴…?それに壁に魔石が埋まってる…」

 どうやらただの穴ではないらしい。マリアの言葉通り本来落とし穴にはないだろう横穴があって、壁には無数の小さな魔石が埋まっていた。

「これは…エアクッションの魔法が込められた魔石?」

 それが埋め込まれているってことは、どうやら死なせるつもりはなかったみたい。でも、なんのために?

「ひとまず、動けるか?」
「ああ、大丈夫だ」
「私もよ」

 一応みんなを鑑定してみると、擦り傷はあっても大した怪我はないみたい。

「…進むしかないか」

 どちらにしろ上に上がるつもりはない。魔法を使えば可能かもしれないけど、わざわざこんな怪しい装置を放っておく訳にはいかないもの。

 ドノバンさんを先頭に横穴へと入っていく。すると気配察知が曇ったような感覚になった。どうやら妨害されているみたい。

「怪しすぎるわね…」
「うん…それに魔法もちょっと使いにくい」

 ずっとライトを使ってるから分かるけど、いつもより魔力の消費が多い。と言っても私にとっては微々たるものだけどね。

「え、本当に?……確かにそうね」

 マリアが軽い風を起こして確認する。

「消費が多いというより…」
「吸収されてる感じ?」

 そう。感覚的には吸われてる気がする。そのせいで魔法を発動するのに必要な魔力が多くなっているみたい。それに体からも少し吸われてる。

「ひとまず、結界」

 全員の体に結界を纏わせる。これで魔力が吸われることはないはず。

「フィリア、ほんとに大丈夫なの?そんなに使って…」
「うん…」

 正直言って、怖い。無くなるかじゃなくて……多すぎて。いくら使っても無くなる気がしない。また増えたかなぁ…?

「無理しないでよ?…あなたは私の大切な子なんだから」
「うん…ありがと」

 直接は言ってないけど、おそらく私が使徒だからって関係ないって言いたいんだと思う。使徒であっても大切な子には変わりない、と。
 ……嬉しいね。

「おい、分かれ道だ」

 先行していたドノバンさんの先には7つの分かれ道。7つ…?
 今私たちは全員で7人。丁度同じ。いや…これは…

「これって明らかにわざとよね?」

 マリアがそう呟く。明らかにわざとだ。
 1本1本の道は人1人がかろうじて通れる程度。

「あえて乗るか」
「…そう、ね」

 マリアが迷いながら返事をする。理由は多分…私だ。

「ママ、大丈夫だから」
「フィリア……ええ、そうね。だって私の子だものね」

 マリアの瞳は未だ迷いの色が見える。だけど、例えこれがもし罠だったとしても、私は行く。わざわざこんなことをするのには理由があるはずだから。

「よし。じゃあ俺はこっち」
「私はここを行くわ」
「じゃあここだ」
「私はここ」

 それぞれが配置に着く。私は1番右端。マリアはその隣り。

「なにかあったらここまで戻ってくることにしよう。みんな十分に気をつけてな」
「ええ、もちろん」

 頷き合い、一斉に通路へと入っていく。マリアも覚悟を決めたらしく、1度私を心配そうに見てから、入っていった。

「私も…」

 結界は残してあるけど、ライトは一つだけ。まぁ簡単な魔法だから、それぞれが発動させるよね。
 そう思って、私は通路へと足を踏み入れた。






しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

処理中です...