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13 バートとヘインズ子爵

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 話を聞いて思ったのは、見つけ出した執念だろうか。

「それは、よく見つけられましたね」
「えぇ、父が元妻をずっと探していたのですよ。嫡子の私が生まれ、婿として役目が終わっただろうと。母も体が丈夫ではなかったので二人目は考えていなかった。そして、資金援助する家は結局保てず、潰れてしまったので」

 婿となった意味を失っていたのか。

「政略結婚、それも無理矢理別れさせられた相手ですから未練も大きかったのでしょう。子供から見ても父と母の仲は良くなかったですから」

 淡々とヘインズ子爵は話を続ける。

「クラーラの母親、つまり私の姉セーラは孤児院で見つかりました。孤児院は貴族の布施で経営している所も多い。見つけたのは本当に色々と手を尽くした末だったそうです」

「運が良かったのですね」

「えぇ、ただ孤児院で父が見つけた時にはセーラは体を壊していてね。何の因果か顔も私とよく似ていた。少しの間ですけど、ここで預かっていた事もあるのですよ」

 子爵は懐かしそうに微笑みを浮かべた。

「似ていた。これが母にとっては耐え難い物だった。被害妄想というかなんと言うか……私達を入れ替え簒奪されると思ってしまったようで。性別も年も違うのですが、それ程までに父が姉を可愛がったのです」

 突然、ヘインズ子爵は俺の目を見た。なんだ?

「バート殿はこの地が陰でなんと言われているかご存知か」

「え、……いえ」

「もう若い者は知らないのかも知れませんが『密会の地』とも言われていたのです」

 そう云えば、聞いた事がある。保養地として有名だが、ハメを外す貴族も多い場所だと。

「昔から色々な秘密を知る子爵家は、貴族間の力関係ではかなり強い方だった。父は人脈を活かし一番最適な養子先を見つけてきました。それがカルディラス伯爵家でした」

「今のバンデルン侯爵の……」

「そうです。既に非嫡出子の男子を養子にしていた家に、セーラをねじ込んだ。そこの奥方が女の子を求めたのもありましたが」

「バンデルン侯爵が養子だと言う事は有名ですが、その奥様も養子だったのですね」

「お互いがそうですからね。表立っては言いません。伯爵家でセーラは療養していたのであまり知られていなかったですから」

「確かに、噂では何処かから連れてきたとか、攫って来たとかありましたね。そして溺愛して閉じ込めたとか言われていましたよ」

「攫うや閉じ込めたは酷いですね。確かに結婚してからもセーラは貴族間では、殆ど知られずに亡くなった。そして、残されたクラーラは私とは驚く程に似ていた。問題なのはこの領地の風評です。勘違いする者が出たのです」


 ―――あぁ、ロンバード男爵か。



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