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第十章 邪悪
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だが、ロードラントとイーザ両軍が相対しているこの戦場は、見晴らしの良い平原地帯に展開されている。
パッと見て、人が隠れられるような場所はない。
「うーむ」
と、レーモンが口髭をひねる。
「レーモン、お前の思い過ごしではないのか?」
アリスが辺りをぐるりと眺めまわして言った。
「特に誰かが潜んでいるような感じはしないが」
「いいえアリス様、よくご観察下さい。たとえばあそこに見える大岩の影や、その向こうの倒木の脇など、人ひとり隠れる場所はそこかしこにございます」
隠れる場所か……。
そこで僕はふと『サーチ』という、敵の居場所を探る補助魔法のことを思い出した。
「あのー」
と、アリスに声をかける。
「ん? なんだ、ユウト?」
「あ! ……いえ、何でもありません」
危ない危ない。
ここで『サーチ』は使えない。
なぜなら『サーチ』はマップ上に敵の位置を表示する魔法。
そしてそのマップを見るためには、『スキャン』と同じく、スマホの画面に映し出すしか方法はない。
が、アリスとレーモンの目の前で堂々とスマホを出したら、それが何なのか説明しなければならないだろう。
その時スマホを取り上げられ、万が一壊されでもしたら大変だ。
スマホがなければ、セリカと通信する手段が断たれてしまうし、元の世界に戻る手段もなくなってしまうからだ。
現実世界に未練があるわけではないが、そうなるとさすがにちょっと困る気がする。
「とにかくいったん皆のところへ行こう」
アリスが言った。
「全員、私たちが戻るのを待ちわびているぞ」
「なりません、下手に動いては危険です」
レーモンは簡単には気を緩めない。
「――おいユウト、そのショートソードを貸せ。今のうちにこの獣にとどめを刺さしておく」
確かに『スリープ』の効果は長くは続かない。
サーベルタイガーをこのまま放置しておいたら、目覚めた時またアリスを襲うかもしれない。
僕は腰のショートソードを抜いて、レーモンに渡した。
レーモンはそれを受け取ると、眠りこけるサーベルタイガーの首元を狙い、刃を付き刺そうとする。
すると――
「ちょっと待ったあ~!」
不意に誰かの叫び声がした。
またまた子供っぽいような、少年の声だ。
パッと見て、人が隠れられるような場所はない。
「うーむ」
と、レーモンが口髭をひねる。
「レーモン、お前の思い過ごしではないのか?」
アリスが辺りをぐるりと眺めまわして言った。
「特に誰かが潜んでいるような感じはしないが」
「いいえアリス様、よくご観察下さい。たとえばあそこに見える大岩の影や、その向こうの倒木の脇など、人ひとり隠れる場所はそこかしこにございます」
隠れる場所か……。
そこで僕はふと『サーチ』という、敵の居場所を探る補助魔法のことを思い出した。
「あのー」
と、アリスに声をかける。
「ん? なんだ、ユウト?」
「あ! ……いえ、何でもありません」
危ない危ない。
ここで『サーチ』は使えない。
なぜなら『サーチ』はマップ上に敵の位置を表示する魔法。
そしてそのマップを見るためには、『スキャン』と同じく、スマホの画面に映し出すしか方法はない。
が、アリスとレーモンの目の前で堂々とスマホを出したら、それが何なのか説明しなければならないだろう。
その時スマホを取り上げられ、万が一壊されでもしたら大変だ。
スマホがなければ、セリカと通信する手段が断たれてしまうし、元の世界に戻る手段もなくなってしまうからだ。
現実世界に未練があるわけではないが、そうなるとさすがにちょっと困る気がする。
「とにかくいったん皆のところへ行こう」
アリスが言った。
「全員、私たちが戻るのを待ちわびているぞ」
「なりません、下手に動いては危険です」
レーモンは簡単には気を緩めない。
「――おいユウト、そのショートソードを貸せ。今のうちにこの獣にとどめを刺さしておく」
確かに『スリープ』の効果は長くは続かない。
サーベルタイガーをこのまま放置しておいたら、目覚めた時またアリスを襲うかもしれない。
僕は腰のショートソードを抜いて、レーモンに渡した。
レーモンはそれを受け取ると、眠りこけるサーベルタイガーの首元を狙い、刃を付き刺そうとする。
すると――
「ちょっと待ったあ~!」
不意に誰かの叫び声がした。
またまた子供っぽいような、少年の声だ。
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