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第二十章 再び戦場へ

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 その夜。
 僕は不思議な夢を見た。

 案内された城の一室、小ぢんまりとした部屋のやわらかいベッド。
 その上に疲労した体を横たえ、泥のように眠りこけていると――

 誰かが部屋の中に入ってきて、ベッドに近づいてくる気配を感じた。

 ????

 そういえば、ドアの鍵を閉めていなかったかもしれない……。
 いや、そもそもこの部屋に鍵なんかついていたっけ?

 夢うつつにそんなことを考えていると、ふわり、といきなり体に何かが覆いかぶさってきた。

 ――ええ!?
 何、なんなの?

 僕は驚いてそれを払いのけようとしたが、金縛りにあったように体が動かず、なぜか目も開けられなかった。

 が、まったく重くはない。
 不快感もない。
 むしろ羽根のように軽い、ふわっとした心地いい人肌の温かさを感じた。

 これって――人? 
 誰かが僕の上に乗っかっている?

 と、ただ戸惑っていると、ふっといい匂いがして――
 一瞬、唇に少し湿った柔らかな感触があった。

 うわっ、キス?
 キスされた!?

「クスクス……」

 それから、ごく微かな笑い声が聞こえたかと思うと――
 僕にキスした誰かはベッドから飛び降り、パタパタという足音を立て、部屋から出ていってしまった。

 ………………
 …………
 ……夢?

 うん、夢だろうな、これは。
 と、ぼんやり解釈する。

 ファーストキスの相手は誰だったのか?
 そんな大事なことも考えられないくらい、身も心も疲れ切っていたのだ。

 すべては夢、まぼろし。
 こんな僕に進んでキスをしようなどという物好きな人、異世界にだっているわけない。
 そう思うと、高まった心臓の鼓動もすぐに治まった。

 異世界の漆黒の夜――
 巨大なお城の小さな部屋のベッドの中で、今度こそ僕は深い眠りについた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 翌朝。
 テーブルの上に置いたスマートホンの振動音で、僕は目が覚めた。
 電話の相手は言わずもがな。
 現実世界から電話をかけてきた、清家せいけセリカだ。
 
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