391 / 503
第二十五章 兄弟と兄妹
(18)
しおりを挟む
「さあ、ベッドメイクはこれで終わりっと」
ミュゼットは綺麗に整えられたベッドを見て満足そうにうなずき、僕の方を向いた。
「あれ! ご主人様、まあだ着替え終わってないの?」
「いや、だって何だかこの服着にくくて……」
用意されていた貴族風の服は、この前まで着ていた庶民向けのものと違い、やたらボタンの数が多い凝ったデザインをしていた。
「しょうがないなあ、ご主人様。やっぱりボクがいないとだめなんだね♡」
ミュゼットはいかにも楽しげに、その白く美しい手で、僕の体をサワサワしてくる。
「わわっ! 本当にいいって!」
「ほらほら、遠慮しないでよ。今のボクは、ご主人様にお仕えするメイドなんだから」
「遠慮じゃなくて、いろいろワケがあって――それとミュゼット、その『ご主人様』って呼び方もこそばゆいから止めて欲しいんだけど」
と、僕とミュゼットがもみ合いへし合いしていたその時――
突然ドアがガチャリと開き、グリモ男爵が甲高い声を上げながら、いきなり部屋の中に入ってきたのだった。
「ちょっと! ユウちゃん、ミュゼット! いくらなんでも遅すぎるわよ! ――まあっ!」
男爵は僕と、僕の服をつかんでいるミュゼットを見るなり大声で叫んだ。
「朝っぱらからなによ! アリス様がお待ちかねだっていうのに二人でイチャラブエッチ!?」
「ち、違います! 完全に誤解です」
僕は必死に否定した。
やれやれ……また弁解しなきゃならないのか。
なんだか安っぽいドタバタラブコメみたいだ。
「じゃあユウちゃん! もしかしてアナタ、メイド姿のミュゼットがあまりにカワイイから欲情して襲いかかったってこと!? アタシはその瞬間を目撃しちゃったのかしら。――やだもう、見損なったわよ!」
「余計に違いますよ!」
「そうだよ、男爵様!」
と、ミュゼットもむくれて叫ぶ。
「ユウ兄ちゃんがそこまで乱暴なことするわけないじゃん!」
躍起になって弁明する僕とミュゼット。
その様子を見て、男爵がいきなり笑い出した。
「ホホホ! 冗談よ、冗談! ユウちゃんもミュゼットもムキになっちゃって。二人がずいぶん仲よさそうだからちょっぴりからかってみたのよ」
「男爵様、人をおちょくるのは止めてくださいよ!」
なんだよもう。
グリモ男爵も本当に人が悪い。
まあ、らしいっちゃらしいけど……。
「男爵様、ひどいよお」
と、ミュゼットも男爵をにらみ、小さくつぶやいた。
「まあ、ボクはべつにそれでもかまわないけどさ……」
え……!?
ミュゼット、今なんて言った?
