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第4章 王都 学園高等部生活編

閑話 愛を誓う日

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今日はあの日なので…思わず書いてしまいました。

────────────────────────────────────


「そう言えばフィリアちゃんは送る人いるの?」

 ある日のこと。学園を終えて帰る準備をしていたら、いきなりベルからそんなことを聞かれた。

「アレって?」
「フィリアさん知らないのですか?」

 キャサリンまでもが、知っている前提で話しかけてきた。いや、まじで分からない。

「うん、知らない」
「はぁ…疎いにもほどがありますわよ…」

 ……なんか呆れられた。解せぬ。

「で?なんの事?」
「明日は愛を誓う日と呼ばれているのですわ」

 そんな日あったんだ。

「で、それとどう繋がるの?」
「その日には、親しい間柄に対して、感謝の気持ちを込めてチョコを送るのですわ」

 …………うん?それって……

 ーうん。バレンタインだよー

 ですよねー。てかこっちにもあったのね。

 ー私が広めたの。面白そうだったからー

 …さいですか。

「ふーん…それって男の人も送るの?」
「ええ。そうですわ」

 なるほど。バレンタインとホワイトデーを合わせたような感じかな?

「うーん…それなら私はベルとキャサリンとかに送ろかな」
「…はぁ」

 なんでため息!?

「ほんとにいませんの?殿方とか」

 と、殿方って……

「いないいない。それに私なんかから貰う男の人が可哀想だよ」
「「…はぁ」」

 今度はダブル!?

「フィリアちゃんって…」
「鈍いですわよね…」

 なんか2人の反応が酷い!?

「まぁそれが…」
「フィリアさんらしいですわね」

 2人が意気投合してるんですけど?私だけ蚊帳の外ですか!?

「そういう2人はどうなの?」
「そ、それは…」
「…聞かない約束ですわ」

 ……まぁいっか。心を読むことはできるけど、それは無粋だよね。

「じゃ、じゃあ帰ろっか!」

 ベルが強制的に会話をぶった切った。

「そ、そうですわね!それでは御機嫌よう!」

 そう言ってキャサリンは去っていった。ていうか、今までそんなこと言って去ったことあったっけ?

「帰ろっか」
「う、うん」

 ベルと共に学園を後にする。あ、帰りにチョコ買っとこ。

 ◆◇◆◇◆◇◆

 次の日。いつものように学園へと向かう。朝のうちにベルとリーナ、セバスチャンさんには、昨日買ったチョコを渡しておいた。とてもお世話になってるからね。

「フィリアちゃんは、あとキャサリンさんに渡すの?」
「そのつもりだよ。ベルは?」
「私はキャサリンさんと…」

 そう言って顔を赤らめる。あー…

「…シリルね」
「っ!なんで分かったの!?」
「あら、図星か」
「うっ!」

 自爆。いや、誘爆?

「まぁいいと思うよ」
「そ、そう…?」

 そう言えば、私はシリルに買ってないや。怒るかな?ま、それはそれで面白そうだし、別にいっか!

 話しているうちに教室へと到着。扉を開けると、キャサリンがもう既に座っていた。

「おはよ」
「おはよう!」
「ええ、おはようですわ。それと…フィリアさん」
「なに?」
「……頑張ってくださいまし」

 …はい?キャサリンの言葉の意味が分からないまま、いつもの席に着くと…

「……なに?これ」

 実は、教室の机の下には収納するスペースがある。しかも空間魔法で拡張されているため、かなり広い。




 …………そして、その中にこれでもかっていうほどのチョコが、ギュウギュウに詰め込まれていた。しかも、その一つ一つが丁寧に梱包されてて、メッセージカードが付いている。

「全部フィリアさんのですわ」
「え?」

 ちょっと理解ができないのだけど…

「フィリアさんは、もう少し自身の魅力に気づくべきですわ」

 魅力って…魅了眼は封印してるはずだけど?

『そういうことじゃないと思うよ…』

 え、そうなの?

「フィリアちゃんは可愛いもの!」
「可愛い…?」

 まぁ確かに整った顔立ちかもしれないけど…そんなに可愛いかな?

