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第44話 『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

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「四季のお義母さん(おかあさん)には正式に挨拶をしたが、まだお義父さん(おとうさん)には、言っていないんだ。女性は隠し事が上手だから正直に話したが、男性は嘘が吐けない人が多いからな」

「送ってくれた時か?」

「ああ。今度、宮崎産のマンゴーを持って、挨拶に行く」

「あ、それ、嬉しい。食いてぇ」

 綾人が笑って、俺の泣きぼくろを親指の腹でゆるゆると撫でる。

「四季は、色気より食い気か」

 俺たちは、綾人のマンションの寝室で、一糸纏わぬ姿でダブルベッドの中に居た。
 テレビの洋画で観た事のあるような、沢山積まれたふかふかの枕に身体を預ける綾人の胸に、俺は横向きに縋り付いてる。
 もう何回も肌を重ね、愛を確かめ合ってた。

「婚姻届は?」

「理事長に呼ばれた時、書類を書かされなかったか?」

「あ」

「それだ」

「理事長って何者?」

「小鳥遊財閥の、時期総帥だ。二人で相談して、作戦を考えた。だが彼が切れ者だからといって、心変わりしないでくれよ?」

 冗談めかすでもなく、真剣に綾人は言う。

「俺は、綾人だけが好きなんだ。他の男も女も、目に入らねぇ。勝手にヤキモチ妬かねぇでくれ」

 逞しい胸板に、頬を擦り寄せる。

「綾人」

「ん?」

「俺、高校卒業したら、専業主夫になる。進学はしねぇ」

「良いのか?」

「ああ。俺のお袋、βとして普通に結婚して欲しいって言いながら、小さい頃から料理仕込んでくれたんだ。心のどっかで、αと番って欲しいって思ってたんだと思う」

「そうか。四季の手料理か。それは毎日、帰るのが楽しみになるな」

 そう言って、綾人はゴロリと体勢を入れ替えた。

「四季。明日、病院に行こう」

「病院? 何でだ?」

「五十万人に一人の確率で、大人になると属性が変わる者が居る。四季はβだったけど、αの俺に会って発情期がきて、不審に思って自ら属性検査を受けるんだ。これで合法的に、βからΩに戸籍変更出来る」

「それも、理事長の作戦?」

「いや。これは俺が考えた」

「んっ……冴えてるな、綾人。悪知恵が働くとも、いう」

 唇を触れさせながら、吐息で囁き合う。と思ったら、項を掴まれて仰け反らされ、はむはむと角度を変えて、情熱的に口付けられた。

「あっ……あ・綾人、もう、やだ」

 唇が薄い胸板に点々と痕を残しながら、下がっていく。

「嫌じゃないだろう?」

「だって……ん・もうっ、出るものないの……辛いんだぞっ」

「後ろでイけばいい。都市伝説かもしれないが、Ωがイったあとに出すと、男が産まれる確率が高いらしい」

「あ・やっ……もう、何回もイって、るっ」

 先っぽをジュルリと吸われ、腰が跳ねる。

「だが、四季は進学すると思ってたからな。ゴムを着けていた。専業主夫になるなら、今から子作りしても良いな」

 ジュプジュプとわざと音を立てて口に含まれると、発情期の本能は、あっという間にびしょびしょになる。

「ぁんっ」

 綾人が這い上がってきて、何度も繋がった身体は、何の抵抗もなくツルリと再び挿入(はい)った。
 今まではゴムを着けてたから人工的な感触だったけど、生で挿れられ、そのぬめる感触に、浅く速く息を吐く。

「アッ・すごっ……い」

 綾人は人並み外れて大きくて太い分身を片手で支え、角度を調節して子宮口を擦り始めた。

「あっあ・駄目・子供、出来ちゃうっ」

「大丈夫だ。今仕込めば、六ヶ月目に卒業出来る」

「そんな・の、ア・恥ずかしっ」

「恥ずかしくない。夫婦ならば、子供が出来て当然だ。小鳥遊は、性教育も性倫理もちゃんとしてる」

 俺は焦らすように子宮口を擦る動きに、陥落した。しゃくり上げて、本能のままに腰を振る。

「綾人、もっと……っ」

「もっと……何だ?」

 ドS。快感に鈍る頭の片隅で、思う。
 でも番いの相手とのセックスにおいては、理性なんかはものの役にも立たなかった。

「もっと、奥までっ」

「奥まで?」

「綾人の・硬くて太いので、突いてっ」

「良いだろう」

 こんな時シニカルに笑う綾人は、やっぱドSだ。
 パチュ、ズチュッと湿った音を響かせて、激しく俺を突き上げ出す。
 直腸の突き当たりまで届く感覚が、酷く俺を興奮させた。

「あ・あんっ・綾人・イイっ」

「愛している、四季。子供を作ろう」

「綾人の・精液・俺の中にいっぱい・出して……っ」

「ああ。男でも女でも、お前に似たら可愛いだろうな、四季」

 耳元で、熱い吐息混じりに名前を呼ばれ、子宮がヒクリと蠢いた。
 精液はもう出つくして、勃ち上がった前からは何も出ないまま、雌イきする。

「アッ・んぁっ・イく、イく――……っ!!」

 綾人を受け入れてる孔が、ぎゅうと締まり上がる。今までで一番キツい締め付けに、綾人もセクシーに眉根を寄せていた。

「く……っ四季」

 最後に最奥に、何度も綾人の灼熱が叩き付けられる。
 俺は息が上手くつげずに、口角から唾液を零して仰け反った。
 初めて子宮が、綾人の熱い体液に満たされる。
 本能で受胎した事を察し、悦びに打ち震えて、俺は綾人の背中に爪を立てた。

「綾人……子供、出来た」

「ああ。よくやった、四季。来年には、お前は母親だ」

 楔がズルリと抜かれ、俺は肩を喘がせる。
 触れるだけの優しいキスが、何度も唇に落とされた。

「綾人は……」

「ん?」

「綾人は、俺がΩでも、隠さねぇか?」

「当たり前だ。お前がαだろうがβだろうがΩだろうが、私の妻として紹介する」

 目頭が熱くなった。『Ωである俺』に初めて居場所をくれたのは、綾人だった。

「綾人」

 嬉しくて、ただ名前を口ずさむ。

「何だ」

「綾人」

「ん?」

「……何でもない」

 俺のふたつ並んだ涙ぼくろに口付けて、綾人はワイルドに笑う。

「おかしな奴だな」

「うん。俺、綾人と居るとおかしくなる」

「こら。これ以上、誘惑するな」

「は? 誘ってねぇし!」

「やっぱり、ツンデレだな」

「ドSには、言われたくない」

 ちょっと視線で火花を散らし合った後、俺たちは同時に噴き出した。
 
「綾人」

「ん」

「んっ」

 それ以来、ベッドで綾人を呼ぶと、ちょんとキスされるようになった。
 それは誰にも見せない俺たちだけのサインで、俺は歌うように愛しく、綾人を呼ぶのだった。

「綾人」

「ん」

Happy End.
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