ミュゼットは綺麗に整えられたベッドを見て満足そうにうなずき、僕の方を向いた。
「あれ! ご主人様、まあだ着替え終わってないの?」
「いや、だって何だかこの服着にくくて……」
用意されていた貴族風の服は、この前まで着ていた庶民向けのものと違い、やたらボタンの数が多い凝ったデザインをしていた。
「しょうがないなあ、ご主人様。やっぱりボクがいないとだめなんだね♡」
ミュゼットはいかにも楽しげに、その白く美しい手で、僕の体をサワサワしてくる。
「わわっ! 本当にいいって!」
「ほらほら、遠慮しないでよ。今のボクは、ご主人様にお仕えするメイドなんだから」
「遠慮じゃなくて、いろいろワケがあって――それとミュゼット、その『ご主人様』って呼び方もこそばゆいから止めて欲しいんだけど」
と、僕とミュゼットがもみ合いへし合いしていたその時――
突然ドアがガチャリと開き、グリモ男爵が甲高い声を上げながら、いきなり部屋の中に入ってきたのだった。
「ちょっと! ユウちゃん、ミュゼット! いくらなんでも遅すぎるわよ! ――まあっ!」
男爵は僕と、僕の服をつかんでいるミュゼットを見るなり大声で叫んだ。
「朝っぱらからなによ! アリス様がお待ちかねだっていうのに二人でイチャラブエッチ!?」
「ち、違います! 完全に誤解です」
僕は必死に否定した。
やれやれ……また弁解しなきゃならないのか。
なんだか安っぽいドタバタラブコメみたいだ。
「じゃあユウちゃん! もしかしてアナタ、メイド姿のミュゼットがあまりにカワイイから欲情して襲いかかったってこと!? アタシはその瞬間を目撃しちゃったのかしら。――やだもう、見損なったわよ!」
「余計に違いますよ!」
「そうだよ、男爵様!」
と、ミュゼットもむくれて叫ぶ。
「ユウ兄ちゃんがそこまで乱暴なことするわけないじゃん!」
躍起になって弁明する僕とミュゼット。
その様子を見て、男爵がいきなり笑い出した。
「ホホホ! 冗談よ、冗談! ユウちゃんもミュゼットもムキになっちゃって。二人がずいぶん仲よさそうだからちょっぴりからかってみたのよ」
「男爵様、人をおちょくるのは止めてくださいよ!」
なんだよもう。
グリモ男爵も本当に人が悪い。
まあ、らしいっちゃらしいけど……。
「男爵様、ひどいよお」
と、ミュゼットも男爵をにらみ、小さくつぶやいた。
「まあ、ボクはべつにそれでもかまわないけどさ……」
え……!?
ミュゼット、今なんて言った?
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
魔王城の面子、僕以外全員ステータスがカンストしている件について
ともQ
ファンタジー
昨今、広がる異世界ブーム。
マジでどっかに異世界あるんじゃないの? なんて、とある冒険家が異世界を探し始めたことがきっかけであった。
そして、本当に見つかる異世界への経路、世界は大いに盛り上がった。
異世界との交流は特に揉めることもなく平和的、トントン拍子に話は進み、世界政府は異世界間と一つの条約を結ぶ。
せっかくだし、若い世代を心身ともに鍛えちゃおっか。
"異世界履修"という制度を発足したのである。
社会にでる前の前哨戦、俺もまた異世界での履修を受けるため政府が管理する転移ポートへと赴いていた。
ギャル受付嬢の凡ミスにより、勇者の村に転移するはずが魔王城というラストダンジョンから始まる異世界生活、履修制度のルール上戻ってやり直しは不可という最凶最悪のスタート!
出会った魔王様は双子で美少女というテンション爆上げの事態、今さら勇者の村とかなにそれ状態となり脳内から吹き飛ぶ。
だが、魔王城に住む面子は魔王以外も規格外――そう、僕以外全てが最強なのであった。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
インフィニティ•ゼノ•リバース
タカユキ
ファンタジー
女神様に異世界転移された俺とクラスメイトは、魔王討伐の使命を背負った。
しかし、それを素直に応じるクラスメイト達ではなかった。
それぞれ独自に日常謳歌したりしていた。
最初は真面目に修行していたが、敵の恐ろしい能力を知り、魔王討伐は保留にした。
そして日常を楽しんでいたが…魔族に襲われ、日常に変化が起きた。
そしてある日、2つの自分だけのオリジナルスキルがある事を知る。
その一つは無限の力、もう一つが人形を作り、それを魔族に変える力だった。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~
白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。
目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。
今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる!
なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!?
非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。
大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして……
十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。
エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます!
エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!
あたし、なまくび?だけど魔法少女はじめました! ~夢見の異世界エルドラ~
雨宮ユウ
ファンタジー
仲良し女子高生達が送る、お気楽能天気な異世界ライフ開幕……
って思ったら、あたし頭だけなんだけどー!?
友達を助けるため異世界転移したら、なぜか頭だけになっていた女子高生・望実。
だけど超絶能天気なポジティブシンキングで、迫る困難もなんのその!
夢の世界で直面するおバカな事件を爽快に解決しながら、自分達の夢を叶えるため、
なまくび魔法少女として大冒険するお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる