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54 ロンバード男爵の断罪

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 月日はいくら俺が焦っても流れていく。
 侯爵や国からの催促、どこからか紛れて見つかる硬い不思議な金の光沢の鉱石。
 それなのに、鉱脈が見つからない!
 八方塞がりになり、酒と女に溺れた。

 一旦溺れてしまえば、楽になった。
 王都に戻ると面倒なので、王都や辺境伯の所の商人を呼び寄せ、女に好きな物を買ってやった。
 金が足りなければ、ちょちょっと帳簿を弄った。

 ご機嫌に過ごしているのに、クラーラが鉱山に来る度気分が削がれる。

「不義の娘の癖に偉そうに。いずれ子爵共々追いやってやる」

 こんなに子爵家の金を回しているのだ、俺の方が子爵としてやれる。
 商人達も言うではないか。

「ご立派なお貴族様です。貴方様程に素晴らしい人はいません」

 この領地をロンバード家が乗っ取り伯爵となり、この地方をまとめ上げいずれ侯爵になってやる。
 その際、バンデルン侯爵も破滅するだろう。
 不義のクラーラの責任を負って、子爵と一緒に堕ちればいい。

 酒に溺れた妄想は、いつしかすぐ手の届く現実に見えた。


 帰国した侯爵に現実を突きつけられ、騎士に連れられ王城に着いた。
 すぐに陛下より沙汰があり、お家断絶の上流刑となった。
 その際ナディオの行いと、既に離婚の手続きが終わっている事を知った。
 最後の温情だと言われ、元妻との時間が作られた。

「ナディオは本当にあなたに似て、勝手な子に育ちましたわね」

 俺を睨みつけて元妻が言った。

「折角上二人が官吏に採用されたというのに、解雇されてしまいましたのよ」

 俺はナディオ以外の子の事など興味もなく、初めて知った事に驚いた。

「でもご安心ください。二人はとても頑張って来ましたもの。あの子達が仕事で知り合った方が、たまたま私の以前のお知り合いの方で。隣国でその方の仕事を手伝う事になりました。私も付いて行くことにしましたの。今度は・・・間違えませんわ」

 見た事もない爽やかな笑顔がそこにあった。

「それではごきげんよう」


 俺が送られた場所は、断崖絶壁にあり地盤の弱さと毒の煙を吐く為、破棄された鉱山だった。
 皮肉な事に、ヘインズ領で諦めた険しい岩壁地帯と地形が似ていた。

「鉱山用の蝋燭か小鳥は?」
「蝋燭はないが小鳥ならほら」

 この鉱山に案内した男は空を指した。
 のどかに小鳥が飛び交っていた。

「ここで鉱山の状態を調べて貰う。なに今までは鉱山夫やただの素人が来ていたが、あんたはベテランの技術者だと聞いてる。骨を見つけたら供養の為に持ち帰ってくれよな」

 地図の作成次第で、与えられる食事や日用品が変わった。

 今日生き残った安堵と明日死ぬかもしれない恐怖を抱えながら、一人鉱山の中を彷徨う日々が続いている。


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