「私なんかよりキャサリンやベルの方が可愛いと思うけど…」
「「そんなことないよ(ですわ)!」」

 お、おう……

「フィリアちゃん、私からも受け取って貰えるかな?」

 キャサリンとベルと話していると、アレク殿下が話しかけてきた。

「アレク殿下…これは?」

 アレク殿下が手に持っていたのは綺麗な紙に包まれた箱のようなものだった。

「もちろん、チョコだよ。受け取ってくれないかい?」
「え!?えっと…」

 これって受け取らないと不敬とかになる?

「あ、ありがとうございます?」

 おずおずとアレク殿下のチョコを受け取る。
 すると満足そうにアレク殿下は去っていった。

「ふぅー…」

 ひとまずどうしようか?これ。

「引き出しの中がいっぱい…」

 1つ1つ取り出していく。その度に教室がザワつく。何事?

(俺のやつ手に取ってくれたぞ!)
(俺のだって!)
(私のも!)

 ……うん。気まずい。てか、女の子からのチョコもあるんだ。

「す、凄い量ですわね…」

 キャサリンの顔が引きつっている。まぁそんな反応になるよね。優に100はありそう…って、Sクラスの人数より多いんだけど?!

「ひとまず収納しよ…」

 このままでは授業が受けれないので、全てアイテムボックスに収納する。カードなんかは後で読ませてもらおう。

「はーい。席についてね」
  
 全て収納し終わった時に、ちょうどリーナが入ってきた。

「今日は愛を誓う日だから、そのことについて学ぶわよ」

 そう言って授業を進めていく。どうやら最近になって始まったものらしく、女神エルザからの神託があって、そこから始まったそうな。

 …神託をそんなことに使ったのね。

「…っと、こんな感じね。しっかりと、今日がなんの日なのかを理解しておくことは大事なことよ」

 まぁ正しく伝わらなければ、最終的にその習慣が歪んでしまうかもしれないからね。

「家族との時間を大切にする為に、今日はここまでよ。しっかりと感謝を伝えるのよ?」
「「「はーい!」」」

「じゃあ帰ろっか」
「うん!」
「ええ」

 学園を後にして屋敷へと戻る。帰り道で、ベルがシリルに渡したいというので、途中で別れた。

「おかえりなさいませ」
「ただいまです」

 いつものようにセバスチャンさんと挨拶を交わすと、私は自分の部屋へと向かった。

 そしてアイテムボックスから、今日貰ったチョコを全て取り出す。

「うわぁー…」

 そこには自分の背丈と同じくらいのチョコの山が出来上がった。

「とりあえずカードを…って、全部かい」

 一つ一つカードを取っていく。

「えっと、なになに…」

 書いてある内容は……

「…あまり嬉しい内容ではないかな」

 書いてあったのはお茶会への招待など。一部模擬戦をしたいという要望や、憧れですというメッセージもあった。そっちは嬉しいけど、お茶会はヤダなぁ…
 なんでかっていうと、ドロドロした展開になるのが予想できるから。何でも、私の"力"が欲しいらしい。

「…これは却下」

 "闘技場を壊すほどの魔法に惚れました!是非弟子に!"

 弟子はもういいよ…てか、弟子になりたくなった理由があれだなぁー…

「アレク殿下のは…お、珍しい。至って真面目だ」

 日頃の感謝から始まり、それと謝罪も書かれていた。謝罪の内容は、私が令嬢に絡まれた件について。

 アレク殿下に取り入ろうとする令嬢に絡まれたことが前あったんだよね。それの謝罪。でも、直接的にアレク殿下は関わってない…とは言えないのか。

「アレク殿下が私と親しくするから…ね」

 ま、アレク殿下のお陰で、その令嬢は絡んで来なくなったけどね。

「…で、お茶会へ招待ねぇ?」

 うーん…今後のことも考えて、お近づきになっといた方がいいかな?

「これはリーナと相談だね」

 全てのカードを見終わり、全て収納する。

「…今思ったけど、こんなにチョコ食べれるかな?」

 …うん。時間停止だし、少しづつ食べよ。

 そう決めて、私は全てのチョコを収納した。


















 ………………私がそのチョコを消費することをすっかり忘れてたのは内緒。












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フィリア、モテモテです。本人に自覚はなし。

時系列は読者様のご想像にお任せします…

アレク関連の話は、そのうち出していく…予定です。



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