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第4章 王都 学園高等部生活編

第79話 馬鹿な人が来ました

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 オーガはダンジョンで倒されたから、ダンジョンに吸収されるようにして消えていった。本来ならドロップアイテムがあるはずなんだけど……

「ドロップがない?」
「え?あ、ほんとだわ。どうしてかしら」

 こればかりはレビンさんも分からないらしい。倒したのは今回が初めてだったから、気づかなかったんだって。

「とにかく進むしかないわね」

 リーナの言葉にみんなが頷いた。とにかく進んで情報を集めないと。

 ーお姉ちゃん。ちょっといい?ー

 うん?どうしたの?

 ーどうやらその事件……ローブのやつらが関わってるー

 ……やっぱり?そうかなって思ってはいたのよ。

 ーだから…ー

 分かってる。

 ー…ごめんねー

 今更何言ってるのよ。

 ーいやそうじゃなくて…ー

「フィリア?どうしたの、いくわよ」

 エルザとの会話はマリアによって遮られた。何を言おうとしていたのかな?心の中で呼びかけてみても反応がない。多分忙しいんだろう。ほんとに重要なことなら多分忙しいのをほっぽり出すだろうし、最後の言葉はあまり重要ではないんだろうね。

「うん、今行く」

 走ってマリアたちに合流する。すると、気配察知に反応があった。これは…人?

「な、なんだお前らは!?」

 暗闇から現れたのは……真っ黒なローブを着た男だった。
 まさか今出てくるとはね。

「ここは子供だけのダンジョンじゃないのか?!」

 ……この人馬鹿か?確かにここは学園のダンジョンではあるけど、生徒だけのダンジョンではない。たまに冒険者に解放しているらしい。その日は生徒は入れないんだけどね。

「そんな情報どこで聞いたのよ」

 呆れ気味にリーナがそう言った。

「それよりあなたは何者?」

 マリアが冷たい瞳でローブ男を見つめる。

「そ、そんなこと誰が言うか!」

 ですよねー。分かってた。だけどここにいる人たちはそんなこと関係ない。捕まえればいいと思ってるから。


 ……もしあの時みたいに自爆の魔道具を持っていなかったらいいけど。

「とにかくあんたは俺たちの敵か?」

 ロビンが臨戦態勢で男に尋ねる。その様子を見て、男はすこし怯えているようだ。小心者だな。

「そ、そうだ!」

 言い切っちゃったよ、この馬鹿。

「そうか。なら」

 ロビンは剣を引き抜き、男に向けた。

「やるだけだ」
「ふ、ふん!ならこれを倒すがいい!こい!」

 そう叫ぶと、地面に魔法陣が展開された。かなり小さめだけど、数が出てきたら不味いな。

「さぁいけ!」

 魔法陣から出てきたのは……ネズミでした。え、拍子抜けだって?いや、それが普通のネズミなら、ね。

「ちっ!軍隊ネズミか!」

 はい、そうです。普通じゃありません。簡単に言ったら、軍隊アリのネズミ版。わらわら出てくる。
 ……ちょっと気持ち悪い。

「さらばだ!」

 なんともダサいセリフを言いながら去っていった。走って去るあたりもダサすぎる。

「フィリア!もしかしたらあなたを守りきれないかもしれないわ!」

 おっと。今はそんなこと考えない。敵を倒さないとね。

「大丈夫だよ。自分の身くらい自分で守れる」

 とりあえず結界を全員に纏わせておく。

「フィリア!?」
「大丈夫だから。ほら、来たよ」
「ああもう!あとで話があるからね!」

 それは……ちょっとお断りします。え、断れない?……頑張ろ。

「うわぁ…すごい数」

 まだまだ魔法陣から出てくるよ。多分あれを壊さないとどんどん出てくると思う。だけど、その前にいるネズミの数が多い。

「ガルマ!頼める?」
『無論だ、主よ』

 私が呼んだのは契約した神獣。フェンリルだ。渋い声が聞こえたと思ったら、どこからともなく現れた。あ、正確には私の影から。

「魔法陣をお願い!」
『分かっている』

 ガルマは神獣であるが故に魔法が強い。特に風だ。自身の周りにかまいたちみたいな風を纏い、突っ込んでいく。うわぁー…エグい。私はやりたくない。返り血すごいから。

「うぉ?!なんだ?」
「私の契約獣だから大丈夫!」

 うん。マリアから物凄い目線を感じる。これは…あとの話が長くなる予感。

「あとで聞くからね!」

 ですよねー。まぁいっか。話す手間が省けたと思えば。
 さてと。私もやりますかね。

 アイテムボックスからロビンから貰った剣を取り出す。刀は…多分あとで面倒事になりそうだから出さない。

 剣に氷属性を纏わせる。地面に向けて横に振るえば、一瞬で一直線にその地面が凍りついた。
 そしてそこをネズミが通れば……ツルツル滑る。うん。だって一体一体倒すの面倒なんだもの。小さいし。だから滑るネズミを風魔法で押しやり、その先に炎の柱を作り出す。一瞬で焼却装置の完成!

 ……マリアとリーナからのジト目が凄い。いや、これ結構大変なのよ?3属性の魔法を同時に制御してるんだから。

 ……あ、そこか。やべ、やっちゃったかな?

「フィ~リ~ア~!」
「ひっ!」

 ネズミなんかよりマリアの顔が怖い。

『む。主、敵か?』

 いつの間にか魔法陣を破壊して戻ってきていたガルマが、マリアを敵認定しようとした。

「いやいや、違うから!?やめて!?」
『それならばよいのだが…』

 うん。ガルマがなにかやらかす前に影に入れましたよ。ええ。

「終わったぞー」

 ロビンが少し疲れた様子でそう言った。周りには沢山のネズミの死骸。
 ……私の周りを除いて。

「じゃあちょっとお話しましょうね?」
「あー、ちょっと用事が…」

 思わず逃げようとしたら首根っこ掴まれました。ぐぇ。

「あるわけないわよね?」
「は、はいぃ…」

 こ、怖い……お手柔らかにお願いします……
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